2018年1月17日、医学誌『Journal of Clinical Oncology(JCO)』にて再発難治性多発性骨髄腫患者に対するカルフィルゾミブ(商品名カイプロリス;以下カイプロリス)+レナリドミド(商品名レブラミド;以下レブラミド)+デキサメタゾン併用療法の有効性を検証した第III相のASPIRE試験(NCT01080391)の副次評価項目である全生存期間(OS)の追跡結果がJohn Theurer Cancer Center・David S. Siegel氏らにより公表された。
ASPIRE試験とは、1から3レジメンの前治療歴のある再発難治性多発性骨髄腫患者(N=792人)に対して28日を1サイクルとしてカイプロリス+レブラミド+デキサメタゾン併用療法を投与する群(N=396人)、またはレブラミド+デキサメタゾン併用療法を投与する群(N=396人)に1:1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として全生存期間(OS)などを比較検証した国際多施設共同オープンラベルの第III相試験である。
本論文が公表される以前、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はカイプロリス+レブラミド+デキサメタゾン併用療法群26.3ヶ月に対してレブラミド+デキサメタゾン併用療法群17.6ヶ月、カイプロリス+レブラミド+デキサメタゾン併用療法により病勢進行または死亡(PFS)のリスクが31%(ハザード比:0.69,95%信頼区間:0.57-0.83,両側P値 < 0.001)統計学的有意に減少することが証明されており、今回は副次評価項目である全生存期間(OS)の最終解析の結果が公表された。
その結果、全生存期間(OS)中央値はカイプロリス+レブラミド+デキサメタゾン併用療法群48.3ヶ月(95%信頼区間:42.4-52.8)に対してレブラミド+デキサメタゾン併用療法群40.4ヶ月(95%信頼区間:33.6-44.4)、カイプロリス+レブラミド+デキサメタゾン併用療法により死亡(OS)のリスクが21%(ハザード比:0.79,95%信頼区間:0.67-0.95,片側P値 < 0.0045)統計学的有意に減少することが証明された。
また、前治療歴のレジメン数別の患者群における全生存期間(OS)中央値についても解析されており、1レジメンの治療歴のある患者群における全生存期間(OS)中央値レブラミド+デキサメタゾン併用療法群よりもカイプロリス+レブラミド+デキサメタゾン併用療法群で11.4ヶ月延長、2レジメン以上の治療歴のある患者群においては6.5ヶ月延長した。
一方の安全性としては、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)を発現した患者はカイプロリス+レブラミド+デキサメタゾン併用療法群87.0%、レブラミド+デキサメタゾン併用療法群83.3%であった。その治療関連有害事象(TRAE)の内訳としては急性腎障害が3.8%に対して3.3%、心不全が4.3%に対して2.1%、虚血性心疾患が3.8%に対して2.3%、高血圧が6.4%に対して2.3%、血小板減少症が20.2%に対して14.9%、末梢神経障害が2.8%に対して3.1%であった。
なお、治療関連有害事象(TRAE)のために治療継続困難になった患者はカイプロリス+レブラミド+デキサメタゾン併用療法群19.9%、レブラミド+デキサメタゾン併用療法群21.5%であった。
以上のASPIRE試験の結果よりDavid S. Siegel氏らは以下のような結論を述べている。”レブラミド+デキサメタゾン併用療法群に比べてカイプロリス+レブラミド+デキサメタゾン併用療法群は全生存期間(OS)中央値を7.9ヶ月、統計学有意に延長することを示しました。特に、カイプロリス+レブラミド+デキサメタゾン併用療法より治療ベネフィットを享受できる患者さんは1レジメンの治療歴のある再発難治性多発性骨髄腫患者さんです。”
この記事に利益相反はありません。