免疫チェックポイント阻害薬 PD-1抗体であるニボルマブ(商品名オプジーボ)を投与した転移性非小細胞肺がん(NSCLC)患者の長期生存率が予想よりもはるかに高く5年生存率が16%に達するということが、4月1日から5日まで実施された米国がん学会年次総会(AACR2017)にて米The Sidney Kimmel Comprehensive Cancer Center at Johns HopkinsのJulie Brahmer氏によって発表された。この生存率は化学療法で期待される生存率の4倍にものぼる。
この発表は、治療歴を有する進行期非小細胞肺がん患者(129例)を対象にオプジーボを評価した第1相用量漸増臨床試験であるCA209-003試験(NCT00730639)の5年生存率のデータに基づく。複数の治療歴を有する非小細胞肺がん患者において、推定5年生存率は16%であり、PD-L1発現レベルおよび腫瘍の組織型にかかわらず生存が認められた。本試験におけるオプジーボの安全性プロファイルは過去に報告されており、本解析において新たな安全性シグナルは認められていない。
目次
3年生存率18%、5年生存率16% ~3年生存された方は5年生存される可能性が高いことを示唆~
本試験において、1~5種類の全身療法による治療歴を有する進行期非小細胞肺がん患者が、最大96週間にわたり、オプジーボ(1、3または10 mg/kg)を2週間ごとに静脈内投与された。AACR2017では、3種類の用量の統合解析データが発表された。
5年時点で、オプジーボの投与を受けた患者の推定生存率は全用量で16%であり、最低58カ月の追跡調査において、生存期間の中央値は9.9カ月だった。
本試験の年次ごとの生存率は、1年生存率42%、2年生存率24%、3年生存率18%および5年生存率16%となり、3年生存率と5年生存率は大きく変わっていない。実際、3年時に生存された19名のうち、5年時までに病態進行で亡くなった方は3名であった。
治験担当医師の評価によると、患者の75%(16名中12名)において最後の追跡調査時点で病勢進行は認められなかった。16名の長期生存者のうち12名が部分奏効を示し、早期奏効と遅れて奏効する患者の両方が存在した。また、9名の患者が最高2年間のオプジーボの投与を完了し、一方、有害事象により早期に治療を中止しされた患者の中には2年間の治療を完遂していないにもかかわらず、次治療を必要としなかった患者が4名存在した。
PD-L1高発現(50%以上)の患者の5年生存率は43%
PD-L1患者(129 例中68 例)では、PD-L1発現レベルが高いほど5年生存率も高くなり、PD-L1発現レベルにおける5年生存率は以下の通りだった。
<5年生存率>
PD-L1発現1%未満の患者(30名/129名):20%
PD-L1発現1%以上の患者(38名/129名):23%
PD-L1発現50%以上の患者(13名/129名):43%
PD-L1 発現は、患者の47%(61名/129名)で評価不能であり、PD-L1 の発現状態が不明の患者における推定5年生存率は10%だった。
扁平上皮がんと非扁平上皮がんによる差は認められず
ほとんどの患者は喫煙者または過去喫煙者であり、組織型は扁平上皮がん54名と非扁平上皮がん74名となった。5年生存された16名の患者のうち、9名が男性であり、12名は試験登録時に喫煙者であった。なお、12名が部分奏功を示し、2名が病態安定、2名が病態進行であった。
5年生存率は組織型で一貫していたが(扁平上皮がん16%、非扁平上皮がん15%)、5年生存された16名の患者のうち2名はEGFR遺伝子変異を有していた。
本試験において、5年生存された患者における診断からオプジーボの投与開始までの所要時間および疾患の経過に一貫性はなく、初回診断時からオプジーボの投与開始までの所要時間の中央値は、1.2年間であった(範囲:0.4~6.1 年間)。
Brahmer氏は「この試験で報告された5年生存率(16%)は、標準治療を受けている患者のこの集団について報告されているものよりもはるかに高い。統計によると、進行した病気の患者の大半が診断の1年以内に死亡し、転移性非小細胞肺がんの5年生存率は約4%である」と述べている。(AACRプレスリリース訳)
ブリストルマイヤーズ・スクイブ社および小野薬品工業社プレスリリース
記事:可知 健太
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