免疫チェックポイントのプログラム細胞死受容体1(PD-1)を標的とする抗体ニボルマブ(商品名オプジーボ)の単剤治療に反応しなかった尿路上皮がん患者に対し、別の免疫チェックポイントである細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4)を標的とする抗体イピリムマブ(商品名ヤーボイ)を併用投与したところ、8人中5人に有益性が得られた。米国Memorial Sloan KeteringがんセンターのMargaret K. Callahan氏らが2017年2月の米国臨床腫瘍学会泌尿器がんシンポジウム(ASCO-GU)で発表した医師主導第2相試験(CA209-260、NCT02553642)の結果である。
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オプジーボの効果が得られなくなった方にヤーボイを投与する追加する試験
進行、または転移のある尿路上皮がん患者にオプジーボ3mg/kgを2週ごとに静注し、病勢進行(PD)と判定された患者にヤーボイ1mg/kgを追加した。併用療法では、両剤ともに3週ごとに4回静注し、以降はオプジーボの単剤治療を実施した。その結果、有効性解析対象の42人中30人がオプジーボ単剤治療でPDとされ、そのうち10人がヤーボイとの併用療法を受けた。10人のオプジーボの単剤治療期間は6週間から30週間で、そのうち併用療法の有効性解析対象は8人であった。
放射線学的評価では、8人中1人が部分奏効(PR)、4人が病勢安定(SD)と判定され、固形がんの治療効果判定基準(RECIST)では8人中1人がPR、3人がSDと判定された。両方の判定基準でPRが得られた1人は同一の患者で、オプジーボ単剤治療でも両方の基準でPDと判定されていた。併用療法後は奏効が48週間にわたり持続した。SDの持続期間は1人が24週間に達し、3人は6週間であった。
安全性に関してCallahan氏は、オプジーボ単剤治療、ヤーボイとの併用療法のいずれにおいても忍容性は良好と結論した。オプジーボ単剤治療期間中にグレード3以上の有害事象は認められなかった。ヤーボイとの併用療法期間中に認められたグレード3以上の有害事象は、下痢(1人)、および食欲不振(1人)であった。
尿路上皮がんでもオプジーボ×ヤーボイ併用療法の臨床開発を開始
オプジーボは2017年2月、治療歴のある局所進行、または転移性の尿路上皮がんの適応で米国食品医薬品局(FDA)により迅速承認された。また、オプジーボ×ヤーボイの併用療法は悪性黒色腫の適応ですでに承認されており、尿路上皮がんに対するヤーボイの安全性、および免疫学的修飾作用を示した臨床試験報告もある。こうした現状を踏まえ、オプジーボ単剤で奏効する尿路上皮がん患者が実際には少数であることを考慮し、Callahan氏は免疫チェックポイント二重阻害による新たな選択肢を提案している。
現在、未治療で切除不能、または転移のある尿路上皮がん患者を対象に、免疫チェックポイント二重阻害療法(オプジーボ×ヤーボイ併用療法)の有効性と安全性を標準的化学療法と比較する第3相無作為化非盲検試験(CheckMate901、NCT03036098)が計画されている。目標登録は690人で、試験完了予定は2022年11月である。
記事:川又 総江
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