免疫チェックポイントのプログラム細胞死受容体1(PD1)を標的とするがん免疫療法薬ニボルマブ(商品名オプジーボ)は現在、日本で悪性黒色腫、非小細胞肺がん、腎細胞がん、古典的ホジキンリンパ腫、および頭頸部がんの治療薬として販売されている。オプジーボは、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染と関連性が高い進行期子宮頸がん患者19例中5例(26.3%)に完全奏効(CR)、または部分奏効(PR)をもたらした。2017年6月2日から5日に開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表された初公表データである(Abstract5504)。
目次
術前補助療法、または転移巣治療としてのオプジーボ単剤療法
ウイルス感染と関連があるがんの成人患者を対象とする第1/2相無作為化非盲検試験(CheckMate-358、NCT02488759)の中で、子宮頸部・膣・外陰部のがん患者24例を対象にオプジーボ240mgを静注した。術前補助療法としての投与は2回、転移性疾患に対する単剤療法としては2週ごとに投与した。主要評価項目は安全性、第2相パートでの奏効率であった。
初回解析対象は24例、全生存期間は中央値未達で追跡継続
その結果、子宮頸がん患者19例を含む計24例の初回解析対象で、奏効率は20.8%(5例)、完全奏効(CR)と部分奏効(PR)、および病勢安定(SD)の患者を合わせた患者の割合(病勢コントロール率)は70.8%(17/24例)であった。無増悪生存(PFS)期間中央値は5.5カ月で、全生存期間(OS)は中央値特定に至っていない。
子宮頸がん患者19例のみを解析対象とした場合、奏効率は26.3%(5例)で、追跡期間6カ月の時点で奏効持続期間の中央値特定には至っていない。子宮頸がん患者集団における奏効率は、オプジーボの標的分子であるPD-1リガンド(PD-L1)の発現、またはヒトパピローマウイルス(HPV)感染の有無、あるいは全身療法の治療歴回数により差は認められなかった。
オプジーボの安全性に問題はなく、有害事象はすでに報告されている他のがん種患者に対するオプジーボ単剤療法の結果と同様であった。グレード3からグレード4の有害事象の発現率は12.5%であった。
ウイルス関連腫瘍における免疫チェックポイント阻害薬の働きに注目する試験デザイン
子宮頸がんの90%以上は性的接触により感染するヒトパピローマウイルス(HPV)と関連する。膣がんは約75%、外因がんは69%がHPVと関連する。HPVに感染しても、ほとんどの場合は初期感染のうちに自身の免疫システムにより排除されるが、10%から15%の感染者は感染が持続し、これらのがんを発症するリスクが高まる。HPVの長期感染に起因する子宮頸がんを発症する患者は、全世界で100万人以上と推定されている。進行期の初回治療は化学療法、または化学療法と放射線療法の併用で、病期がステージ3、またはステージ4に進行した場合の5年生存率は16%から35%とされる。これらの治療が効かない場合、現在の選択肢は極めて限定的であるため、新しい治療法が待望されている。
CheckMate-358はウイルス関連腫瘍に対するがん免疫療法オプジーボの安全性と有効性の評価を目的として米国、欧州、日本、台湾などで実施されており、子宮頸がん・膣がん・外陰がんのほか、ウイルス感染と関連することがわかっているメルケル細胞がん、胃がん・胃食道接合部がん、上咽頭がん、頭頸部扁平上皮がんなどの患者も登録されている。オプジーボの単剤療法、もしくはイピリムマブ(商品名ヤーボイ)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)標的抗体BMS-986016、またはCD38標的抗体ダラツムマブ(商品名Darzalex)の併用療法の治療群が設定されている。
記事:川又 総江
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