・SEAL試験とは、未治療のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)患者の無増悪生存期間(PFS)、24ヶ月無増悪生存率(PFS rate)と全生存期間(OS)の相関関係を評価し、無増悪生存期間(PFS)が全生存期間(OS)の代用エンドポイントになり得るかどうかを検証した多施設共同無作為化試験である
・本試験の結果、無増悪生存期間(PFS)は全生存期間(OS)の代用エンドポイントとしての基準を満たすことが示された
・本試験の結果、24ヶ月無増悪生存率(PFS rate)は全生存期間(OS)の代用エンドポイントとしての基準を満たさないことが示された
2018年7月5日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にてびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)患者の一次治療における無増悪生存期間(PFS)は全生存期間(OS)の代用エンドポイントになり得るかどうかを検証したSEAL(Surrogate Endpoints for Aggressive Lymphoma)試験の結果がMayo Clinic・Qian Shi氏らにより公表された。
SEAL試験とは、13のランダム化試験に登録された未治療のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)患者(N=7507人)を対象に、無増悪生存期間(PFS)、24ヶ月無増悪生存率(PFS rate)と全生存期間(OS)の相関関係をR2WLSまたはCopula法を用いて算出したR2Copulaにより評価(数値が1に近いほど相関が強いことを示す)し、無増悪生存期間(PFS)は全生存期間(OS)の代用エンドポイントになり得るかどうかを検証した多施設共同無作為化試験の結果である。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値は59.3歳(18.0-92.2歳)、その内訳は60歳未満42%(N=3128人)、60-69歳32%(N=2420人)、70歳以上26%(N=1959人)。性別は男性54%(N=4031人)、女性46%(N=3476人)。ECOG Performance Statusはスコア0-1が33%(N=2239人)、スコア2が25%(N=1702人)、スコア3が24%(N=1646人)、スコア4-5は17%(N=1143人)。Ann Arbor分類による病期はステージI/IIが36%(N=2715人)、ステージIIIが24%(N=1809人)、ステージIVが40%(N=2960人)。
以上の背景を有する患者における本試験の結果は下記の通りである。無増悪生存期間(PFS)の代替性は試験レベルと患者レベルの両方で検証されており、試験レベルでの無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)の関係はR2WLSで0.83(95%信頼区間:0.57-0.94)、R2Copulaで0.85(95%信頼区間:0.73-0.98)、事前に設定された代用エンドポイントとしての基準を満たすことが示された。なお、患者レベルでの無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)の相関関係も同様に強い傾向が示された。
一方、試験レベルでの24ヶ月無増悪生存率(PFS rate)と全生存期間(OS)の関係はR2WLSで0.77(95%信頼区間:0.51-0.92)、R2Copulaで0.78(95%信頼区間:0.59-0.96)、事前に設定された代用エンドポイントとしての基準を満たさなかった。
以上のSEAL試験の結果よりQian Shi氏らは以下のように結論を述べている。”びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)患者の一次治療におけるエンドポイントを全生存期間(OS)に設定する場合、長期の経過観察が必要となります。しかし、本試験の結果、無増悪生存期間(PFS)は全生存期間(OS)の代用エンドポイントになり得る可能性が示唆されたため、今後は早期の治療効果判定を可能にし、新規治療の開発を促進することになるでしょう。”
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