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非小細胞肺がん EGFRチロシンキナーゼ阻害薬抵抗性患者の治療管理 JCO
~第3世代タグリッソの治療決定のためのEGFR-T790遺伝子検査は、まずリキッドバイオプシーで~
上皮増殖因子受容体(EGFR)-T790Mチロシンキナーゼを標的とする不可逆的阻害薬オシメルチニブ(商品名タグリッソ)が2016年3月、厚労省により承認された。適応症は、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬に耐性を獲得したEGFR-T790M遺伝子変異陽性で手術不能、または再発の非小細胞肺がん(NSCLC)である。優先審査品目指定で、申請後およそ7カ月での承認であった。第1世代のイレッサ、タルセバ、第2世代のジオトリフに続く第3世代と位置付けられている。
既存EGFRチロシンキナーゼ阻害薬の治療に抵抗性を示した患者に対し、次の治療にタグリッソを使うかどうかはEGFR-T790M遺伝子型の検査結果による。その検査のサンプルは、最初はリキッドバイオプシー、すなわち血漿サンプル(無細胞血漿DNA)が提案された。血漿サンプルと腫瘍生検サンプルは本遺伝子検査で相補的な役割を持つと認識し、最初は血漿で、次に腫瘍で検査することが望ましいとされた。
米国Dana-Farberがん研究所のGeoffrey R. Oxnard氏は2016年10月1日のJournal of Clinical Oncology(JCO)誌にタグリッソ第1相試験(AURA)のレトロスペクティブ遺伝子解析結果を発表した。リキッドバイオプシーで変異陽性の場合は皮膚生検サンプルで確認後にタグリッソの治療を開始すること、陰性の場合は腫瘍生検サンプルで再び検査し、陽性の場合はタグリッソ、陰性の場合は化学療法というステップを踏む治療管理が望ましいとしている。血漿を用いた検査での偽陽性率は30%であったことから、リキッドバイオプシーで陰性の患者は腫瘍生検で検査する必要がある。また、リキッドバイオプシーを用いる非侵襲的遺伝子検査が、タグリッソ治療による臨床転帰を予測する一定のバイオマーカーとなり得るという。
なお、第1世代、第2世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬の治療に抵抗性を示した患者に対する標準的な治療管理では、腫瘍生検サンプルでのEGFR-T790M遺伝子型の検査結果が変異陽性の場合は第3世代のタグリッソ、変異陰性の場合は化学療法に進むとされている。
Oxnard氏らが試験AURAで腫瘍生検、リキッドバイオプシーサンプルの双方を用いた遺伝子検査を実施した患者は216人であった。
EGFR-T790M遺伝子型検査結果~リキッドバイオプシーは約70%程度の検査精度(検査感度と検査特異性)~
・216人中、リキッドバイオプシーを用いたEGFR-T790M遺伝子検査(BEAMing)で変異陽性は129人、同陰性は87人
・216人中、腫瘍生検標本を用いたEGFR-T790M遺伝子検査(cobas)で変異陽性は158人、同陰性は58人
・リキッドバイオプシー標本と腫瘍生検標本ともに陽性は111人であったことから、血漿cfDNAをサンプルとする検査感度は70.3%
・リキッドバイオプシー標本と腫瘍生検標本ともに陰性は40人であったことから、腫瘍生検標本をサンプルとする検査特異性は69.0%
・リキッドバイオプシー標本で陰性、腫瘍生検標本で陽性の不一致例は47人、血漿cfDNAで陽性、腫瘍生検標本で陰性の不一致例は18人
EGFR-T790M遺伝子型別のタグリッソの効果~腫瘍生検もリキッドバイオプシーの効果精度がほぼ一致~
リキッドバイオプシーの結果がEGFR-T790M変異陽性の患者集団では、全奏効率は63%、無増悪生存(PFS)期間中央値は9.7カ月、腫瘍生検標本の検査結果がEGFR-T790M変異陽性の患者集団ではそれぞれ62%、9.7カ月で、ほぼ一致することが確認された。
リキッドバイオプシーの検査結果がEGFR-T790M変異陰性の患者集団では、全奏効率が46%、PFS期間中央値が8.2カ月であったが、そのうち腫瘍生検標本の検査でEGFR-T790M変異陽性となった患者集団に限ると全奏効率は69%、PFS期間中央値は16.5カ月となり、一方、腫瘍生検でも同様にEGFR-T790M変異陰性の患者集団はそれぞれ25%、2.8カ月で予後不良であった。
これらの結果から、リキッドバイオプシー、腫瘍生検標本のいずれのサンプルでもEGFR-T790M遺伝子変異陽性の患者に対するタグリッソ治療後の臨床転帰に差はなく、いずれのサンプルでもEGFR-T790M遺伝子変異陰性の患者と比べ良好ということがいえる。
サンプル別、判定別の無増悪生存(PFS)期間中央値
・リキッドバイオプシー標本でEGFR-T790M変異陽性の患者集団(169人)は同陰性の患者集団(104人)との有意差は認められなかった(各9.7カ月、8.2カ月、p=0.188)。
・腫瘍生検標本でEGFR-T790M変異陽性の患者集団(179人)は同陰性の患者集団(58人)と比べ有意に延長した(各9.7カ月、3.4カ月、p<0.001)。
・リキッドバイオプシー標本でEGFR-T790M変異陰性104人のうち、腫瘍生検標本では陽性となった集団(47人)は腫瘍生検標本でも陰性であった集団(40人)と比べ有意に延長した(各16.5カ月、2.8カ月、p<0.001)。
・リキッドバイオプシー標本でEGFR-T790M変異陽性の167人のうち、腫瘍生検標本でも陽性であった集団(111人)は腫瘍生検標本では陰性となった集団(18人)と比べ有意に延長した(各9.3カ月、4.2カ月、p=0.0002)。
記事:可知 健太
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