・化学療法による前治療を受けたHER2低発現の転移性乳がん患者が対象の第3相試験
・エンハーツ単剤療法の有効性・安全性を化学療法と比較検証
・無増悪生存期間は10.1ヶ月、全生存期間23.9ヶ月である、いずれも化学療法群に対して延長を示した
6月5日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にて化学療法による前治療を受けたHER2低発現の転移性乳がん患者に対する抗HER2抗体薬物複合体であるエンハーツ(一般名:トラスツズマブ デルクステカン、DS-8201、以下エンハーツ)単剤療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のDESTINYBreast04試験(NCT03734029)の結果がMemorial Sloan Kettering Cancer CenterのShanu Modi氏らにより公表された。
DESTINYBreast04試験は、化学療法による前治療を受けたHER2低発現の転移性乳がん患者(N=557人)に対してエンハーツ5.4mg/kg単剤を投与する群(N=373人)、もしくは主治医選択の化学療法(カペシタビン、エリブリン、ゲムシタビン、パクリタキセル、ナブパクリタキセル)を実施する群(N=184人)に2対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目としてホルモン受容体(HR)陽性群における盲検独立中央判定(BICR)による無増悪生存期間(PFS)、重要な副次評価項目として全患者群における盲検独立中央判定(BICR)による無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)等を比較検証した国際多施設共同ランダム化オープンラベルの第III相試験である。なお、557人の患者に内、ホルモン受容体(HR)陽性患者は494人、ホルモン受容体(HR)陰性患者は63人である。
本試験の結果、主要評価項目であるホルモン受容体(HR)陽性群における盲検独立中央判定(BICR)による無増悪生存期間(PFS)中央値は、エンハーツ単剤群の10.1ヶ月に対して主治医選択の化学療法群で5.4ヶ月と、主治医選択の化学療法群に比べてエンハーツ単剤群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを49%減少(HR:0.51、P<0.001)を示した。
また、全生存期間(OS)中央値はエンハーツ単剤群23.9ヶ月に対して主治医選択の化学療法群17.5ヶ月、主治医選択の化学療法群に比べてエンハーツ単剤群で死亡(OS)のリスクを36%減少(HR:0.64、P=0.003)を示した。
全患者群における無増悪生存期間(PFS)中央値はエンハーツ単剤群9.9ヶ月に対して主治医選択の化学療法群5.1ヶ月、主治医選択の化学療法群に比べてエンハーツ単剤群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを50%減少(HR:0.50、P<0.001)を示した。
また、全生存期間(OS)中央値はエンハーツ単剤群23.4ヶ月に対して主治医選択の化学療法群16.8ヶ月、主治医選択の化学療法群に比べてエンハーツ単剤群で死亡(OS)のリスクを36%減少(HR:0.64、P=0.001)を示した。
以上のDESTINYBreast04試験の結果よりShanu Modi氏らは「化学療法による前治療を受けたHER2低発現の乳がん患者に対する抗HER2抗体薬物複合体エンハーツ単剤療法は、主治医選択の化学療法に比べて無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)を統計学的有意に改善しました」と結論を述べている。
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