薬物療法(化学療法)
頭頸部がんの薬物療法は、手術や放射線療法に先立って、あるいは併用で実施されるほか、初回治療後の維持化学療法や再発・転移時の治療としても行われます。さまざまな副作用に対して、予防や症状軽減の対策が進んできています。
初回治療から手術や放射線療法に追加
頭頸部がんでは最初の治療(初回/一次治療)の段階から、薬物療法として「導入化学療法」や「化学放射線療法」が行われます。導入化学療法とは、手術や放射線療法などほかの治療に先行して薬物療法を行うものです。シスプラチン(CDDP)+ 5-フルオロウラシル(5-FU)の2剤併用療法(FP療法)のほか、最近では、この2剤にドセタキセル(DTX)を加えた3剤併用療法(TPF療法)が行われるようになっています。
導入化学療法には、
①根治治療である手術や放射線療法の治療成績を高める
②がんが極めて小さくなった場合は手術を避け、放射線療法で根治を目指し、機能・臓器を温存する
③微小ながんの遠隔転移細胞を根絶する
などの目的があります。
一方、化学放射線療法は、放射線療法と薬物療法を同時に行う方法です。その際に組み合わせられる主な薬剤としては、シスプラチン単独、FP療法、そして分子標的薬のセツキシマブなどがあります。化学放射線療法は、
①強力な治療効果を得る
②根治を目指し、手術を避けて機能・臓器を温存する
③放射線療法の増感剤として、その効果を高める
などの目的で実施されます。
初回治療後や再発・転移時にも実施
初回治療後の再発を予防するために、再発リスクの高い進行がんでは、根治治療後も薬物療法を継続する「維持化学療法」が行われることがあります。維持化学療法には、強力な薬物療法を数回続ける方法と、経口抗がん剤のS-1*を長期間内服する方法があります。
そのほか、再発・転移時には、手術や放射線療法の単独での治療が難しい場合に、CDDP+5-FUにセツキシマブを加えた3剤併用療法などの薬物療法が行われます。*TS-1とも呼ばれる
多剤併用、放射線併用では副作用が強め
頭頸部がんの薬物療法で起こりやすい主な副作用は、骨髄抑制(白血球減少、血小板減少、貧血など)、消化器症状(食欲不振、吐き気・嘔吐、下痢など)、口内炎、脱毛、肝機能や腎機能障害などです。
薬剤特有の副作用としては、ドセタキセルでは過敏症、セツキシマブではニキビ(ざ瘡)などの皮膚障害や間質性肺炎、S1では下痢や食欲不振などが挙げられます。多剤併用療法や放射線併用療法では副作用が強く出現しやすいので注意が必要です。
最近は、抗がん剤の副作用による苦痛を軽減する方法が進歩しています。しかし、副作用が強い場合は薬剤の変更・中止を検討する必要もあります。薬物療法を受ける際には、副作用の現れ方やその対処法について、医師、薬剤師、看護師などに説明を受けておき、何かあれば相談するようにしましょう。
本コンテンツは認定NPO法人キャンサーネットジャパンが2015年5月に出版した「もっと知ってほしい 頭頚部がんのこと」より抜粋・転記しております。