9月25日、第一三共株式会社は抗悪性腫瘍薬であるエンハーツ(一般名:トラスツズマブ デルクステカン(遺伝子組換え)、以下エンハーツ)について、がん化学療法後に増悪したHER2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃がんに対する適応追加が承認されたと発表した。
エンハーツはHER2を標的とする抗体薬物複合体(ADC)である。ADCとは抗体と低分子化合物(薬物)を結合させた薬剤であり、がん細胞に発現している標的となる因子と結合する抗体を介してがん細胞へ直接的に薬物を届ける。そのため、全身曝露を抑えてがん細胞への攻撃力を高めることが可能である。
今回の承認は、日本と韓国での第2相DESTINY-Gastric01試験(NCT03329690)および日本と米国で実施された第1相試験の結果に基づき先駆け審査指定制度のもとで承認された。
新たに適応となったがん化学療法後に増悪したHER2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃がんに対して、エンハーツを3週間毎に体重に応じて6.4mg/kgを1回90分かけて点滴静注する。なお、初回投与の忍容性が良好であれば2回目以降の投与時間は30分間まで短縮できる。
【製品概要】
製品名:エンハーツ点滴静注用100mg
一般名:トラスツズマブ デルクステカン
効能・効果:
1.化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能または再発乳がん(標準的な治療が困難な場合に限る)
2.がん化学療法後に増悪したHER2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃がん
用法・用量:
1.通常、成人にはトラスツズマブ デルクステカン(遺伝子組換え)として1回5.4mg/kg(体重)を90分かけて3週間間隔で点滴静注する。なお、初回投与の忍容性が良好であれば2回目以降の投与時間は30分間まで短縮できる。
2.通常、成人にはトラスツズマブ デルクステカン(遺伝子組換え)として1回6.4㎎/㎏(体重)を90分かけて3週間間隔で点滴静注する。なお、初回投与の忍容性が良好であれば2回目以降の投与時間は30分間まで短縮できる。
承認条件:
1.医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
2.化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳がん患者を対象に実施中の第3相試験における本剤の有効性及び安全性について、医療現場に適切に情報提供すること。
3.国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤の使用患者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。
※下線部が今回の適応拡大範囲
胃がんとは
罹患数は世界で約100万人/年と5番目に多く、がん種別死亡数は約80万人/年で第3位のがん腫。世界の胃がん症例の約半数を東アジアが占め、胃がん発症率は韓国が第1位、日本が第3位である。約2割にHER2の過剰発現があり、トラスツズマブに抵抗を持つHER2過剰発現の胃がんでは、他の抗HER2療法が存在しないため、高いアンメット・メディカル・ニーズがある。
先駆け審査指定制度とは
世界に先駆けて日本での革新的医薬品や医療機器・体外診断用医薬品・再生医療等製品の早期実用化を目指す重点施策の1つ国内の患者に世界最先端の治療薬を最も早く提供することを目的とし、生命に重大な影響がある重篤な疾患などに対して極めて高い有効性が期待される医薬品や再生医療等製品などを指定、薬事承認に係る相談・審査において優先的に取扱われる。
参照元:
第一三共株式会社 ニュースリリース
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