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ALK陽性/ROS1陽性進行性非小細胞肺がんに対するロラチニブ、脳転移症例に対しても腫瘍縮小効果を示す第18回世界肺癌学会議

  • [公開日]2017.10.28
  • [最終更新日]2017.11.30

2017年10月15日から18日まで横浜で開催されていた国際肺癌学会(IASLC)第18回世界肺癌学会議(WCLC)にて、ALK陽性またはROS1陽性の進行性非小細胞肺がん患者に対する次世代ALK/ROS1チロシンキナーゼ阻害薬であるLorlatinib(ロラチニブ)の有効性安全性を検証した第II相試験の結果がオーストラリア・メルボルン・Peter MacCallum CenterのBenjamin Solomon氏により発表された。

本試験は、進行性非小細胞肺がん患者(N=275人)に対してLorlatinib単剤療法を投与し、主要評価項目である客観的奏効率(ORR)、脳転移の腫瘍縮小率を検証した第II相試験である。なお、本試験では登録された患者を遺伝子変異の有無、治療歴の有無、脳転移の有無などの因子で複数のコーホートに分け、患者背景別の有効性、安全性を検証している。

本試験の結果、患者背景別の主要評価項目である客観的奏効率(ORR)と脳転移の腫瘍縮小率はそれぞれ下記の通りである。

1)未治療のALK陽性進行性非小細胞肺がん患者群においては、それぞれ90%(95%信頼区間:74-98%)、75% (95%信頼区間:35-97%)であった。

2)前治療としてクリゾチニブ(商品名ザーコリ;以下ザーコリ)単剤療法またはザーコリ+化学療法併用療法による治療歴のあるALK陽性進行性非小細胞肺がん患者群においては、それぞれ69%(95%信頼区間:56-81%)、68% (95%信頼区間:50-82%)であった。

3)前治療としてザーコリ以外のALK阻害薬単剤療法またはザーコリ以外のALK阻害薬+化学療法併用療法による治療歴のあるALK陽性進行性非小細胞肺がん患者群においては、それぞれ33%(95%信頼区間:16-54%)、42% (95%信頼区間:15-72%)であった。

4)前治療として2剤,3剤のALK阻害薬単剤療法または2剤,3剤のALK阻害薬 +化学療法併用療法による治療歴のあるALK陽性進行性非小細胞肺がん患者群においては、それぞれ38%(95%信頼区間:30-49%)、48% (95%信頼区間:37-59%)であった。

5)前治療歴関係なくROS1陽性進行性非小細胞肺がん患者群においては、それぞれ36%(95%信頼区間:23-52%)、56% (95%信頼区間:35-76%)であった。

一方の安全性はというと、Lorlatinibによる最も一般的な有害事象は発症率の高い順に、高コレステロール血症(81%)、高トリグリセリド血症(60%)、浮腫(43%)、末梢神経障害(30%)、体重増加(18%)、認知機能障害(18%)、気分障害(15%)、下痢(11%)、関節痛(10%)、AST上昇(10%)であった。

なお、低度から中等度の有害事象はLorlatinibの減量または投与間隔延長などをすることで管理可能であった。また、Lorlatinibによる治療関連死亡は1人も認められず、治療継続が不可能となる患者も3%と低率であった。

本試験の有効性、安全性の結果を受けてBenjamin Solomon氏は以下のように述べている。”本試験の結果は、Lorlatinibが複数の治療歴のあるALK陽性進行性非小細胞肺がん患者に対して効果的な治療選択肢になり得るを示しています。今回公表された結果は、第2世代ALK阻害薬による前治療歴を有する、つまり現時点で治療選択肢の少ない非小細胞肺がん患者を対象とした包括的なデータになります。また、脳転移を有する非小細胞肺がん患者の症状をコントロールすることは非常に重要ですが、同時に難しい側面があります。しかし本試験では、全てのコーホートにおいてLorlatinibが脳転移の腫瘍縮小を示すことを証明しました。”

2017年4月26日、1、2剤のALK阻害薬による前治療歴を有するALK陽性進行性非小細胞肺がん患者に対する治療として、Lorlatinibは米国食品医薬品局(FDA) よりブレークスルーセラピー(画期的治療薬)の指定を受けている。本試験の結果は、米国食品医薬品局(FDA) をはじめ世界的な審査機関の間でALK陽性進行性非小細胞肺がんの治療方針を議論する時の重要なデータになるであろう。

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