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軟骨無形成症 画期的新薬BMN-111 日本における臨床試験導入への「思い」

  • [公開日]2015.12.20
  • [最終更新日]2015.12.21

がん領域とは異なりますが、皆さんに是非知って頂きたいことがあります。

軟骨無形成症という先天性の希少疾患を患っている男の子(2歳)の父親であるeihakuさんが、この病気に対する画期的新薬であるBMN-111の国際第3相試験への日本の参加を米国バイオマリン社に要望する署名活動を募っています。

【協力依頼】米バイオマリン本社にメッセージを届けます、BMN-111、日本国内の早期フェーズ3実施に向けて、家族の声を届けたい/BMN-111:request for early enforcement of phase 3 clinical study, your voices are needed(eihakuさんのホームページ)

軟骨無形成症は、軟骨細胞の異常によって骨の形成が阻害され、手足の短縮を伴う低身長になり、成人男性の平均身長は130cm前後、女性では124cm前後にしかなりません。また、全身に様々な症状が起こり得るため、幼児期の死亡リスクが5~10%と高い疾患です。出生率については、様々な説があるようですが、1万人から4万人に1人という希少疾患となります。

そんなeihakuさんの活動を応援頂ければ幸いです。

また、このような活動は、オンコロジー分野でも実施されているのかもしれません。そのような活動をされている方をご存じの場合教えて下さい。是非、応援していければと考えます。

eihakuさんと知り合ったのは2か月前。以下は私がeihakuさんと知り合ってから行動を起こすまでの2か月のエピソードとなりますので、ご興味がある方はお読みください。

目次

ある日の問い合わせ

10月のある日、生活向上Webスタッフから相談がありました。

「アメリカで実施している軟骨無形成症薬であるバイオマリン社のBMN-111という薬剤の治験に、2歳のお子さんを参加させたいが、海外への治験参加の支援するサービスがあるか?」という問い合わせが生活向上Webに届いたようです。

そのようなサービスは行っておりません。

丁重に断るために、Clinical trial.govで第2相試験情報(コチラ)を確認し、本人にクライテリア上の懸念点(年齢制限のことや毎日投与など)や米国で治験に参加することの大変さ(特に言語、滞在費とビザ関連)をお話しし、それでも本気で参加したいのかを確認すると、以下の返答が返ってきました。

「既にバイオマリン社の本社(米国)へ問い合わせをしていること」、

「P2試験はよい結果が出たため、バイオマリン社はP3試験を計画中であるが、そこに日本が参加するか不明であること」、

「子供のために覚悟を決めていること」、

「米国の軟骨無形成症患者会に属しており、そのコネクションを使い、治験実施施設であるジョンズ・ホプキンス大学病院とやり取りしているうちに連絡がなくなってしまったこと」

第3相臨床試験の日本での実施に向けて

今まで、生活向上やオンコロへ海外の臨床試験に入りたいといった問い合わせは十数件ありますが、そこまでアクションを実施されてからご連絡された方はいらっしゃらず、興味がわきました。
また、ジョンズ・ホプキンス大学病院はクロエグループの米国支社(クロエUS)から近隣であることから、責任者である滝澤のアウト・オブ・ビジネスでの対応を許可をもらい、たまたまビザ更新のために帰国していたクロエUSの青柳と、その方に会うことにしたのです。

その方こそeihakuさんです。

eihakuさんは、30代半ばと私と殆ど同年代、環境問題に取り組むNGOのCOOを経験されているバイタリティーあふれた方でした。

お子さんが生後すぐに軟骨無形成症と診断されたときに「それも人生」と受け入れたとのことですが、地道に情報収集だけは続け、バイオマリン社のニュースリリースを見つけたとのことです。

BMN-111(vosoritide)は、C型ナトリウム利尿ペプチドを改良した薬剤です。C型ナトリウム利尿ペプチドはホルモンの一種であり、成長期の骨伸展を促す効果があります。軟骨無形成症は、線維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR3)の異常活性が主な原因といわれていますが、これとは真逆に働く薬剤ということになります。

現在、軟骨無形成症への開発中の治療アプローチは、FGFR3阻害効果があるといわれているメクロジン(酔い止めなどに含まれる古い歴史の薬剤です)、およびiPSを使用した軟骨再生となります。

これらの治療方法と比べBMN-111がどれだけ効果があるかはわかりませんが、P2試験結果を見る限りは良好な成績を残しています。
*P2試験結果:5~14歳の患者26人に投与したところ、年間成長平均が6.1㎝となり、軟骨無形成症の年間成長平均が4.0cmと考えると50%の改善したことになる。安全性も確認された。(バイオマリンプレスリリースはコチラ)

eihakuさんは、お子さんのために、この薬剤の治験参加のために行動を移しました。

まずは、渡米をして米国軟骨無形成症の患者会に参加、現地で情報取集。米国バイオマリン、日本法人への問い合わせ。そして、ジョンズ・ホプキンス大学への問い合わせなどです。

そこでわかったとことは、国際共同第3相試験の準備中であり、実施国として日本もリストアップされているということでした。

その時にeihakuさんの気持ちとしては、「バイオマリン社に第3相試験の実施の要望書を提出して、なんとか日本での実施できるようにしたい」と、「それでも実施されなかった時には渡米して、この治験に参加しようと考えていとのことでした。

前者は一人の患者の家族が実施するのはあまりにも大きい問題でしたが、私は映画「小さな命が呼ぶとき(wikipedia)」のようだと思いました。

「小さな命が呼ぶとき」は、先天性に発症する希少疾患であるポンぺ病の画期的新薬「マイオザイム」に開発に奔走する、2人のポンぺ病の子供を持つ父親の物語です。そのために、始めはチャリティーにて資金を集め、莫大な開発資金を手に入れるために勤めている会社も投げ出して走り始めました。。。

ポンぺ病は、4万人に1人の割合で発症する希少疾患で、国内の潜在患者数は約300人です。筋力の低下、筋萎縮、歩行障害、呼吸障害が出現、人工呼吸器が必要になりますが、マイオザイム登場までは10歳程度が寿命となっていました。

「eihakuさんは、小さな命が呼ぶときの主人公みたいですね」。と話したのを覚えています。

全ての希少疾患をお持ちの患者さん・家族へ

あれから2か月。。。
eihakuさんは走り始めました。まずは、要望書を米バイオマリン社へ提出することから始めるようです。

直近では、厚生労働省に「AZD9291の早期承認の要望書」を日本肺癌学会と肺がん患者の会であるワンステップが提出していますが、患者の家族が単独で仲間を募り、製薬会社に要望書を提出しようという試みは聞いたことがありません。

肺がん AZD9291の早期承認の要望書を提出 肺癌学会と肺がん患者の会ワンステップ(オンコロブログ2015/7/6)

一方、軟骨無形成症患者・家族の会である「つくしの会(コチラ)」もバイオマリン社とのやり取りが開始されており、日本での臨床試験への導入に向けて動かれているようです。

個人であり、患者会であり「思い」は一緒であることが伺えます。

以前、WCLC2015(2015年度 世界肺癌学会会議)のアドボカシーアワードの山岡さんが「欧米では、薬剤開発段階から患者会の意見も参考にしながら開発している」と話されていたことを思い出します。

肺がん医療向上委員会 患者の声を尊重する医療 山岡氏WCLC2015参加報告(オンコロブログ2015/10/21)

さらにいうと、寄付によって新薬開発費を募り、それをバイオベンチャーへ支援し、ライセンスアウトまでこぎつけだ場合のロイヤリティにて運営している「チャリティー・ファンド」といったものが、欧米には多く存在します。
しかしながら、日本人にはそういったものは存在しません。。。

近い将来、日本でもそういった手法が一般的になれば、希少がんを始め、希少疾患に対する新薬の開発が進むかもしれません。

オンコロとしてもできるだけ協力したいと考えています。オンコロでの配信もそうですが、クロエUSからジョンズ・ホプキンス大学にアプローチ中です。

最後に、「小さな命が呼ぶとき」のジョン・クラウリー氏はブリストルマイヤーズ社の職員でしたが、eihakuさんは全く異なる業界の人であり、知識が乏しいです。

何か助言等がございましたら、直接本人にご連絡頂ければ幸いです。

GLORY TO ACHONDROPLASIA

記事:可知 健太

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