・自己造血幹細胞移植の適応のない新規多発性骨髄腫患者が対象の第3相試験
・カイプロリス+レブラミド+デキサメタゾン併用療法の有効性・安全性を比較検証
・無増悪生存期間は標準療法34.4ヶ月に対し、34.6ヶ月だった
2020年8月28日、医学誌『The Lancet Oncology』にて自己造血幹細胞移植(ASCT)適応のない新規多発性骨髄腫患者に対する導入療法としての新規プロテアソーム阻害薬であるカイプロリス(一般名:カルフィルゾミブ、以下カイプロリス)+IMiDs(免疫調節薬)であるレブラミド(一般名:レナリドミド、以下レブラミド)+デキサメタゾン併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のENDURANCE試験(NCT01863550)の結果がMayo ClinicのShaji K Kumar氏らにより公表された。
ENDURANCE試験とは、自己造血幹細胞移植(ASCT)適応のない新規多発性骨髄腫患者(N=1087人)に対する導入療法としてカイプロリス+レブラミド+デキサメタゾン(KRd)併用療法を投与する群(N=545人)、またはプロテアソーム阻害薬であるベルケイド(一般名:ボルテゾミブ、以下ベルケイド)+レブラミド+デキサメタゾン(VRd)併用療法を投与する群(N=542人)に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS) などを比較検証した多施設共同オープンラベルの第3相試験である。
新規多発性骨髄腫患者に対する導入療法としてVRd療法は現在の標準治療である。しかしながら、新規プロテアソーム阻害薬であるカイプロリスを含むKRd療法は第2相試験にて有効性の高い抗腫瘍効果を示し、現在の標準治療であるVRd療法よりも有用性が優れる可能性が示唆されている。以上の背景より、ENDURANCE試験が開始された。
本試験の結果、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はKRd群34.6ヶ月(95%信頼区間:28.8-37.8ヶ月)に対してVRd群34.4ヶ月(95%信頼区間:30.1ヶ月-未到達)、KRd群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを4%増加(HR:1.04,95%信頼区間:0.83-1.31,P=0.74)した。また、もう1つの主要評価項目である全生存期間(OS)中央値はKRd群もVRd群も両群間で未到達であった。
一方の安全性として、最も多くの患者で確認されたグレード3~4の非血液関連有害事象(AE)は下記の通りである。疲労がKRd群6%に対してVRd群6%、高血糖がKRd群6%に対してVRd群4%、下痢がKRd群3%に対してVRd群5%、末梢神経障害がKRd群1%未満に対してVRd群8%、呼吸困難がKRd群7%に対してVRd群2%、血栓塞栓性イベント発症率がKRd群5%に対してVRd群2%を示した。なお、治療関連有害事象(TRAE)による死亡発症率はKRd群2%に対してVRd群1%未満であった。
以上のENDURANCE試験の結果よりShaji K Kumar氏らは「自己造血幹細胞移植(ASCT)適応のない新規多発性骨髄腫患者に対する導入療法としての新規プロテアソーム阻害薬カイプロリス+IMiDs(免疫調節薬)レブラミド+デキサメタゾン併用療法は、現在の標準治療であるVRd療法に比べて無増悪生存期間(PFS)を改善せず、有害事象も増加しました」と結論を述べている。
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