・自己造血幹細胞移植歴のない新規多発性骨髄腫患者が対象の第3相試験
・維持療法としてニンラーロ単剤療法の有効性・安全性を比較検証
・プラセボ群と比較して、病勢進行/死亡リスクを34.1%統計学有意に改善した
2020年10月6日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて自己造血幹細胞移植(ASCT)歴のない新規多発性骨髄腫患者に対する維持療法としての新規プロテアソーム阻害薬であるニンラーロ(一般名:イキサゾミブ、以下ニンラーロ)単剤療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のTOURMALINE-MM4試験(NCT02312258)の結果がNational and Kapodistrian University of AthensのMeletios A. Dimopoulos氏らにより公表された。
TOURMALINE-MM4試験とは、標準導入療法6~12ヵ月後に部分奏効(PR)以上を達成した自己造血幹細胞移植(ASCT)歴のない新規多発性骨髄腫患者に対する維持療法として28日1サイクルとして1、8、15日目にニンラーロ3~4mg単剤療法を投与する群(N=425人)、またはプラセボ単剤療法を投与する群(N=281人)に3対2の割合に無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として全生存期間(OS)などを比較検証した国際多施設共同二重盲検下プラセボ対照の第3相試験である。
本試験が開始された背景として、新規多発性骨髄腫患者に対する維持療法として現在の標準治療は免疫調整薬であるレナリドミド(商品名レブラミド;以下レブラミド)単剤療法のみである。しかしながら、同じ作用機序の治療薬のみで長期間多発性骨髄腫の治療を実施することは有害事象(AE)の発現するため非常に困難である。以上の背景より、新規多発性骨髄腫患者に対する維持療法としての新規プロテアソーム阻害薬ニンラーロの有用性を検証する目的で本試験が開始された。
本試験のフォローアップ期間中央値21.1ヵ月時点における結果は下記の通りである。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はニンラーロ群17.4ヵ月に対してプラセボ群9.4ヵ月、ニンラーロ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを34.1%(HR:0.659、95%信頼区間:0.542-0.801、P<0.001)統計学有意に改善した。
なお、標準導入療法後の奏効率(RR)で最良部分奏効(VGPR)、完全奏効(CR)を達成した患者群における無増悪生存期間(PFS)中央値はニンラーロ群25.6ヵ月に対してプラセボ群12.9ヵ月、ニンラーロ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを41.4%(HR:0.586、P<0.001)統計学有意に改善した。
一方の安全性として、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)発症率はニンラーロ群36.6%に対してプラセボ群23.2%、治療関連有害事象(TRAE)による治療中止率はニンラーロ群12.9%に対してプラセボ群8.0%であった。最も多くの患者で確認された治療関連有害事象(TRAE)は下記の通りである。吐き気がニンラーロ群26.8%に対してプラセボ群8.0%、嘔吐がニンラーロ群24.2%に対してプラセボ群4.3%、下痢がニンラーロ群23.2%に対してプラセボ群12.3%であった。
以上のTOURMALINE-MM4試験の結果よりMeletios A. Dimopoulos氏らは「自己造血幹細胞移植(ASCT)歴のない新規多発性骨髄腫患者に対する維持療法としての新規プロテアソーム阻害薬ニンラーロ単剤療法は、無増悪生存期間(PFS)を統計学有意に改善しました。本試験は、維持療法としてのプロテアソーム阻害薬の有用性を証明した初の臨床試験になります」と結論を述べている。
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