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ctDNAを用いた超高感度血液検査で食道がんの再発を早期に検出ー岩手医科大学らー

  • [公開日]2020.10.16
  • [最終更新日]2020.10.14

10月12日、岩手医科大学らは、食道がんの診療において、血液中のがん由来DNAを用いた超高感度検査の実用性を明らかにしたと発表した。この研究は、医歯薬総合研究所、札幌医科大学、医療人育成センター、国立がん研究センターと共同で実施されたもの。成果は米国消化器病学会雑誌「Gastroenterology」電子版に公開されている。

がん診療の治療方針の決定、治療効果判定、治療後の再発診断などには、CTスキャンや血液検査による腫瘍マーカーが用いられる。CTスキャンは診断に不可欠な検査であるが、放射線被曝や微小病変の場合の診断精度が問題となっている。一方、腫瘍マーカー検査は簡便であるが、偽陽性・偽陰性が多いという問題点が存在する。

血液中には体内の細胞から遊離したDNAの断片が存在し、がん患者では腫瘍細胞由来血中循環遊離DNA(ctDNA)と呼ばれるがん細胞から遊離したDNAも含まれる。ctDNAはがんに応じた特有の変異があり、患者ごと異なるため個別化血液バイオマーカーとして注目されていた。しかし、実用性に関する検証は少なく、日常の検査では用いられていない。

今回の研究では、ステージI~IVの食道がん患者を対象に食道がんで高頻度に発現する31遺伝子のスクリーニングを実施。診療経過中のctDNAの推移をデジタルPCRを用いて追跡した結果と、CTスキャンや腫瘍マーカーを比較検討した。

その結果、治療によりctDNAが陰性化した患者では、高度進行がんであっても長期生存が得られ、再発した患者では、CTスキャンより約5ヶ月早くctDNAの上昇が確認された。さらに、三大療法の治療効果に合わせてctDNAは増減し、治療後再発を認めなかった患者ではctDNAも陰性化が維持されていた。ctDNAによる追跡を行った91%の症例で「再発・増大の早期予測」「治療効果の正確な判定」「無再発状態の確認」の1つ以上の項目で臨床検査としての妥当性を明らかにし、いずれの項目でも既存の血液腫瘍マーカーと比較し、臨床所見と合致していた。

また、ctDNAと食道がんの予後に関しては、治療開始後にctDNAが陰性化する患者は治療後もctDNA陽性を維持する患者と比較して、有意に予後がよいことが示された。

これらの結果から、ctDNA検査は再発や治療効果、無再発状態を正確に判定することができ、日常的な臨床検査として用いることで、CTなどの侵襲的検査の機会を減らすことが期待される。また、個々の患者に生じている遺伝子変異が患者特有のバイオマーカーとなる可能性を示唆しており、がんゲノム検査結果の有効利用につながると考えられる。

ctDNAとは
ctDNA(血中循環腫瘍DNA)は、がん細胞のDNAが細胞死などにより血液中に漏れ出したもの。短い断片となり体外へ排出される。がん細胞のDNA以上を血液で調べることが出来るが、血液中の遊離DNAに含まれるがん由来のDNAは1%以下と微量なため、検出には高感度のものが必要となる。

デジタルPCRとは
デジタルPCRは、サンプル中に含まれる分子の数を定量的に測定する技術。従来のPCRに比べわずかな希少分子の同定・定量をすることが出来る手法。

参照元:
岩手医科大学 プレスリリース

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