2020年10月6日、医学誌『The Lancet Oncology』にて再発難治性濾胞性リンパ腫(FL)患者に対するエピジェネティック関連酵素EZH2を標的とする経口低分子阻害薬であるタゼメトスタット(E7438)単剤療法の有効性、安全性を検証した第2相試験(NCT01897571)の結果がUniversité de LilleのFranck Morschhauser氏らにより公表された。
本試験は、再発難治性濾胞性リンパ腫(FL)患者(N=99人)に対して28日を1サイクルとして1日2回タゼメトスタット(E7438)800mg単剤療法を投与し、主要評価項目として客観的奏効率(ORR)、副次評価項目として奏効持続期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、安全性などを検証した国際多施設共同シングルアームオープンラベルの第2相試験である。なお、本試験に登録された99人の濾胞性リンパ腫(FL)患者の内、EZH2遺伝子変異陽性は45人、EZH2遺伝子変異陰性は54人である。
本試験が開始された背景として、EZH2は遺伝子発現を調節するヒストンメチル基転換酵素を構成するたんぱく質であり、細胞増殖の調節機能を有しているため、発がんに関わる重要な役割を担っていると考えられている。そして、EZH2遺伝子変異陽性は濾胞性リンパ腫(FL)患者の約20%で発現していると考えられている。以上の背景より、再発難治性濾胞性リンパ腫(FL)患者に対するエピジェネティック関連酵素EZH2阻害薬であるタゼメトスタット(E7438)の有用性が本試験にて検証された。
本試験のフォローアップ期間中央値は、EZH2遺伝子変異陽性群で22.0ヶ月(12.0−26.7ヶ月)、EZH2遺伝子変異陰性群で35.9ヶ月(24.9−40.5ヶ月)。同時点における結果は下記の通りである。主要評価項目である客観的奏効率(ORR)は、EZH2遺伝子変異陽性群で69%(95%信頼区間:53%–82%、N=31/45人)、EZH2遺伝子変異陰性群で35%(95%信頼区間:23%–49%、N=19/54人)を示した。
副次評価項目である奏効持続期間(DOR)中央値は、EZH2遺伝子変異陽性群で10.9ヶ月(95%信頼区間:7.2ヶ月-未到達)、EZH2遺伝子変異陰性群で13.0ヶ月(95%信頼区間:5.6ヶ月-未到達)を示した。無増悪生存期間(PFS) 中央値はEZH2遺伝子変異陽性群で13.8ヶ月(95%信頼区間:10.7-22.0ヶ月)、EZH2遺伝子変異陰性群で11.1ヶ月(95%信頼区間:3.7-14.6ヶ月)を示した。
一方の安全性として、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)の内訳は下記の通りである。血小板減少症3%(N=3人)、好中球減少症3%(N=3人)、貧血2%(N=2人)。また、重篤な治療関連の有害事象(SAE)発症率は4%(N=4人)、治療関連有害事象(TRAE)による死亡は確認されなかった。
以上の第2相試験の結果よりFranck Morschhauser氏らは「再発難治性濾胞性リンパ腫(FL)患者に対するエピジェネティック関連酵素EZH2を標的とする経口低分子阻害薬タゼメトスタット(E7438)は臨床的意義のあり、持続的な抗腫瘍効果を示すことが本試験により確認されました。また、複数治療歴のある患者を対照にした臨床試験にも関わらず忍容性も良好でした。以上の結果より、タゼメトスタット(E7438)は濾胞性リンパ腫(FL)の新しい治療選択肢になり得る可能性が示唆されました」と結論を述べている。
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