2018年1月18日より20日までアメリカ合衆国・カルフォルニア州・サンフランシスコで開催されている消化器癌シンポジウム(ASCO-GI2018)のポスターセッションにて、前治療歴のあるKRAS遺伝子野生型再発難治性大腸がん日本人患者に対するセツキシマブ(商品名アービタックス;以下アービタックス)+イリノテカン併用療法に対するパニツムマブ(商品名ベクティビックス;以下ベクティビックス)+イリノテカン併用療法の有効性における非劣性を検証した第II相のWJOG6510G試験(UMIN000006643)の結果が四国がんセンター消化器内科・仁科智裕氏らにより公表された。
WJOG6510G試験とは、フッ化ピリミジン系製剤、イリノテカン、オキサリプラチンの治療歴のあるKRAS遺伝子野生型再発難治性大腸がん患者(N=121人 ※本試験の評価対象は120人)に対してアービタックス+イリノテカン併用療法を投与する群(N=59人)、ベクティビックス+イリノテカン併用療法を投与する群(N=61人)に無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として全生存期間(OS)を検証した第II相試験である。
本試験に登録された患者背景は、年齢中央値がアービタックス+イリノテカン併用療法群64歳、ベクティビックス+イリノテカン併用療法64歳、パフォーマンスステータス(PS)0の患者が54%に対して62%、男性63%に対して69%、原発巣腫瘍部位の左側比率88%に対して85%、複数の転移個数を有する患者が66%に対して51%であった。
上記背景の患者に対する結果、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はアービタックス+イリノテカン併用療法4.27ヶ月に対してベクティビックス+イリノテカン併用療法5.42ヶ月、ベクティビックス+イリノテカン併用療法で病勢進行または死亡(PFS)のリスクが32.6%(ハザード比:0.674,P=0.035)減少することが示された。
また、副次評価項目である全生存期間(OS)中央値はアービタックス+イリノテカン併用療法11.53ヶ月に対してベクティビックス+イリノテカン併用療法14.85ヶ月、ベクティビックス+イリノテカン併用療法で死亡(OS)のリスクが32.5%(ハザード比:0.675,P=0.037)減少することが示された。
以上のKRAS遺伝子野生型患者における結果に加え、今回のポスターセッションではRAS遺伝子、BRAF遺伝子のステータス別の無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)が公表された。なお、KRAS、RAS、BRAF遺伝子の状態が特定された患者は83人で、19人(23%)の患者がRAS遺伝子変異、4人(5%)の患者がBRAF遺伝子変異を示した。
RAS遺伝子野生型患者における無増悪生存期間(PFS)中央値の結果は、アービタックス+イリノテカン併用療法5.26ヶ月に対してベクティビックス+イリノテカン併用療法6.06ヶ月、ベクティビックス+イリノテカン併用療法で病勢進行または死亡(PFS)のリスクが37.1%(ハザード比:0.629, P=0.08)減少することが示された。
一方、RAS遺伝子野生型患者における全生存期間(OS)中央値の結果は、アービタックス+イリノテカン併用療法11.26ヶ月に対してベクティビックス+イリノテカン併用療法14.85ヶ月、ベクティビックス+イリノテカン併用療法で死亡(OS)のリスクが18.2%(ハザード比:0.818, P=0.449)減少するも両群において差は確認されなかった。
なお、RAS遺伝子変異BRAF遺伝子変異型患者に対する治療反応性はアービタックス+イリノテカン併用療法、ベクティビックス+イリノテカン併用療法ともに確認されなかった。
以上のWJOG6510G試験の結果より、仁科智裕氏らは以下のように結論を述べている。”RAS遺伝子野生型再発難治性大腸がん日本人患者に対するベクティビックス+イリノテカン併用療法はアービタックス+イリノテカン併用療法よりも僅かに生存ベネフィットが優れておりました。今後はRAS遺伝子野生型患者を対象に、さらなる解析結果が必要となるでしょう”
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