・BRAF V600E遺伝子変異を有する患者は有しない患者よりも死亡のリスクを176%増加、再発のリスクを104%増加した
・BRAF遺伝子陽性/KRAS遺伝子陰性患者はBRAF遺伝子陰性/KRAS遺伝子陰性患者に比べて、女性、65歳以上、右側腫瘍部位、異時性肝転移の患者比率が高い
・BRAF遺伝子変異の存在が無病生存率(DFS rate)、全生存率(OS rate)に与える影響はKRAS遺伝子以上である
2018年5月16日、医学誌『JAMA Surgery』にて切除後大腸がん肝転移患者におけるBRAF遺伝子変異の有無が無病生存率(DFS rate)、全生存率(OS rate)に影響を与えるかどうかについて検証したコーホート研究の結果がJohns Hopkins University School of Medicine・Georgios Antonios Margonis氏らにより好評された。
本試験は、切除後大腸がん肝転移患者(N=853人)に対してBRAF V600E遺伝子、KRAS遺伝子のステータスを後ろ向きに解析し、BRAF V600E遺伝子変異を有する患者と有しない患者での無病生存率(DFS rate)、全生存率(OS rate)の違いについて検証したコーホート研究である。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値は60.2歳。性別は男性59.8%(N=510人)、女性40.2%(N=343人)。BRAF遺伝子、KRAS遺伝子ステータスはBRAF遺伝子陽性/KRAS遺伝子陰性5.1%(N=43人)、BRAF遺伝子陰性/KRAS遺伝子陰性56.5%(N=480人)、BRAF遺伝子陰性/KRAS遺伝子陽性38.4%(N=326人)。
以上の背景を有する切除後大腸がん肝転移患者におけるBRAF V600E遺伝子変異の有無による無病生存率(DFS rate)、全生存率(OS rate)の結果は下記の通りである。
BRAF V600E遺伝子変異を有する患者はBRAF V600E遺伝子変異を有しない患者よりも死亡のリスク176%増加(ハザード比2.76,95% 信頼区間:1.74-4.37,P < .001)、再発のリスク104%増加(ハザード比2.04,95% 信頼区間:1.30-3.20,P=002)を示した。なお、BRAF V600E遺伝子変異が無病生存率(DFS rate)、全生存率(OS rate)に与える影響は、KRAS遺伝子変異以上であることも判っている。
またBRAF遺伝子陽性/KRAS遺伝子陰性患者はBRAF遺伝子陰性/KRAS遺伝子陰性患者に比べて、性別は女性比率が多く(62.8%対35.2%)、年齢は65歳以上が多く(51.2%対36.9%)、腫瘍部位は右側が多く(62.8%対17.4%)、異時性肝転移が多かった(64.3%対46.8%)。
以上の後ろ向きコーホート試験の結果よりGeorgios Antonios Margonis氏らは以下のように結論を述べている。”BRAF V600E遺伝子変異の存在は切除後の大腸がん肝転移患者における生存率、再発率のリスク因子になり得ます。また、BRAF V600E遺伝子変異はKRAS遺伝子変異以上に生存率、再発率を決定する因子になり得ます。”
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