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胆道がんの手術療法

  • [公開日]2017.04.01
  • [最終更新日]2019.07.01

目次

手術(外科治療)

根治的治療は手術による切除でしか期待できないため、ステージとは別に、切除可能か、または切除不可能かを判断します。しかし、胆道は解剖学的に複雑で定型の術式がなく、術後合併症や手術死亡のリスク、術後再発のリスクがいずれも低くはないため、手術適応の判断が医療機関によって異なることがありますので、切除の可否については専門の外科医に相談することが重要になります。

なお、根治切除術後の臨床転帰の指標である5年生存率は、ステージIでは約60%、ステージIIでは約27%、ステージIIIでは約17%、ステージIVでは約3%という報告があります。手術できる状態で発見された場合でも、胆道がんは根治が難しく、再発しやすく、悪性度の高いがんであることが分かります。

手術で切除する範囲は、がんが発生した場所や広がり方によって決まります。手術の術式は、①胆のうがんと上部胆管がん、②下部胆管がんと乳頭部がんで大きく異なります。手術の目的は、がんとその周囲の組織を取り除くことです。手術でがんが取り切れれば、治癒する可能性が高くなります。

手術による根治切除を行うことを決定した場合、術前処置として、胆汁がスムーズに流れるようにするための胆道ドレナージ、また、広範囲の肝切除が想定される場合は、肝不全を防ぐための肝塞栓術を実施することがあります。

胆道がんは根治切除が可能であっても早期に再発する可能性が高いため、手術で取り切れていない微小ながん細胞の存在を考慮し、術後補助化学療法を行う場合もありますが、標準療法は確立されていないため試験的治療という位置付けになります。

胆のうがんと上部胆管がん

がんが胆のうか胆管の上部(胆のうより肝臓寄り)にある場合には、胆のうと胆管、周囲のリンパ節と肝臓の一部を切除する手術が標準的です。肝臓については、がんが右寄りに発生していれば右葉、左寄りなら左葉を切除します。がんが肝臓の入り口のみにあるとき、あるいは肝機能が不良で、大きな肝切除に耐えられない場合には、肝臓の中央から下の区域だけを取る肝中央下切除、胆のうがんでは肝臓の底辺の一部分だけ取る肝床切除を行う場合もあります。

肝臓を切除する手術を行う際、最も怖い合併症は肝臓が十分機能しなくなる肝不全です。肝臓の60%以上を切除するときには肝不全を防ぐために門脈塞栓術を行います。部分麻酔を行い、体の外側から皮膚、肝臓へカテーテル(管)を通し、切除する側の肝臓に栄養を送っている門脈をふさぐ方法で、残す側の肝臓は血流が増えて大きくなるので、肝不全の発生率が減少します。

また、非常に早期の胆のうがん、胆管がんで、胆道の外やリンパ節にがんが広がっている可能性がきわめて少ないと考えられる場合には、胆のうのみ、あるいは胆管の一部を切除します。手術の術式に関係なく、胆管切除術を行ったときには、残った胆管と小腸(空腸)をつなぎ、胆汁の通り道を再建します。

なかには、胆のう炎や胆石症で胆のうを摘出する手術を受け、採取した病変を病理検査で調べた結果、胆のうがんと判明する場合があります。その場合は、きわめて早期のがんを除き、周囲のリンパ節や胆管、肝臓の一部を切除する再手術を受けることが必要です。

下部胆管がんと乳頭部がん

下部胆管がんや乳頭部がんは隣接する臓器にがんが広がりやすい特徴があります。そのため、胆のう、下部胆管、周囲のリンパ節、すい臓の半分、十二指腸、胃や小腸の一部を切除する膵頭(すいとう)十二指腸切除術を行うのが標準的です。膵頭十二指腸切除術では小腸と残った胆管、すい臓、胃をつないで、胆道と消化された食べ物の通り道を再建します。非常に早期の下部胆管がんでは胆管のみ切除する場合があります。乳頭部がんは、がんを取り残す恐れがあるため乳頭部のみの切除は危険です。

胆道がんの術後補助療法

日本のガイドラインでは、胆道がんの術後補助化学療法は確立されていないことが明記されています。海外では、術後補助化学療法としてカペシタビン(商品名ゼローダ)を6カ月間内服することで再発を抑える効果が報告されたことから、術後補助化学療法としてカペシタビンが位置付けられていく可能性も考えられます。

日本では現在、術後補助化学療法を検討する第3相試験が行われており、術後6カ月間にゲムシタビン(商品名ジェムザール)、またはテガフール・ギメラシル・オテラシル(商品名ティーエスワン)を投与し、手術のみの患者集団を対照群として再発予防効果を比較しています。さらに、術後補助化学療法としてゲムシタビンとティーエスワンを直接比較する試験も行われています。

手術の合併症と後遺症

上部胆管がんの手術の合併症で肝不全のほかに怖いのは、再建した胆管と空腸の不具合により胆汁が漏れ腹膜炎を起こすことです。腹膜炎が起こると悪寒を伴うような高熱が出ます。膵頭十二指腸切除術で最も注意すべき合併症は、すい臓と小腸をつないだ部分から膵液(すいえき)が漏れる膵液瘻(すいえきろう)、胆管と小腸を再建した部分から胆汁が漏れる胆汁瘻(たんじゅうろう)です。

また、膵頭十二指腸切除術や肝臓を切除する手術を受けた人は、一時的に胃の動きが悪くなるために、食後に胃もたれを起こし食欲が減退しやすくなります。脂肪吸収力が弱まるので、下痢をしやすくなり、脂っこい食べ物が苦手になる人も少なくありません。脂肪分の多い食事を避け、消化のよいものを少しずつとるようにするとよいでしょう。胃もたれ、下痢、体重減少は、手術から時間が経てば徐々に改善します。すい臓の消化機能が低下している人は、膵消化酵素補充薬を服用する必要があります。

術前、術後の運動が回復を早める

胆道がんの手術の前後には、呼吸機能を回復させるために、積極的に体を動かすことが大切です。手術前は、がんと告げられたショックで自宅にこもりがちになる人もいますが、ウォーキング、登山、ゴルフなど、積極的に体を動かしましょう。

減黄療法のために入院している場合でも、体調に合わせて毎日1~2時間は病院の中や庭を散歩してください。術後はキズの回復具合にもよりますが、安静にするよりも適度に体を動かすようにしたほうが回復は早くなります。痛みが強いときには我慢せずに担当医や看護師に伝えましょう。

胆道がんの手術は難度の高い手術です。合併症のリスクを減らすためには、経験豊富な病院で治療を受けることが重要です。日本肝胆膵外科学会では、胆道がん手術などの症例数が多い高度技能専門医や修練施設をホームページ(http://www.jshbps.jp/)で公開しています。都道府県別に認定専門医や認定修練施設を検索できますので、手術ができるかどうかの判断やセカンドオピニオンも修練施設で受けるようにしましょう。

本コンテンツは認定NPO法人キャンサーネットジャパンが2017年4月に出版した「もっと知ってほしい 胆道がんのこと」より抜粋・転記しております。

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