・PRIMER試験とは日本人を含む少なくとも1種類のプラチナ系抗がん剤を含む化学(放射線)療法の治療歴を有する切除不能または再発胸腺がん患者に対するオプジーボ単剤療法の有効性、安全性を検証した第II相試験である
・治療歴を有する切除不能または再発胸腺がん患者に対するオプジーボ単剤療法の奏効率(RR)は0%を示した
・治療歴を有する切除不能または再発胸腺がん患者に対するオプジーボ単剤療法の疾患制御率(DCR)は73%を示した
2018年4月11日より4月14日までスイス・ジュネーブで開催されている第8回欧州肺癌学会議(ELCC 2018)にて、プラチナ系抗がん剤を含む化学(放射線)療法の治療歴を有する切除不能または再発胸腺がん患者に対する抗PD-L1抗体薬であるニボルマブ(商品名オプジーボ;以下オプジーボ)単剤療法の有効性、安全性を検証した第II相のPRIMER試験(UMIN000022007)の結果が独立行政法人国立病院機構 九州がんセンター ・瀬戸貴司氏により公表された。
PRIMER試験とは、少なくとも1種類のプラチナ系抗がん剤を含む化学(放射線)療法の治療歴を有する切除不能または再発胸腺がん患者(N=15人)に対して2週間に1回オプジーボ3mg/kgを投与し、主要評価項目としてRECIST v1.1中央判定による奏効率(RR)、副次評価項目として疾患制御率、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、疾患制御率(DCR)、安全性などを検証した医師主導の多施設共同非盲検下単群の第II相試験である。
本試験に2016年7月1日から2016年8月16日までに登録された15人の患者背景は下記の通りである。年齢中央値は55歳(34-70)。人種は日本人100%(N=15人)。性別は男性87%(N=13人)、女性13%(N=2人)。肺がんの種類は扁平上皮がん87%(N=13人)。オプジーボの投与サイクル数中央値は8サイクル(3-29サイクル)。
以上の背景を有する観察期間中央値3.8カ月(1.4-12.0ヶ月)時点におけるPRIMER試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である奏効率(RR)は0%(95%信頼区間:0%-21.8%)、11人の患者で病勢安定(SD)が得られ、24カ月以上病勢安定(SD)を達成した患者は5人いた。以上の結果より、試験早期中止基準である奏効率(RR)1%未満に該当したため、試験は早期中止になった。
また、副次評価項目である疾患制御率(DCR)は73%、無増悪生存期間(PFS)中央値は3.8カ月(95%信頼区間:1.9-5.6ヶ月)、12カ月無増悪生存率(PFS)13.3%(95%信頼区間:2.2%-34.6%)、全生存期間(OS)中央値は未到達(95%信頼区間:11.3-未到達)、12カ月全生存率(OS)は60%(95%信頼区間:31.8%-79.7%)。
一方の安定性としてグレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は4件のみ確認され、切除不能または再発胸腺がん患者に対するオプジーボ単剤療法の忍容性が認められた。なお、重篤な免疫関連有害事象(irAE)は2件のみ確認され、その内訳はグレード3のAST上昇、グレード2の副腎不全であった。
以上のPRIMER試験の結果より瀬戸貴司氏は以下のように結論を述べている。”PRIMER試験では、主要評価項目である奏効率(RR)を達成することはできませんでした。しかし、副次評価項目である疾患制御率は73%を示し、非常に期待のできる結果を示しました。”
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