2018年1月30日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて再発難治性多発性骨髄腫患者に対する経口選択的核外輸送タンパク質阻害剤(SINETM;(Selective Inhibitor of Nuclear Export)であるSelinexor(KPT-330)+デキサメタゾン併用療法の有効性を検証した第II相のSTORM試験(NCT02336815)の結果がUniversity of Pennsylvania・Dan T. Vogl氏らにより公表された。
STORM試験とは、ボルテゾミブ(商品名ベルケイド)、カルフィルゾミブ(商品名カイプロリス)、レナリドミド(商品名レブラミド)、ポマリドミド(商品名ポマリスト)、ダラツムマブ(商品名ダラザレックス)などに対して難治性を示した多発性骨髄腫患者(N=79人)に対して28日を1サイクルといて 1、3、8、10、15、17日目にSelinexor80mg+デキサメタゾン20mg併用療法を投与し、主要評価項目として部分奏効(PR)以上として定義された全奏効率(ORR)、副次評価項目として奏効持続期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)などを検証したシングルアームオープンラベルの第II相試験である。
本試験に登録された患者背景は、年齢中央値63歳(34-78)、前治療レジメン数中央値7レジメン(3-17)であった。また、全患者79人の内、48人は4レジメンに対して難治性を示しており、31人は5レジメンに対して難治性を示した。
上記背景を有する患者に対してSelinexor+デキサメタゾン併用療法を投与した結果、主要評価項目である全奏効率(ORR)は21%(95%信頼区間:13%〜31%)を示し、統計学的有意な奏効率を示さなかったものの試験前に事前に設定された最小許容レベルの全奏効率(ORR)である15%よりも高かった。なお、4レジメンに対して難治性を示した患者における全奏効率(ORR)は21%、5レジメンに対して難治性を示した患者では20%であった。
さらに、t(4;14)、t(14;16)、 17p欠失などのハイリスク症例患者(N=17人)別の全奏効率(ORR)についても検証しており、下記の通りである。ハイリスク症例患者全体では35%、 17p欠失患者(N=8)では38%、t(4;14)患者(N=4)では50%、t(14;16)患者(N=1)では100%の全奏効率(ORR)を示していた。
また、最小奏効(MR)以上の奏効を得られた患者26人の22人(85%)は1サイクル以内の治療時点であり、反応性は早く、部分奏効(PR)以上の奏効を得た患者の治療持続期間(DOR)中央値は5ヶ月であった。
副次評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値は2.3ヶ月、全生存期間(OS)中央値は9.3ヶ月を示した。なお、1サイクル以内に最小奏効(MR)以上の奏効を得られた患者の全生存期間(OS)中央値は、病勢安定(SD)または病勢進行(PD)の患者に比べて統計学的有意に改善を示した(P=0.01)。
一方の安全性としては、非血液治療関連有害事象(TRAE)は吐気が73%、食欲不振が49%が、疲労が63%、嘔吐が44%、下痢が43%であった。また、グレード3または4の血液治療関連有害事象(TRAE)は、血小板減少症が59%、貧血が28%、好中球減少症23%、出血が3%であった。なお、発熱性好中球減少症が1人、グレード3以上の感染が14人の患者で発症している。そして、治療関連有害事象(TRAE)のために52%(N=41人)の患者が投与中断、37%(N=29人)の患者が減量、18%(N=14人)の患者が投与中止になっている。
以上のSTORM試験の結果より、Dan T. Vogl氏らは以下のように結論を述べている。”Selinexor+デキサメタゾン併用療法は複数の治療歴のある再発難治性多発性骨髄腫患者さんに対しても全奏効率(ORR)21%を示しました。この結果より治療選択肢の限られた患者さんの新しい治療選択肢としてSelinexor+デキサメタゾン併用療法が有望であるでしょう。”
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