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ホルモン受容体陽性早期乳癌の術後補助療法としてアロマターゼ阻害剤を10年迄投与延長することで、再発リスクを低減する。 MA17R試験 米国臨床腫瘍学会(ASCO 2016 プレナリーセッション)
6月3日~6月7日にシカゴで開催されている第52回米国臨床腫瘍学会(ASCO:アスコ)のAnnual Meeting(年次総会)にて、マサチューセッツ総合病院のPaul Goss(ポール・ゴス) 医師により、ホルモン受容体陽性の閉経後早期乳がん患者に対する術後補助療法としてアロマターゼ阻害薬(レトロゾール)の投与期間を、5年から10年に延長することで再発リスクが減らすことが認められた。本演題はプレナリーセッションの1つである。
MA17試験は2005年に、今回と同じくPaul Goss(ポール・ゴス)医師よりアメリカ国立癌研究所が発行するジャーナル(NCIジャーナル)に、閉経後ホルモン受容体陽性乳がんの手術後タモキシフェン(ノルバデックス)5年投与の後にレトロゾール(フェマーラ)とプラセボ(偽薬)で比較試験を5187名を対象として報告しており、タモキシフェン5年投与後にレトロゾールを5年服用した方が 再発のリスクを減らすことを証明されている。
今回、閉経後ホルモン受容体陽性乳がんの手術後 アロマターゼ阻害剤(レトロゾール)を4.5年〜6年服用した1918人に対して レトロゾール群とプラセボ群(偽薬)をさらに5年追加投与の比較試験となる。
アロマターゼ阻害薬を10年間使用続けることにより、生活の質を下げずに再発リスクが34%低減
ホルモン受容体陽性閉経後早期乳がん患者に対する術後補助療法としてのアロマターゼ阻害薬の投与期間は、5年から10年に延長することで再発リスクが低減できることが明らかとなった。
5年経過後に再発しなかった割合は、レトロゾール群95%、プラセボ群91%となり、レトロゾールを使用した方が再発リスクを34%軽減することが示された。(統計学的にも証明(HR0.66、p=0.01))
また、手術を施行したのとは反対の乳房の発がんについては、レトロゾールを58%軽減することが示された。(統計学的にも証明(HR0.42、p=0.007))。
5年生存率はレトロゾール群が94% プラセボ群が93%で統計学的な差は認めらなかった。
5年追加投与期間の副作用は レトロゾール群で骨痛、アルカリフォスファターゼ上昇、ALT上昇が多く認められた。
骨折は、レトロゾール群で14%、プラセボ群で9%で有意にレトロゾール群で、また新たに発症した骨粗鬆症もレトロゾール群で11%、プラセボ群で6%で有意にレトロゾール群で多く認められた。そのほかの副作用は 同程度であった。
患者が報告したクオリティーオブライフ(QOL;生活の質)について、両群の間で同等であり、レトロゾール延長投与群とプラセボ群の間に、臨床的に意義のある差はなかったことが報告された。
QOLの評価はSF-36で実施。
なお、本試験結果は、6月5日、New England Jounalにも掲載された。
記事:椿 五十郎