・筋層浸潤性膀胱がん患者対象の第2相のNRG/RTOG 0712試験
・ゲムシタビン+放射線併用療法の3年無遠隔転移率や完全奏効率を検証
・3年無遠隔転移率75%を上回り、安全性も良好
2018年11月15日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて筋層浸潤性膀胱がん患者に対する化学放射線療法であるゲムシタビン+放射線併用療法の有効性を検証した第2相のNRG/RTOG 0712試験(NCT00777491)の結果が21st Century OncologyのJohn J. Coen氏らにより公表された。
NRG/RTOG 0712試験とは、筋層浸潤性膀胱がん(cT2-4a)患者(N=66人)に対する放射線化学療法としてフルオロウラシル+シスプラチン+放射線併用療法を導入療法、コンソリデーション療法として投与する群(略記FCT,N=33人)、またはゲムシタビン+放射線併用療法を導入療法、コンソリデーション療法として投与する群(略記GD,N=33人)に1対1の割合で振り分け、主要評価項目として3年無遠隔転移率(DMF)、副次評価項目として導入療法終了時点における完全奏効率(CR)を検証した第2相試験である。
なお、本試験の主要評価項目である3年無遠隔転移率(DMF)の評価は比較ではなくベンチマークとして設定した3年無遠隔転移率(DMF)75%をFCT群、GD群がそれぞれ上回るかどうかを検証している。
本試験が実施された背景として、筋層浸潤性膀胱がん患者の標準化学放射線療法であるFCT療法に対して全ての患者が適しているわけではないためである。例えば、腎機能障害、聴覚障害を有する患者に対するシスプラチンベースの治療は相応しくない。以上の背景よりシスプラチンフリーの化学放射線療法レジメンであるGD療法の有効性、安全性を本試験で検証することを目的にしている。
本試験に登録された患者背景は以下の通りである。
年齢
FCT群=49歳以下6.1%(N=2人)、50-59歳15.2%(N=5人)、60-69歳39.4%(N=13人)、70歳以上39.4%(N=13人)
GD群=49歳以下0%、50-59歳12.1%(N=4人)、60-69歳60.6%(N=20人)、70歳以上27.3%(N=9人)
性別
FCT群=男性75.8%(N=25人)、女性24.2%(N=8人)
GD群=男性75.8%(N=25人)、女性24.2%(N=8人)
人種
FCT群=白人90.9%(N=30人)、黒人もしくはアフリカ系アメリカ人9.1%(N=3人)
GD群=白人87.9%(N=29人)、黒人もしくはアフリカ系アメリカ人9.1%(N=3人)、アジア人3.0%(N=1人)
FCT群=cT2が97.0%(N=32人)、cT3-T4aが3.0%(N=1人)
GD群=cT2が97.0%(N=32人)、cT3-T4aが3.0%(N=1人)
両群間で患者背景に大きな偏りはなし。
本試験の結果は以下の通りである。
■主要評価項目である3年無遠隔転移率はFCT群78%(95%信頼区間:65%-91%)、GD群84%(95%信頼区間:72%-96%)、両群間で統計学有意な差は確認されず(P=0.73)、両群ともにベンチマーク値である3年無遠隔転移率(DMF)75%を上回った。
■副次評価項目である導入療法終了時点における完全奏効率はFCT群88%(N=29/33人)、GD群78%(N=25/32人)を示した。
■安全性として、グレード3または4の治療関連有害事象発症率はFCT群64%(N=21人)に対してGD群55%(N=18人)を示した。なお、グレード3または4の治療関連有害事象の種類としてはFCT群で血液系毒性55%(N=18人)、消化器系毒性6%(N=2人)、泌尿器系毒性6%(N=2人)に対してGD群で血液系毒性42%(N=14人)、消化器系毒性9%(N=3人)、泌尿器系毒性6%(N=2人)を示した。
以上のNRG/RTOG 0712試験の結果よりJohn J. Coen氏らは以下のような結論を述べている。“筋層浸潤性膀胱がん患者に対する化学放射線療法としてFCT療法、GD療法は共に3年無遠隔転移率75%を上回りました。また、GD療法はシスプラチンベースの化学放射線療法よりも安全性が良好でした。”
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