この記事の3つのポイント
・主要評価項目である用量制限毒性(DLT)は1人の患者でグレード3の蛋白尿を発症した
・アジア人11%を含む未治療進行性腎細胞がん患者に対するバベンチオ+アキシチニブ併用療法の安全性を検証した第Ib相試験
・副次評価項目である客観的奏効率(ORR)はPD-L1発現率1%以上の患者で66%、PD-L1発現率1%未満の患者で36%を達成
2018年3月12日、医学誌『Lancet Oncology』にて進行性腎細胞がん患者に対する一次治療として
のアベルマブ(商品名バベンチオ;以下バベンチオ)+アキシチニブ(商品名インライタ;以下インライタ)併用療法の安全性を検証した第Ib相試験(NCT02493751)の結果がDana-Farber Cancer Institute and Brigham and Women’s Hospital・Toni K Choueiri氏らにより公表された。
本試験は、18歳以上の未治療進行性腎細胞がん患者(N=55人)に対して2週間に1回バベンチオ10mg/kg+1日2回インライタ5mg併用療法を投与し、主要評価項目として治療開始4週間以内に発症した用量制限毒性(DLT)、副次評価項目として部分奏効(PR)または完全奏効(CR)を達成として定義された客観的奏効率(ORR)、有害事象発症率(AE)、奏効持続期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)などを検証した日本を含む国際多施設共同オープンラベルの第Ib相試験である。
なお、本試験は用量設定フェーズ(N=6人)、用量拡大フェーズ(N=49人)の2つの段階に分かれている。用量設定フェーズではバベンチオ+インライタ併用療法の治療開始前に1日2回インライタ5mgを7日間投与している。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値60.3歳、65歳未満の患者割合69%(N=38人)、65歳以上の患者割合31%(N=17人)。性別は男性76%(N=42人)、女性24%(N=13人)。人種は白人80%(N=44人)、アジア人11%(N=6人)、アフリカ系アメリカ人6%(N=3人)、その他2%(N=1人)、不明2%(N=1人)。ECOG Performance Statusスコアは0が66%(N=36人)、1が35%(N=19人)。MSKCCリスク分類による患者の割合は低リスク51%(N=28人)、中リスク46%(N=25人)、高リスク2%(N=1人)。標的腫瘍部位の数は1つが46%(N=25人)、2つが42%(N=23人)、3つが13%(N=7人)。
上記背景を有する患者に対してバベンチオ+インライタ併用療法を投与した結果、主要評価項目である用量制限毒性(DLT)は下記の通りである。用量設定フェーズの6人中4人(67%)の患者でグレード3または4の治療関連有害事象(TRAE)を発症した。その有害事象(AE)の内訳はグレード3の高血圧、手足症候群、蛋白尿、粘膜炎症、グレード4のリパーゼ上昇であった。そして、グレード3の蛋白尿を発症した1人の患者が用量制限毒性(DLT)を発症し、インライタを減量した。以上の結果より、本治療の最大耐量(MTD)は2週間に1回バベンチオ10mg/kg+1日2回インライタ5mgとして決定した。
副次評価項目である客観的奏効率(ORR)は下記の通りである。用量設定フェーズの6人中6人の患者(100%,95%信頼区間:54-100%)、用量拡大フェーズの49人中26人の患者(53%,95%信頼区間:38-68%)、全体では55人中32人の患者(58%,95%信頼区間:44-71%)で客観的奏効(ORR)を達成した。なお、55人中3人(6%)の患者で完全奏効(CR)を達成した。
そして、55人中52人の患者で腫瘍細胞上のPD-L1発現率が測定されており、PD-L1発現率1%以上、1%未満、5%以上、5%未満、それぞれの客観的奏効率(ORR)は下記の通りである。PD-L1発現率1%以上の患者は41人中27人の患者(66%,95%信頼区間:49-80%)、PD-L1発現率1%未満の患者は11人中4人の患者(36%,95%信頼区間:11-69%)、PD-L1発現率5%以上の患者は19人中28人の患者(68%,95%信頼区間:48-84%)、PD-L1発現率5%未満の患者は24人中12人の患者(50%,95%信頼区間:29-71%)で客観的奏効(ORR)を示した。以上の結果より、PD-L1発現率の高い患者は低い患者よりも客観的奏効(ORR)が良好であることを示した。
一方の安全性として、10%以上の患者で発症が確認された治療関連有害事象(TRAE)は下記の通りである。下痢、高血圧、発声障害、疲労、手足症候群、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)上昇、皮膚障害、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)上昇、甲状腺機能低下症、アミラーゼ上昇、食欲低下、粘膜炎症、注射部位反応、リパーゼ上昇、吐き気である。また、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)を発症した患者は55人中32人(58%)で発症し、1人の患者が自己免疫性心筋炎のために死亡に至った。
なお、その他の副次評価項目である奏効持続期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)はイベント数を達成していないため現在のところ測定できていない。
以上の第Ib相試験の結果よりToni K Choueiri氏らは以下のような結論を述べている。”未治療の進行性腎細胞がん患者に対する一次治療としてのバベンチオ+インライタ併用療法は忍容性があり、各薬剤それぞれの既存の安全性プロファイルと一致していました。客観的奏効率(ORR)をはじめ有効性も良好であるため、対照群をスニチニブ(商品名スーテント)にした第III相試験を実施するする必要があります。”
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