2019年2月16日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にて進行性腎細胞がん患者に対するファースト治療としての抗PD-1抗体薬であるペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ;以下キイトルーダ)+チロシンキナーゼ阻害薬であるアキシチニブ(商品名インライタ;以下インライタ)併用療法の有効性を比較検証した第III相のKEYNOTE-426試験(NCT02853331)の結果がCleveland Clinic Lerner College of Medicine of Case Western Reserve University・Brian I. Rini氏らにより公表された。
KEYNOTE-426試験とは、進行性または転移性腎細胞がん患者(N=861人)に対するファースト治療として3週間に1回キイトルーダ200mg+1日2回インライタ5mg併用療法を投与する群(N=432人)、または1日1回スニチニブ(商品名スーテント;以下スーテント)50mgを4週間連日経口投与し、その後2週間休薬する群(N=429人)に無作為に振り分け、主要評価項目として全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、重要な副次評価項目として客観的奏効率(ORR)などを比較検証した二重盲検比較の第III相試験である。
本試験が実施された背景として、現在の進行性腎細胞がん患者に対するファースト治療としてはスーテントであり、それ以外にも複数の新薬が承認されている。しかしながら、進行性腎細胞がんの生存率は近年横ばいになっており、さらなる治療成績の向上が必要とされている。以上の背景より第Ib相試験で良好な抗腫瘍効果が確認されているキイトルーダ+インライン併用療法の有用性が、本試験で検証された。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値はキイトルーダ群で62歳(30-89歳)に対してスーテント群で61歳(26-90歳)。性別はキイトルーダ群で男性71.3%(N=308人)に対してスーテント群で男性74.6%(N=320人)。IMDC分類はキイトルーダ群で低リスク31.9%(N=138人)、中リスク55.1%(N=238人)、高リスク13.0%(N=56人)に対してスーテント群で低リスク30.5%(N=131人)、中リスク57.3%(N=246人)、高リスク12.1%(N=52人)。
PD-L1ステータスはキイトルーダ群で陽性59.3%(N=243人)、陰性40.7%(N=167人)に対してスーテント群で陽性61.7%(N=254人)、陰性38.3%(N=158人)。転移部位はキイトルーダ群で肺72.2%(N=312人)、リンパ節46.1%(N=199人)、骨23.8%(N=103人)、副腎15.5%(N=67人)、肝臓15.3%(N=66人)に対してスーテント群で肺72.0%(N=309人)、リンパ節45.9%(N=197人)、骨24.0%(N=103人)、副腎17.7%(N=76人)、肝臓16.6%(N=71人)。
前治療歴はキイトルーダ群で放射線9.5%(N=41人)、手術82.6%(N=357人)に対してスーテント群で放射線9.3%(N=40人)、手術83.4%(N=358人)。以上のように両群間で患者背景に大きな偏りはなかった。
以上の患者に対する本試験の追跡期間中央値12.8ヶ月(0.1-22.0ヶ月)時点における結果は下記の通りである。主要評価項目である12ヶ月全生存率(OS)はキイトルーダ群89.9%(95%信頼区間:86.4%-92.4%)に対してスーテント群78.3%(95%信頼区間:73.8%-82.1%)。18ヶ月全生存率(OS)はキイトルーダ群82.3%(95%信頼区間:77.2%-86.3%)に対してスーテント群72.1%(95%信頼区間:66.3%-77.0%)。全生存期間(OS)中央値は両群間で未到達であったが、キイトルーダ群で死亡(OS)のリスクを統計学有意に47%減少(95%信頼区間:0.38-0.74,P<0.0001)した。
無増悪生存期間(PFS)中央値はキイトルーダ群15.1ヶ月(95%信頼区間:12.6-17.7ヶ月)に対してスーテント群11.1ヶ月(95%信頼区間:8.7-12.5ヶ月)、キイトルーダ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを統計学有意に31%減少(95%信頼区間:0.57-0.84,P<0.0001)した。
客観的奏効率(ORR)はキイトルーダ群59.3%(95%信頼区間:54.5%-63.9%)に対してスーテント群35.7%(95%信頼区間:31.1%-40.4%)、キイトルーダ群で高率であった(P<0.001)。また、奏効の内訳はキイトルーダ群で完全奏効率(CR)5.8%、部分奏効率(PR)53.5%に対してスーテント群で完全奏効率(CR)1.9%、部分奏効率(PR)33.8%を示した。
一方の安全性として、全グレードの有害事象(AE)発症率はキイトルーダ群98.4%に対してスーテント群99.5%、グレード3以上の有害事象(AE)発症率はキイトルーダ群75.8%に対してスーテント群70.6%を示した。
なお、キイトルーダ群において最も多くの患者で確認された全グレードの有害事象(AE)は下痢54.3%、高血圧44.5%、倦怠感38.5%、甲状腺機能低下症35.4%などであった。また、最も多くの患者で確認されたグレード3以上の有害事象(AE)は高血圧22.1%、ALT上昇13.3%、下痢9.1%、AST上昇7.0%を示した。
以上のKEYNOTE-426試験の結果よりCleveland Clinic Lerner College of Medicine of Case Western Reserve University・Brian I. Rini氏らは以下のように結論を述べている。”進行性腎細胞がん患者に対するファースト治療としての抗PD-1抗体薬キイトルーダ+インライタ併用療法は、現在の標準治療薬であるスーテント単剤療法に比べて全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、客観的奏効率(ORR)を改善しました。”
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