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日本人を含む治療歴3レジメン以下のROS1融合遺伝子陽性進行性非小細胞肺がん患者に対するザーコリ、客観的奏効率(ORR)71.7%を示す医学誌『Journal of Clinical Oncology』より

  • [公開日]2018.04.09
  • [最終更新日]2018.04.09
この記事の3つのポイント
・非小細胞肺がん患者の内、約1から2%の患者がROS1融合遺伝子陽性である
・ROS1融合遺伝子陽性進行性非小細胞肺がん東アジア人患者に対するザーコリ単剤療法の客観的奏効率ORR)は71.7%を示した
・ROS1融合遺伝子陽性進行性非小細胞肺がん東アジア人患者に対するザーコリ単剤療法の安全性は、既存の安全性プロファイルと一致していた

2018年3月29日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて3レジメン以下の治療歴のあるROS1融合遺伝子陽性進行性非小細胞肺がん東アジア人患者に対するALKおよびROS1阻害薬であるクリゾチニブ(商品名ザーコリ;以下ザーコリ)単剤療法の有効性を検証した第II相試験(NCT01945021)の結果がGuangdong Lung Cancer Institute・Yi-Long Wu氏らにより公表された。

本試験は、3レジメン以下の治療歴のあるROS1融合遺伝子陽性進行性非小細胞肺がん東アジア人患者(N=127人)に対して1日2回ザーコリ250mgを病勢進行または治療継続が困難になる有害事象(AE)発症まで投与継続し、主要評価項目として客観的奏効率(ORR)、副次評価項目として奏効持続期間(DOR)、初回奏効期間(TTR)、病勢コントロール率DCR)、無増悪生存期間PFS)、全生存期間(OS)などを検証した日本を含む国際多施設共同シングルアームオープンラベルの第II相試験である。

本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値は全体(N=127人)で51.5歳(22.8-79.7歳)、日本人患者(N=26人)で56.3歳(30.2-79.1歳)。性別は全体で男性42.5%(N=54人)、女性57.5%(N=73人)、日本人で男性38.5%(N=10人)、女性61.5%(N=16人)。ECOG Performance Statusは全体でスコア0が26.8%(N=34人)、スコア1が73.2%(N=93人)、日本人でスコア0が38.5%(N=10人)、スコア1が61.5%(N=16人)。

喫煙歴は全体でなしが71.7%(N=91人)、ありが28.3%(N=36人)、日本人でなしが61.5%(N=16人)、ありが38.5%(N=10人)。肺がんの種類は全体で腺がん97.6%(N=124人)、扁平上皮がん0.8%(N=1人)、大細胞がん1.6%(N=2人)、日本人で腺がん100.0%(N=26人)、扁平上皮がん0%、大細胞がん0%。

肺がんの進行具合は全体で局所進行性肺がん4.7%(N=6人)、転移性肺がん95.3%(N=121人)、日本人で局所進行性肺がん0%、転移性肺がん100.0%(N=26人)。脳転移を有する患者割合は全体で18.1%(N=23人)、日本人で11.5%(N=3人)。前治療歴は全体で0レジメン18.9%(N=24人)、1レジメン41.7%(N=53人)、2レジメン24.4%(N=31人)、3レジメン15.0%(N=19人)、日本人で0レジメン7.7%(N=2人)、1レジメン53.8%(N=14人)、2レジメン23.1%(N=6人)、3レジメン15.4%(N=4人)。

以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である客観的奏効率(ORR)71.7%(N=91人,95%信頼区間:63.0%-79.3%)を示し、客観的奏効率(ORR)を達成した患者の内13.4%(N=17人)の患者で完全奏効(CR)、58.3%(N=74人)の患者で部分奏効(PR)を達成した。なお、客観的奏効率(ORR)は事前に設定された臨床的意義のある奏効率として定義された基準値を満たしていた。

また、副次評価項目である奏効持続期間(DOR)中央値は19.7ヶ月(95%信頼区間:14.1ヶ月-未到達)、初回奏効期間(TTR)中央値は1.9ヶ月(95%信頼区間:1.6ヶ月-15.8ヶ月)、病勢コントロール率(DCR)は8週時点で88.2%(95%信頼区間:81.3%-93.2%)、16週時点で80.3%(95%信頼区間:72.3%-86.8%)無増悪生存期間(PFS)中央値は15.9ヶ月(95%信頼区間:12.9-24.0ヶ月)、全生存期間(OS)中央値は32.5ヶ月(95%信頼区間:32.5ヶ月-未到達)。

一方の安全性として、ザーコリ治療期間中央値18.4ヶ月(0.1ヶ月-34.1ヶ月)時点における治療関連有害事象(TRAE)は下記の通りである。10%の以上の患者で確認された全グレードの治療関連有害事象(TRAE)はトランスアミナーゼ上昇55.1%(N=70人)、視力障害48.0%(N=61人)、吐き気40.9%(N=52人)、下痢38.6%(N=49人)、嘔吐32.3%(N=41人)、便秘29.9%(N=38人)、好中球減少症29.1%(N=37人)、リンパ球減少症22.8%(N=29人)、浮腫22.8%(N=29人)、味覚障害17.3%(N=22人)、食欲減退15.7%(N=20人)、クレアチニン上昇15.0%(N=19人)、倦怠感11.8%(N=15人)、徐脈10.2%(N=13人)。

また、5%以上の患者で確認されたグレード3または4の治療関連有害事象(TRAE)は下記の通りである。好中球減少症10.2%(N=13人)、トランスアミナーゼ上昇5.5%(N=7人)。なお、0.8%(N=1人)の患者がグレード1の下痢を発症したことによりザーコリを減量している。

以上の第II相試験の結果よりYi-Long Wu氏らは以下のように結論を述べている。”ROS1融合遺伝子陽性進行性非小細胞肺がん東アジア人患者さんに対するザーコリ単剤療法は、臨床的意義のある客観的奏効率(ORR)、奏効持続期間(DOR)を示しました。また、ザーコリの既存の安全性プロファイルと一致しており、本試験でも忍容性が確認されました。”

Phase II Study of Crizotinib in East Asian Patients With ROS1-Positive Advanced Non–Small-Cell Lung Cancer(DOI: 10.1200/JCO.2017.75.5587 Journal of Clinical Oncology – published online before print March 29, 2018)

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