・HER2陽性切除可能食道腺がん患者が対象の第3相試験
・化学放射線療法にトラスツズマブ追加投与の有効性・安全性を比較検証
・無病生存期間中央値は化学放射線療法+トラスツズマブ群19.6ヶ月、化学放射線療法群14.2ヶ月であり統計学的有意な延長は認めず
2022年1月14日、医学誌『The Lancet Oncology』にて未治療のHER2陽性切除可能食道腺がん患者を対象に抗HER2モノクローナル抗体薬であるトラスツズマブを用いた集学的治療の有効性、安全性を比較検証した第3相のNRG Oncology/RTOG-1010試験(NCT01196390)の結果がRhode Island HospitalのHoward P Safran氏らにより公表された。
NRG Oncology/RTOG-1010試験が開始された背景として、トラスツズマブはHER2を標的と下したモノクローナル抗体である。無作為化オープンラベルの第3相試験である本試験では、未治療のHER2陽性切除可能食道腺がん患者(N=203人)に対する術前化学放射線療法として、1週を1サイクルとしてパクリタキセル50mg/m2+カルボプラチン AUC2化学療法を6週間実施し、あわせて放射線療法50.4Gy/28fractionsを実施後、切除手術を実施し、本集学的治療に加え、化学放射線療法中に1週を1サイクルとしてトラスツズマブ2~4mg/kgを5週間投与し、術前にトラスツズマブ6mg/kgを1回投与し、術後より21~56日後、3週を1サイクルとしてトラスツズマブ6mg/kgを13回投与する群(N=102人)とトラスツズマブの投与をしない群(N=101人)に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無無病生存期間(DFS;死亡、病勢進行、再発、遠隔転移、二次がんをイベントとして定義)を比較検証した。
フォローアップ期間中央値2.8年時点における結果は下記の通りである。主要評価項目である無病生存期間(DFS)中央値は、化学放射線療法+トラスツズマブ群の19.6ヶ月(95%信頼区間:13.5-26.2ヶ月)に対して化学放射線療法群で14.2ヶ月(95%信頼区間:10.5-23.0ヶ月)と、化学放射線療法+トラスツズマブ群で病勢進行または死亡のリスク(DFS)が1%減少(HR:0.99、95%信頼区間:0.71-1.39、P=0.97)した。
一方の安全性として、最も多くの患者で確認されたグレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は、血液関連有害事象と胃腸関連有害事象であった。血液関連有害事象の発症率は、化学放射線療法+トラスツズマブ群の56%(N=53/95人)に対して化学放射線療法群で57%(N=55/96人)、胃腸関連有害事象の発症率は29%(N=28人)に対して21%(N=20人)であった。
また、重篤な治療関連有害事象(SAE)発症率は、化学放射線療法+トラスツズマブ群の36%に対して化学放射線療法群で28%を示した。治療関連有害事象(TRAE)による死亡は、化学放射線療法+トラスツズマブ群で5人(気管支胸膜瘻、食道吻合部漏出、肺感染症、突然死、原因不明)、化学放射線療法群で3人(多臓器不全が2人と敗血症が1人)であった。
以上のNRG Oncology/RTOG-1010試験の結果よりHoward P Safran氏らは「HER2陽性切除可能食道腺がん患者に対する化学放射線療法+抗HER2モノクローナル抗体薬トラスツズマブは、無病生存期間(DFS)を改善する効果がありませんでした。一方、トラスツズマブ追加投与により有害事象(AE)発症率の増加にはなりませんでした」と結論を述べている。
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