2017年10月5日から6日までスコットランド・エディンバラで開催されているGlobal Congress on Bladder Cancer (GCBC)2017にて、シスプラチンによる化学療法が適応でない局所進行性または転移性尿路上皮がん患者に対して抗PD-1抗体薬であるペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ;以下キイトルーダ)単剤療法の有効性と安全性を検証した第Ⅱ相のKEYNOTE-052試験(NCT02335424)のアップデート解析結果がイギリス・ロンドン・クイーンメアリー大学Thomas Powles氏より発表された。
本発表で解析対象となった患者背景(N=370人)は、年齢中央値74歳(34–94歳)で、その内80歳以上の患者が約3分の1以上、性別としては男性77%女性23%であった。また、シスプラチンによる化学療法が適応でない理由としては腎機能障害が50%、ECOG Performance Status 2が32%、腎機能障害とECOG PS2の両方が9%、それ以外が9%であった。その他、肝転移を有する患者が21%が本解析対象の患者背景の特徴である。
上記のようなシスプラチンの適応がない局所進行性または転移性尿路上皮がん患者に対してキイトルーダ200mgを3週間に1回の間隔で静脈投与し、主要評価項目であるRECIST1.1に基づいた客観的奏効率(ORR)を検証した第Ⅱ相試験の結果である。
本試験の結果、主要評価項目であるRECIST1.1に基づいた客観的奏効率(ORR)は29% (95%信頼区間: 25-34%)であった。また、奏効率の内訳としては完全奏効(CR)7%(N=27人)、部分奏効(PR)22%(N=81人)、安定(SD)18%(N=67人)で、病勢コントロール率(DCR)は47%であった。
また、副次評価項目として設定された奏効期間(DOR)はフォローアップ期間中央値10ヶ月時点では未到達(95%信頼区間:12ヶ月〜未到達)であったが、初回奏効までの期間(TTR)は2ヶ月(1ヶ月〜9ヶ月)と治療反応性は良好で、奏効を示した82%の患者で6ヶ月以上も奏効が持続していた。
一方安全性はというと、キイトルーダ単剤療法は年齢、Performance Statusに関係なく良好な忍容性を示していた。薬剤関連性有害事象は66%(N=243人)の患者で発症し、最も多く見られた有害事象は疲労18%、掻痒17%、発疹12%であった。また、グレード3以上の有害事象発症率は19%(N=70人)、有害事象のために治療継続が不可能になった患者が7%、治療関連死の患者が1名であった。その他、抗PD-1抗体薬など免疫療法特有の副作用発症率は23%(N=84人)で、軽度甲状腺機能低下症を発症した患者が11%であった。
以上の有効性と安全性に関する結果に対してThomas Powles氏は以下のようなコメントを出している。”2016年9月に報告されたKEYNOTE-052試験の結果に比べ、本発表での客観的奏効率(ORR)は5%増加し、完全奏効(CR)を達成した患者10人、部分奏効(PR)を達成した患者9人が増加している。進行性尿路上皮がん患者に対する一次治療としてシスプラチン療法は生存率を向上させるが、半数以上の患者が併存疾患、忍容性が悪いためにその治療を受けることができない。そのためシスプラチン療法の代替療法が施行されるがその治療成績は悪く、有害事象の発症率も高いために、そのような患者に対しては最善の支持療法(BSC)が妥当な治療選択肢であった。キイトルーダ単剤療法は85歳以下/以上など年齢に関係なく奏効を示し、またPerformance Status0〜1/2など全身状態に関係なく奏効を示しことが本解析で明らかになった”
以上の結果より、シスプラチンによる化学療法が適応でない局所進行性または転移性尿路上皮がん患者に対する治療としてキイトルーダの有効性と安全性が明らかになった。これまでシスプラチンによる治療適応がない患者の治療成績は期待できなかったが、キイトルーダの登場により進行性尿路上皮がんの治療成績が向上するだろうと筆者は考える。
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