目次
放射線治療
乳房温存手術のあとや乳房切除術でわきの下のリンパ節に転移がある、あるいはしこりが大きい場合には、再発を防ぐための放射線療法が必要です。放射線療法は痛みの治療にも有効です。
放射線療法は、細胞の増殖に必要な遺伝子に作用してがん細胞にダメージを与え、死滅させる局所療法です。手術後の放射線療法の目的は、温存した乳房や乳房切除後の胸壁や周辺のリンパ節からの再発を防ぐことです。乳房温存手術を受ける人は、術後に放射線療法を受ける必要があります(乳房温存療法)。
乳房温存手術では、切除した組織の断面およびその近くにがん細胞が残らない(断端陰性)ように、腫瘍とその周辺を取り除きます。それでも、目に見えない微小ながん細胞が乳房内に残っている危険性があり、放射線療法でそういった微小ながん細胞を死滅させて根絶やしにする必要があるのです。
乳房温存手術後に放射線療法を加えることで、加えなかったときと比べて乳房内再発を約3分の1に減らせます。乳房内再発とは、残った乳房に再びがんが発生することで、その場合には、一般的に乳房切除術が必要になります。
乳房温存療法の一環である放射線療法の回数と期間は、温存乳房に1回1.8~2.0グレイを25回、合計45~50グレイを5週間かけて照射します。わきの下のリンパ節に転移が多数あった人は、鎖骨上窩(首のつけ根の鎖骨の上の部分)のリンパ節も併せて放射線をかけます。
1回の照射時間は1~2分程度なので、仕事を続けながら通院する人もいます。1度にたくさんの放射線を照射しないのは、正常細胞への影響を最小限にとどめるためです。
乳房切除術でも、わきの下のリンパ節に4個以上転移があったときや腫瘍が5センチ以上だった人は、薬物療法のほかに放射線療法を行うと再発のリスクを下げられます。放射線は、腫瘍のあった側の胸壁と鎖骨上窩に1回1.8~2.0グレイを25回程度照射します。
放射線は目に見えず、痛くも熱くもありませんが、治療中、または治療終了後数か月以内の副作用として、倦怠感、皮膚炎、放射線肺臓炎を生じることがあります。
薬物療法と放射線療法を両方受ける必要があるときには、薬物療法が終わって副作用がある程度落ち着いた時点(1か月後ぐらい)から放射線療法を開始します。
放射線療法は、骨転移などの局所的な痛みの軽減にも有効です。
本コンテンツは認定NPO法人キャンサーネットジャパンが2018年10月に出版した「もっと知ってほしい 乳がんのこと」より抜粋・転記しております。