・進行性乳頭状腎細胞がん患者が対象の第2相試験
・カボメティクス、クリゾチニブ、サボリチニブの有効性・安全性をスニチニブと比較検証
・カボメティクスの無増悪生存期間は9.0ヶ月で、標準療法であるスニチニブに対して統計学的有意に延長を認めた
2021年2月13日、医学誌『The Lancet』にて進行性乳頭状腎細胞がん(PRCC)患者に対するマルチキナーゼ阻害薬であるカボメティクス(一般名:カボザンチニブ、以下カボメティクス)単剤療法の有効性、安全性を比較検証した第2相試験(NCT02761057)の結果がCity of Hope Comprehensive Cancer CenterのSumanta K Pal氏らにより公表された。
本試験は、進行性乳頭状腎細胞がん(PRCC)患者に対して42日を1サイクルとして1日1回スニチニブ50mg単剤療法を4週間投与後、2週間休薬する群、1日1回カボメティクス60mg単剤療法を投与する群、1日2回クリゾチニブ250mg単剤療法を投与する群、1日1回サボリチニブ600mg単剤療法を投与する群に無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)を比較検証した多施設共同ランダム化オープンラベルの第2相試験である。
本試験が開始された背景として、乳頭状腎細胞がん(PRCC)の進行に関わる重要なドライバー因子としてMET遺伝子が特定されている。しかしながら、乳頭状腎細胞がん(PRCC)の現状の治療選択肢は限られており、有効な治療法は存在しない。以上の背景より、現在の乳頭状腎細胞がん(PRCC)の標準治療であるスニチニブ単剤療法とその他のマルチキナーゼ阻害薬の有効性、安全性を比較する目的で本試験が開始された。
本試験に登録された患者は全群で152人、評価可能であった患者で147人。そして、評価可能であった147人の患者の内、無益性解析(Futility analysis)を行った後、サボリチニブ群29人、クリゾチニブ群28人の患者は除外され、スニチニブ群46人、カボメティクス群44人の患者群における結果は下記の通りである。
主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はスニチニブ群5.6ヶ月(95%信頼区間:3-7ヶ月)に対してカボメティクス群9.0ヶ月(95%信頼区間:6~12ヶ月)、カボメティクス群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを40%(HR:0.60、95%信頼区間:0.37~0.97、P=0.019)減少した。なお、スニチニブ群に比べてサボリチニブ群、クリゾチニブ群は無増悪生存期間(PFS)を改善しなかった。
副次評価項目である奏効率(RR)はカボメティクス群23%に対してスニチニブ群4%を示した(P=0.010)。グレード3~4の有害事象(AE)発症率はスニチニブ群69%、カボメティクス群74%、クリゾチニブ群37%、サボリチニブ群39%。なお、カボメティクス群でグレード5の血栓塞栓性を発症した患者が1人確認されている。
以上の第2相試験の結果よりSumanta K Pal氏らは「進行性乳頭状腎細胞がん(PRCC)患者に対するマルチキナーゼ阻害薬カボメティクス単剤療法は、スニチニブ単剤療法に比べて無増悪生存期間(PFS)を統計学的有意に改善しました」と結論を述べている。
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