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手術(外科)療法について
メラノーマでリンパ節以外の臓器への転移がないIII期までのステージでは、病変を完全に取り除く根治切除術が治療の基本です。米国のNCCN(National Comprehensive Cancer Network)ガイドラインでは、がんの大きさにより推奨されている切除マージンがあり、がん病変の端部から外側を広めに切除します。例えば、腫瘍径が2mmから4mmの場合は直径2cmが、4mm以上の場合は少なくとも2cmが切除範囲とされています。切除する深さは個別の深達度に対応して決定します。
また、転移なしの病期でも、病変部の切除とともに、がんが最初に転移するセンチネルリンパ節の生検が推奨されています。センチネルリンパ節の組織診断でわずかでも転移が発見された場合は、リンパ節を広範囲に切除するリンパ節郭清が推奨されています。
しかし、リンパ節郭清はリンパ浮腫というむくみを引き起こすことが明らかなため、全体の治療方針を考慮しつつ超音波検査で注意深く経過を観察すれば、リンパ節郭清を行わなくても治療成績が変わらない可能性があることが報告されています。
他の臓器への転移があるIV期では、切除が可能な少数個の転移巣は手術を行うこともありますが、切除不能の場合は基本的に薬物療法、放射線療法が行われ、治療の副作用や全身状態に応じて緩和ケアを同時に行うこともあります。
日本皮膚悪性腫瘍学会がまとめた2005年から2013年のメラノーマの病期別治療成績によると、全般的に、転移がない病期での術後5年生存率が80%から85%で、以降もその生存率が維持されることから、根治切除により、いわゆる治癒に至る可能性は高いと考えられます。
しかし、転移がなくても潰瘍がある場合や、リンパ節や周辺皮膚への転移、遠隔転移がある場合は治療成績が低下します。したがって、根治切除しきれない、切除後の再発リスクが高い、あるいは根治切除不能の患者には、薬物療法を中心とする治療戦略が重要になります。
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