2020年5月29日~31日、バーチャルミーティングで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO 2020)にて単剤化学療法に抵抗性を示す絨毛性腫瘍(GTT)患者に対する抗PD-L1抗体薬であるアベルマブ(商品名バベンチオ;以下バベンチオ)単剤療法の有効性、安全性を検証した第2相のTROPHIMMUN試験(NCT03135769)のコホートAの結果がInstitut de Cancérologie des Hospices Civils de LyonのBenoit You氏らにより公表された。
TROPHIMMUN試験とは、抵抗性を示す絨毛性腫瘍(GTT)患者に対して2週を1サイクルとしてバベンチオ10mg/kg単剤を投与し、主要評価項目として治療中止可能になるヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)正常化率を検証した非盲検化の第2相試験であり、絨毛性腫瘍(GTT)患者に対する免疫療法の最初の試験。なお、コーホートAは単剤療法に対して抵抗性を示した患者、コーホートBは多剤併用療法に対して抵抗性を示した患者に分かれている。
絨毛性腫瘍(GTT)は妊娠中の胎盤に生じる希少がんである。全てのサブタイプの絨毛細胞でPD-L1が恒常的に発現しており、多剤耐性患者に対して抗PD-1抗体薬であるペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)の有効性が確認されている。以上の背景より、抗PD-L1抗体薬バベンチオの有効性が本試験により確認された。
本試験に登録された15人の患者の年齢中央値は34歳(23-55歳)。妊娠期間は4ヶ月未満が13.3%、4~6ヶ月が40.0%、7~12ヶ月が20.0%、12ヶ月超えが13.3%、不明が13.3%。FIGOスコアはスコア0~2が0人、スコア3~4が5人、スコア5~6が7人、スコア7以上が3人。前治療歴は0レジメン0%、1レジメン93.3%、2レジメン以上6.7%。前治療歴はメトトレキサート100%、アクチノマイシンD7%であった。
主要評価項目である治療中止可能になるhCG正常化率は53.3%(N=8人)であった。副次評価項目である無再発生存期間(RFS)中央値は未到達、4ヶ月無再発生存率(RFS)73.3%(95%信頼区間:43.6%-89.0%)を示した。
安全性として、治療関連有害事象(TRAE)発症率は93.3%(N=14人)、主なグレード1~2の有害事象(AE)は疲労、悪心、嘔吐、インフュージョンリアクション、下痢、ドライアイ。重篤な有害事象(SAE)はグレード2の卵巣嚢胞1人、子宮出血1人、免疫関連の有害事象は甲状腺機能亢進症2人、甲状腺機能不全症1人であった。
以上のTROPHIMMUN試験の結果よりBenoit You氏らは「抵抗性のある絨毛性腫瘍(GTT)患者に対する抗PD-L1抗体薬バベンチオ単剤療法のhCG正常化率は53.3%を示し、忍容性も問題なく、バベンチオ治療後に1人の患者で妊娠が確認されております。バベンチオは新しい治療選択肢になる可能性があります」と述べている。
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