・フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ芽球白血病患者が対象の第2相試験
・スプリセル+グルココルチコイド併用投与後にブリナツモマブを単剤投与する治療法の有効性・安全性を比較検証
・分子遺伝学的寛解率はスプリセル+グルココルチコイド併用療法後で29%、ブリナツモマブ単剤療法後で60%であった
2020年10月22日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にてフィラデルフィア染色体(Ph)陽性急性リンパ芽球白血病(ALL)患者に対するチロシンキナーゼ阻害薬であるスプリセル(一般名:ダサチニブ、以下スプリセル)+グルココルチコイド併用療法、その後にCD19/CD3二重特異性を有するT細胞誘導抗体製薬であるブリナツモマブ単剤療法投与の有効性、安全性を検証した第2相試験(NCT02744768)の結果がSapienza University of RomeのRobin Foà氏らにより公表された。
本試験は、フィラデルフィア染色体(Ph)陽性急性リンパ芽球白血病(ALL)患者(N=63人)に対してダサチニブ+グルココルチコイド併用療法を投与後、ブリナツモマブ単剤療法を2サイクル投与し、主要評価項目として骨髄における分子遺伝学的寛解率を検証した第2相試験である。
本試験が開始された背景として、フィラデルフィア染色体(Ph)陽性急性リンパ芽球白血病(ALL)患者の予後はスプリセルをはじめチロシンキナーゼ阻害薬の登場により改善している。しかしながら、フィラデルフィア染色体(Ph)陽性急性リンパ芽球白血病(ALL)の治療目標は分子遺伝学的寛解の達成であり、この治療成績向上のために更なる治療方法の開発が必要とされている。以上の背景より、チロシンキナーゼ阻害薬スプリセル投与後のCD19/CD3二重特異性を有するT細胞誘導抗体製薬ブリナツモマブの有用性を検証する目的で本試験が開始された。
本試験の結果、登録された患者の98%に完全寛解が認められた。主要評価項目である分子遺伝学的寛解率はダサチニブ+グルココルチコイド併用療法後で29%、ブリナツモマブ単剤療法後で60%を示した。また、分子遺伝学的寛解率は投与サイクルの増加に伴って上昇することが確認された。
副次評価項目である全生存率(OS)は95%、無病生存率(DFS)は88%を示した。なお、無病生存率(DFS)はIKZF1欠失に加えて他の遺伝子異常であるCDKN2A、CDKN2B、PAX5、あるいはその両方の遺伝子異常を有するIKZF1plus患者でより低率であった。
一方安全性として、グレード3以上の有害事象は21件報告された。24人の患者は幹細胞移植を受け、1人がそれに関連した死亡であった。
以上の第2相試験の結果よりRobin Foà氏らは「フィラデルフィア染色体(Ph)陽性急性リンパ芽球白血病(ALL)患者に対するファーストライン治療としてのチロシンキナーゼ阻害薬スプリセル+グルココルチコイド併用療法、CD19/CD3二重特異性を有するT細胞誘導抗体製薬ブリナツモマブ単剤療法は、化学療法フリーのレジメンでありながら分子遺伝学的寛解率を改善しました」と結論を述べている。
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