9月28日、大塚製薬株式会社は、既存の分子標的薬であるチロシンキナーゼ阻害薬に抵抗性又は不耐容の慢性骨髄性白血病と再発又は難治性のフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病の治療薬である「ポナチニブ(アイクルシグ)」の国内における製造販売承認を取得したと発表した。
アイクルシグは、BCR-ABLという酵素に作用する次世代チロシンキナーゼ阻害薬である。
慢性骨髄性白血病および一部の急性リンパ性白血病にみられる異常な染色体のことをフィラデルフィア染色体 Ph染色体)といい、異常な酵素を合成します。この酵素はBCR-ABLと呼ばれ、この働きにより造血幹細胞を無制限に増殖し、これらの白血病を引き起こすことが知られている。
よって、BCR-ABLを抑制することによりこれらの腫瘍細胞の増殖が抑えられるために、BCR-ABLチロシンキナーゼ阻害薬としてイマチニブ(グリベック)等の分子標的薬が開発され多くの患者さんは寛解できるようになった。現在、イマチニブ(グリベック)の他に、ニロチニブ(タシグナ)、ダサチニブ(スプリセル)およびボスチニブ(ボシュリフ)といったチロシンキナーゼ阻害薬が使用される。
しかしながら、薬剤を使用し続けることにより、薬剤に対する耐性が発現するケースがある。
中でも、腫瘍細胞のT315Iという遺伝子が変異することにより耐性を得るタイプは、耐性獲得の変異としては最も多いにも関わらず最も難治性といわれている。
アイクルシグはT315I変異に対しても阻害作用を示すように設計されており、既存のBCR-ABLチロシンキナーゼ阻害薬に抵抗性(効果がなくなった方)または不耐容(副作用などにより薬剤が使用できなくなった方)の慢性骨髄性白血病、再発または難治性のフィアデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病、特にT315I変異に代表される変異型BCR-ABLにも効果を示す。
アイクルシグの作用機序
大塚製薬HPより
いち早く患者に届けるために~薬価基準収載前の無償薬剤提供開始~
大塚製薬は、同プレスリリースにて、アイクルシグの薬価収載前の無償薬剤提供を開始すると発表した。治療の選択肢が限られている患者に倫理的観点から一日でも早く本剤が届けられるように、承認後から薬価基準収載までの期間、本剤の国内第Ⅰ/Ⅱ相試験実施施設のうち、薬剤提供が受け入れ可能である一部の施設にて、本剤の無償提供を実施するとのこと。
使用を希望する方は、以下にお電話を。
<アイクルシグ薬価収載前無償提供に関するお問い合わせ先>
電話番号:0120-983-688
受付時間:9時~17時(土・日・祝日・休業日を除く)
大塚製薬プレスリリース
記事:可知 健太
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