多形膠芽腫(GBM)と初めて診断され、腫瘍の外科的摘出後の患者を対象とする第1相試験(CheckMate-143、NCT02017717)で、がん免疫療法薬ニボルマブ(商品名オプジーボ)と放射線照射の併用療法は、脳腫瘍の標準的化学療法であるテモゾロミド(商品名テモダール)の併用、非併用に関わらず忍容性が良好で、安全性に新たな問題は認められなかった。
米国で2016年11月17日から20日に開催された第21回神経腫瘍学会議(SNO)で、米国Memorial Sloan-KetteringがんセンターのAntonio Omuro氏が中間結果を発表した。2016年11月19日、OncLive に抄録(データカットオフ2016年3月23日)作製時よりも最新のデータ(同2016年9月16日)が紹介された。
Omuro氏は、「本試験は、プログラム細胞死受容体1(PD-1)を標的とするモノクローナル抗体オプジーボが抗腫瘍免疫を活性化するか、放射線療法や化学療法の効果を増強するか、という問いに応えるもの」とし、まずは初の前向き試験として安全性が確認されたことから、多形膠芽腫(GBM)の標準治療にオプジーボを組み入れること、そして、同様の患者集団を対象とする今後の試験継続に妥当性があると結論した。
目次
オプジーボ+放射線+テモゾロミド併用する臨床試験
初診・摘出後の多形膠芽腫(GBM)で、オプジーボ+放射線+テモゾロミド併用群にはMGMT遺伝子状態を問わず57人が登録され、オプジーボ+放射線群にはMGMT遺伝子プロモータ領域の非メチル化が確認された53人が登録された(各テモゾロミド併用群、テモゾロミド非併用群)。オプジーボは3mg/kgを2週ごとに静注し、放射線は標準的な線量を照射した。テモゾロミドは、導入期に1日75mg/m2、以降は150mgから200mg/m2を1サイクル28日のうち5日間、6サイクル以上経口投与した。
その結果、2016年9月16日データカットオフの最新中間解析で、治療期間中央値はテモゾロミド併用群が3.25カ月、テモゾロミド非併用群が3.71カ月、それぞれ51人(89%)、47人(89%)が治療を継続していた。
有害事象を理由とする治療中止例は、テモゾロミド併用群は6人で、トランスアミナーゼ上昇が3人、無力症、疲労、および低血圧がそれぞれ1人であった。テモゾロミド非併用群は4人で、アラニントランスアミナーゼ上昇、リパーゼ上昇、単純ヘルペスウイルス(HSV)脳炎、および急性腎障害がそれぞれ1人であった。治療に関連する重篤な有害事象の発現率は、テモゾロミド併用群が22.8%、テモゾロミド非併用群が15.1%であった。
治療中の死亡例は、テモゾロミド併用群の5人中、4人は病勢進行(PD)が死因で、1人の死因は不明であった。テモゾロミド非併用群も5人で、うち3人はPD、関連するHSV脳炎と臨床転帰の悪化がそれぞれ1人、残り1人は不明であった。
テモゾロミド併用群20人、非併用群20人の解析対象において、治療12カ月後の全生存率は80%であった。
MGMT遺伝子プロモーターについて
本試験では、DNA修復酵素のO-6-メチルグアニン-DNAメチル基転移酵素(MGMT)遺伝子プロモーター領域のメチル化、非メチル化の状態を予め検査している。テモゾロミド併用群ではMGMTメチル化が11人、非メチル化が39人、不明が7人であった。テモゾロミド非併用群では非メチル化が52人、不明が2人であった。
最も悪性度の高い(グレード4)の多形膠芽腫(GBM)は予後が極めて悪く、5年生存率は10%を下回る。現在、GBMの標準治療はアルキル化薬のテモゾロミドと放射線の併用療法であるが、この標準治療で生存期間延長が報告された際、MGMT遺伝子プロモーター領域がメチル化されている患者は予後が良好であると示されたことを受け、メチル化状態が治療に対する感受性や治療後の転帰に関連する、すなわちMGMT遺伝子プロモーター領域が治療の予測因子であるという認識が共有されている。
臨床試験情報
現在、日本、米国、欧州などでオプジーボと放射線併用療法の試験2本が行われており、1つはMGMT遺伝子プロモーター領域の非メチル化が確認されたGBM患者を対象とする第3相試験(CheckMate-498、NCT02617589、JapicCTI-163137(日本語))、もう1つはMGMT遺伝子メチル化、または不明のGBM患者を対象とする第2相試験(CheckMate-548、NCT02667587)である。両試験とも初診患者の初治療である。
記事:可知 健太
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