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希少がんMeet the Expert 第2回 GIST(消化管質腫瘍)書き起こし~講義 後編~

  • [公開日]2017.04.25
  • [最終更新日]2020.03.25
スピーカー
国立がん研究センター中央病院 病院長 西田 俊朗
開会挨拶
講演 前編
講演 後編
ディスカッション

西田) 副作用の話をしますが、これは皆さん方のほうが詳しいかもしれません。一番多いのはたぶん浮腫だと思います。目や顔や足に出ますよね。僕は、利尿剤はあまりお勧めしません。腎臓に悪いと思います。

どうしても必要で、例えば体重が4kg増えたという場合は飲んだらいいと思いますが、それ以外のときにはできるだけ、やはり塩分制限をしていただくのが、僕は必ず来た患者さんに「外食はちょっとあきらめてね」と言ってるんです。外食は、結構塩分多いんですよね。

ですから、塩分を制限することが一番確実。それで駄目であったら利尿剤だと思います。それから皮疹が出る。これは非常につらい皮疹が出ることがあって、治せないものも中にはあります。非常に確率は低いですけれど1%から2%ぐらいです。ほとんどはなんとかなります。

あとは目のところに出血、結膜に出血して目が赤くなる人がいますよね。皮膚に出血とか、結構あります。悪心、嘔吐に関しても比較的上手にお薬を内服することで、これは自分でコントロールできると思うんです。ご飯を食べた後に飲むとか、寝る前に飲むとか、上手にやればこれはコントロールできる。

この筋痙攣はなかなかできません。ただ対処方法知ってれば、例えばマッサージとか、少し突っ張った時にある一定の体位をとれば楽になるとか、そういうことは自分でやっていただけるとわかると思います。

でも、必ず症状はあります。副作用は絶対あります。やめてみたら皆さん「楽になりました」とおっしゃいますから、たぶん副作用は皆さん持っているんだと思う。

ただ、さきほども言いましたように、やめると悪くなるというのをおわかりになって、お薬を飲んでいただければありがたい。最初が、一番副作用が強く出やすいんです。最初の1カ月から2カ月を乗り越えたら、徐々に減っていきます。消えることはなかなかないんですけど、徐々に楽になります。

ですから、最初2カ月我慢するんだというつもりで飲んでいただくのがいいかな、と。これを見てもわかるように、だんだん白いところがあまりひどくないという意味ですが、白いところが増えてますし、ピークがだんだん下がっていってるのがわかると思います。これは統計を取ってみたら必ずそうなりますので、そういうふうにやっていただきたい。

次に大事なのは、イマチニブはだいたい2年間、今は2年半ぐらいですかね。だいたい効いてくれてるのですが、2年半ぐらいすると半分の人が効かなくなります。その時にどんなかたちで出てくるかというのが大事なんです。実は一番多いのは、どのがんでもありますが、いったんこういうふうに小さくなったやつが、ある日突然また出てくる。同じところに出てくるわけです。

もう一つは全然別の場所、これまでなかったところにポンッと出る。こういうのはわかりやすが、実はここに転移がありますが、よく効いて黒くなって小さくなった中に、もっと小さくなっているのに、中に白く染まってくるのがある。これも効かなくなった証拠なんです。

造影CTができるなら、是非造影CTしていただける。中にはできない人もいらっしゃるので、その時はこれは非常に診断が厳しいです。ただ、こういうのを見たからイコール耐性かどうかは、なかなか難しいのがあって、耐性のときには、ちょっと少し慣れた先生に診ていただくのがいいかと思います。

よく聞かれるのは、切り替えのタイミングです。基本的には翌日から飲んでもらってもいいです。ただし副作用が軽いときだけです。副作用が重いときには軽くなるのを確認してから、次に移っていただければいいです。

イマチニブは1週間すると体の中から消えています。1週間休んだら体の中から消えてるので、1週間休めば、絶対に次はいけるという理解をしておいていただければいいかなと思います。

イマチニブの後は、さきほどのように、スニチニブ、レゴラフェニブ、それが駄目だったら、あとで出します治験に参加していただいたらいいですが、ガイドラインでは局所療法、手術、そういう治療をしてみませんか?というようなオプションがあります。

ただ、これはスニチニブの後にもあるのですが、私自身はもう局所療法は、イマチニブの時しかないかなというふうに思ってます。これは後で出します。

たとえば、これは長い付き合いがあって2年前に亡くなった患者さん、治験の時に参加された患者さんです。十二指腸で、この人は結構手術された。一番最初、僕のところに来られる前、1回手術されてるんです。十二指腸の手術、そのあと1回、2回、3回、4回手術してます。

この人はいけると思い、結果としては良かったんですが、例えば2年目に肝臓に効かない病変が出てきた。これを手術して取って、2年たったときに、脾臓のところに出来物ができた。

これをしばらく様子を見ていたんです。これがだんだん大きくなってくる。これを取りにいったら、実はGISTではなかったのですが、デスモイドという良性腫瘍だったんですが、仕方ないから取り、トータルすると5年間ぐらい。うまくいけているのは。

ここで肝臓にもう1回出来物がイマチニブ効かないところができて、それを取って1年後にもう1回できて「もうこれが限界やね」と言って、スニチニブに切り替えて、2年間スニチニブ治療をして、あとはレゴラフェニブ、これは半年ちょっと治療された。こういうふうに非常にうまくいく人もいるんですけど、これは例外的だと思ってください。

ですからよくこれを理解した人にやっていただいた方がいいと思いますので、イマチニブをやってる最中に手術をしようというときは、やはり専門家のところに是非行ってください。これはもうオプション。スニチニブの後に治療できるのは非常に少ないです。ハーバードのレポートでも、あんまりお勧めしませんと書いてあります。例外的な人はいますけど、基本的にはあまり一般的にはお勧めできないということです。

スニチニブ治療は一般的には、保険適用では4週間飲んで2週間休んで、4週間2週間でやっているのですけれど、時々僕は人によっては、ずっと量を減らして、これは4錠飲んでいますけれど、3錠でずっと、あるいは2錠でずっと飲むという飲み方もあると思います。いろいろなやり方があります。海外では、どちらを飲んでもいいです。日本は保険適用はこれしか飲んでいません。海外両方飲んでます。

非常にこういうふうに、おなかの中が腫瘍だらけだったのが、あっという間に消えてしまう。よく効けば切れ味のいい薬なんです。PETや他の検査でも全部消えてしまっています。このように効いてくれるのもあるのですが、小さくなるのはだいたい7%くらいで、4割の人がなんとかいけますが、ほとんどは大きさは変わらないというかたちです。

だから、GISTの治療のときには、大きさは変わらなくてもいいので、大きくならなければいいという治療をしていただければいいかなと思います。スニチニブのほうが、一般的には副作用が強いです。効果が出る濃度では副作用が十分に出る。副作用のほうが早く出やすいと言われてるんです。

ですから、スニチニブこそ副作用をうまく対処していくということが非常に重要です。そのためには予防が一つは重要です。少し出始めたところで、お医者さんに診ていただいて、これはやめたほうがいいのか、あるいは量を減らしたほうがいいのか、早めに相談していただくというのがいいと思います。

さきほどのイマチニブのように最初の1サイクル目、6週目が圧倒的に多いです。最初を乗り切れば、あとはほとんどの人が乗り切れます。

例えばこれは一番有名な、北海道の小松先生から頂いたいつも使っているスライド。やっている最中、こんなになるんです。歩けないんです。ところが2週間休むと元通りになる。そうすると2回目のときには、同じ轍を踏まないように量を減らして、しかもさきほど言いました予防をきちんとする、予防しないと、こんなになってしまうのです。

ではどんな予防をやるの?と言ったら、ここに書いてあるように保湿をするとか、体重をできるだけ1カ所にかける。体重をかけるところが一番ひどくなりますから、かけないようにする。痛みが出だした時には、少し早めに休薬、減量しておくというかたちで、やっていくのが大事かなと思います。

これを全部飲めたらいいのですが、ポイントだけ言います。だいたい高血圧ある人が結構多いんです。飲んで5日目ぐらいからなります。血圧が上がってきます。ですから1週間目はしっかり血圧、朝、夕、測っておくことは大事です。もともと高い人は、最初から血圧、ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)のお薬は出しています。そういったお薬を飲みながら一緒にやってくのも大事かなと思います。

日本人は、これが非常に多い。血小板が減ったり、白血球が減ったり、駄目になる人が多いので、これはお医者さんと相談です。これはご本人は全くわかりません。お医者さんと相談。口内炎、あるいは歯肉炎を起こしますけれど、これは口はきちんと清潔にしておけば、だいたい大丈夫です。歯が抜けたりすることは基本的にないです。

他に気を付けなければいけないのは、長く飲んでた時に甲状腺機能低下が起こります。レゴラフェニブも同じです。甲状腺機能低下が起こる人、結構いらっしゃいます。ですから、時々甲状腺機能を測るというぐらいでいいかなと思います。

加えて言うとレゴラフェニブは、スニチニブより怖いのは肝障害、ごくごくまれにこれで亡くなる患者さんがいらっしゃるので、特に1サイクル目から2サイクル目が一番危ないです。

それを乗り越えたら、だいたい大丈夫です。レゴラフェニブまでお薬を使ったらどうしよう、という方がたぶんいらっしゃると思いますが、是非がんセンターがやっているような臨床試験、治験に参加していただけると非常にいいと思います。

では今、具体的にあるの?というのは、ご存知のようにTAS-116のフェーズ2をやってますが、残念ながら中央病院は参加できていないです。東病院の土井先生がやっていますので、東病院に行っていただければ参加できると思う。3月ぐらいまでは、たぶん参加できるんじゃないかなと思ってます。

もう一つは第1相試験に参加するというのもいいと思います。これが駄目だった時には、第1相試験に参加してもらうというのが一番いい。それでも駄目なときは、元気であれば以前使って良く効いてた薬を飲む。あるいは引き続き、前の薬を続けるというのもありますし、ギアチェンジして痛みを取ったり、そういうところに集中するという方法もあります。

是非、「この標準治療が終わったら治験に参加してください」というのは、GISTもそうですが肉腫もそうなんです。希少がんはあまり治療法がないんですよね。やはり、こういうフェーズ1のところ、最初のところに参加してもらい、そこで「この薬効くよ。この病気に。」を見つけてくれたら、お薬屋さんも、「ではこれをGISTで治験しましょう」「これ肉腫で治験しましょう」と、進めてくれるのです。

それがないとなかなかやってくれません。希少がんはなかなか治験をやってくれません。効く人がいらっしゃれば彼らは絶対参加をしてくれるので、是非多くの治験に参加、ご協力いただければありがたいです。

「では参加したら私は損なの?」、そんなことはありません。イマチニブをもう1回飲みなおす、これは韓国のデータですがイマチニブを飲むと、飲まないよりは2倍伸びますというデータが出ていますが、イマチニブ飲んだのと、もう1回イマチニブをチャレンジしたのと、P1差がほとんど量が同じなんです。

ですから、もう1回リ・チャレンジするぐらいだったら、是非新しい治験に参加していただくのが一番いいかなと、私自身は思ってます。是非、ご協力ください。

最後に、遺伝子。先ほどもお話ししましたように、もともとkitというのは、あるSCFというたんぱくがくっついたら、初めて増えなさいというシグナルを出します。ところが、ある特定の場所に遺伝子変異が起こると、こんなものがなくても自分で「どんどん増殖しましょう」となると思います。そうすると、これがある細胞では「増殖しなさい」という命令がくるので、段々増えていって腫瘍ができていくということです。

通常は、kit自体は悪性の原因ではない。増殖を増やすだけです。だから、がん化とは直接関係ない。出来物はできるけれども、あちこち転移していくこととは全く別。ですから、小さいのがたくさん、例えば60代には3人に1人あると言いました。でもそれがみんななるわけではないと言ったようにみんな持ってるんです、小さいやつは。でもそれは、悪性化は全く関係ない。でもそこにほかの遺伝子が、いろいろな変異が起こって初めて悪性化します。

アクセルを踏んでるのはここなんです。このアクセルを外した途端に増殖は起きないです。止まりますから、だからここが開ける。さきほど言いましたkitが8割、PDGFは1割、それ以外のやつが1割と言われています。kit、あるいは遺伝子は特徴があります。

たぶん皆さん方が聞かれたように小腸のGISTが悪いと言われていますが、特にエクソン、kitのエクソン9というところに変異があると、イマチニブが効かない、効きにくい。正式に言うと効きにくいと言われてます。

エクソン11は非常に良く効いてくれますけども、こういった変異があると悪性度、再発率が非常に高いということもよくわかっています。PGDFRの遺伝子は、ほとんどが胃なんです。このタイプなので胃しか起こりません。そして非常におとなしい。でもいったん再発したら、効かないとさきほど言いましたよね。効かないやつが圧倒的に多いです。

両方に遺伝子変異がないやつは、例えば、子供さんにできやすい。子供さん、女性、胃にできやすいというような腫瘍もあります。これはだいたい10歳から30歳ぐらいまであります。みんな同じ変異なんです。そういう非常にまれなやつ、これが100万人に1人以下です。そういうGISTもあります。

この辺になったら、たぶん日本に数人しかいないと思う。そういうGISTもあるんです。どれぐらいの頻度で起こるかというのは、今がんセンターで調べようかと計画しています。

では、「遺伝子を調べるときってどんなときですか?」に対しては、まず本当にGISTなのか診断に迷うときにする。これが一番いいと思います。それから治療効果を決めたいというときにもいいと思います。

さきほど言いましたように、イマチニブ治療を受けるときには、是非受けてください。効かないものがあるんです。効かないのに、例えば3年間だったら1,000万円かかるわけです。効かない治療をする必要は全くないので、是非、イマチニブを治療するときには聞いてください。

それから、耐性になったとき。本当に耐性なのか、もっと別のものなのかというものを調べる。これができたらいいなと思います。

将来的には、血液を採ってリキッドバイオプシー(liquid biopsy)と言いますが、血液を採ってそれをできたらいい。がんセンターでそれを今考えてやっています。まだ実験段階です。遺伝子を調べる方法は、通常はバイオプシーするか、手術した検体から採ります。

先ほど言いましたように、まだ研究段階ですけども、血液の中に流れてるがんの遺伝子を、引っぱり出してきて調べようという試みを、今、がんセンターでやっています。

方法としては一般的には、皆さんが、これはもう昔、20世紀の半ばぐらいしかやっていません。DNAを増やして一つ一つ調べるというのがありますし、それから、こうやってまとめて、ある一定の、特定の遺伝子100とか20とか大きさがいろいろありますが、一気に調べてしまうというのがあります。例えば、SCRUM JAPANというのやってますよね。これは、こういったパネル解析で一気に、なんぼかまとめてやろうというやつです。

じゃあ、kitでSCRUMに全部参加しなければいけないかっていうと、GISTはkitとPDGFRがほとんどだということがわかってるので、それだったらkitと、あるいは調べたほうが、今んところ安くつくし、これはまだ保険では、いってないんです。

ですから研究段階で今やってますので、例えば、kitやPDGFR、ミューテーションがない場合とか、耐性になった場合とか、通常のこういうやつが検査受けられないというときは、参加されるとメリットがあるかなというふうに思います。

例えば一つの例です。遺伝子の耐性のとき調べてみたら、どういうことがわかるか、実は、普通はGISTになる原因の遺伝子ってのは一つだけなんです。ところがイマチニブを使ってる最中に、もう一つ新しい遺伝子変異が起こってきて、イマチニブが効かなくなります。

もう一つ起こってくる場所、2カ所あって、名前は覚えなくていいんですけども、Aという場所とBという場所で覚えてください。黄色の場所と赤の場所、どちらもイマチニブが効かない。

ところが黄色の場所は、スニチニブが非常に良く効いてくれる。さっきシュッと小さくなりましたよね?あの人は実は僕が手術して、こちら側だということがわかっていたので、治験が始まったと同時に入ってもらったら非常に効いてくれて、1年間ピシッと効いてくれたんですけども、もう一つの箇所に、赤の場所に起こったやつは、全くスニチニブが効かないんです。

ということは、これ50:50なんですけども、もしこういうことが将来的にきちんと分けれるようであれば、こちら側のほうが実はレゴラフェニブが結構良く効いてくれることがわかってくる。

ただし実験段階、いわゆる試験段階の中で、今ちょうどRESET Studyって言って、レゴラフェニブをここに持って来たら、どれぐらい効くだろうという研究を、今、中央病院、東病院、大阪大学などに参加してもらってやっています。

こういうところを、血液を採ってこの遺伝子変異がわかるかということも調べることをしていますので、もしイマチニブが耐性になってる人がいらっしゃいましたら参加していただいたらいいかな、と。

そうすると、また次の治療が変わってくるかもしれないと思ってます。以上長々と話してきましたけども、手術自体非常にやさしい腫瘍です。簡単なんです。ただ、あとのフォローや、さきほど言った機能を、どう温存するかということを考えると、やはり専門病院で診ていただいてください。

それから診断は、やはりきちんと診断できる病理医がいる医療機関でやっていただくのが大事かと思います。再発率の高い人に関しては、修学的治療をします。これもどういうやつにやったらいいかは、やはり専門家に診てもらうほうがいいと思います。

基本はやはり標準治療です。今ガイドラインに書いてる治療をやっていただくのが一番いいと思いますし、残念ながら標準治療が終わっちゃった、私はレゴラフェニブまで終わっちゃいました、というときには、是非中央病院でも結構ですし、東病院でも結構です。

フェーズ1試験というのもやっていますし、先ほど言いましたが、TAS-117の試験もありますので、是非治験のほうに参加して、新しいお薬を作り、なおかつ自分もメリット得られるようにやっていただければありがたいなと思います。以上で私の話は終わります。ご清聴ありがとうございます。

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