7月3日、特定非営利活動法人日本肺癌学会と肺がん患者の会ワンステップは厚生労働省に対して、EGFRチロシンキナーゼに対して効果がなくなった患者に対して使用する薬剤AZD9291の早期承認の要望書を提出しました。
がん細胞表面上にあるEGFRというタンパク質の遺伝子に変異(異常)があると「がん化」することがわかっており、日本人の肺がん患者の約1/3はEGFRに遺伝子変異を有することがわかっています。こういった場合、これをターゲットとした分子標的薬(EGFRチロシンキナーゼ阻害剤)が有効です。しかしながら、これらを使用を続けるとEGFR遺伝子は更に変異して、薬が効きにくくなります。これをT790変異といいます。こうした薬が効きにくくなった場合に使用できる薬剤がAZD9291です。
【以下、肺癌学会ニュース&トピックス(抜粋・一部追記)】
現時点でT790M変異陽性肺癌に対する治療薬は市場に存在しません。現状では、EGFR TKI耐性となった患者に対しては殺細胞性抗がん薬が投与されますが、その効果は満足できるものではなく、有効な治療の確立が急務となっています。
最新の国際共同臨床試験(AURA試験)の結果によると、EGFRチロシンキナーゼ治療中に耐性化し病勢が進行したT790M変異を有する肺がん患者にAZD9291を投与した場合、奏効率(一定以上腫瘍の縮小効果が見られた群)は54%、奏効持続期間(効果が持続した期間)の中央値は12.4ヵ月、無増悪生存期間(腫瘍が大きくなるのを抑えた期間)の中央値は13.5ヵ月と、非常に良好な成績が報告されました。これは、現状において実施される実地医療(殺細胞性抗がん薬)の治療成績を大幅に上回るものとのことです。
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記事:可知 健太