・治療歴のある進行性淡明細胞型腎細胞がん患者が対象の第2相試験
・イミフィンジ±トレメリムマブ/サボリチニブの有効性・安全性を比較検証
・奏効率(cRR)はイミフィンジ単剤群10%、サボリチニブ単剤群5%、イミフィンジ+トレメリムマブ併用群28%、イミフィンジ+サボリチニブ併用群13%であり達成基準を満たさなかった
6月3日~7日、米国イリノイ州シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO 2022)にて治療歴のある進行性淡明細胞型腎細胞がん患者に対する抗PD-L1抗体薬であるイミフィンジ(一般名:デュルバルマブ、以下イミフィンジ)単剤療法、イミフィンジ+抗CTLA-4抗体薬であるトレメリムマブもしくはMET阻害薬であるサボリチニブ併用療法の有効性、安全性を検証した第2相のCALYPSO試験(NCT02819596)の結果がBarts ECMC, Barts Cancer InstituteのThomas Powles氏らにより公表された。
CALYPSO試験は、治療歴のある進行性淡明細胞型腎細胞がん患者(N=139人)に対してイミフィンジ単剤療法を実施する群(N=39人)、サボリチニブ単剤療法を実施する群(N=22人)、イミフィンジ+トレメリムマブ併用療法を実施する群(N=39人)、もしくはイミフィンジ+サボリチニブ併用療法を実施する群(N=39人)に振り分け、主要評価項目として奏効率(cRR:少なくとも50%以上と定義)を検証した多施設共同オープンラベルの第2相試験である。
本試験が開始された背景として、進行性淡明細胞型腎細胞がんの治療薬として新規薬剤による併用療法が必要とされおり、MET阻害薬、抗CTLA-4抗体薬はこれらの新薬に含まれる。以上の背景より、抗PD-L1抗体薬イミフィンジへのMET阻害薬、抗CTLA-4抗体薬の併用効果を検証する目的で本試験が開始された。
本試験の結果、奏効率(cRR)はイミフィンジ単剤群で10%、サボリチニブ単剤群で5%、イミフィンジ+トレメリムマブ併用群で28%、イミフィンジ+サボリチニブ併用群で13%であり、いずれも主要評価項目達成基準を満たさなかった。MET駆動性群(N=17人)における奏効率(cRR)はイミフィンジ単剤群で0%(N=0/7人)、サボリチニブ単剤群で0%(N=0/2人)、イミフィンジ+トレメリムマブ併用群で50%(N=1/2人)、イミフィンジ+サボリチニブ併用群で17%(N=1/6人)を示した。PD-L1陽性群における奏効率(RR)はイミフィンジ単剤群で33%(N=2/6人)、イミフィンジ+トレメリムマブ併用群で14%(N=1/7人)であった。
12ヶ月無増悪生存率(PFS)はイミフィンジ単剤群で26%(80%信頼区間:17-36%)、サボリチニブ単剤群で21%(80%信頼区間:10-35%)、イミフィンジ+トレメリムマブ併用群で33%(80%信頼区間:24-43%)、イミフィンジ+サボリチニブ併用群で17%(80%信頼区間:10-26%)であった。
全生存期間(OS)中央値はイミフィンジ単剤群で26.1ヶ月(80%信頼区間:16.2-32.0ヶ月)、サボリチニブ単剤群で23.1ヶ月(80%信頼区間:20.6-29.7ヶ月)、イミフィンジ+トレメリムマブ併用群で21.9ヶ月(80%信頼区間:16.3-31.5ヶ月)、イミフィンジ+サボリチニブ併用群で16.1ヶ月(80%信頼区間:10.3-18.8ヶ月)であった。
グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)発症率はイミフィンジ単剤群で10%(N=4/39人)、サボリチニブ単剤群で26%(N=5/19人)、イミフィンジ+トレメリムマブ併用群で23%(N=9/39人)、イミフィンジ+サボリチニブ併用群で23%(N=9/39人)であった。イミフィンジ+トレメリムマブ併用群で1人の治療関連の死亡が確認された。
以上のCALYPSO試験の結果より、Thomas Powles氏らは「治療歴のある進行性淡明細胞型腎細胞がん患者に対する抗PD-L1抗体薬イミフィンジ単剤療法、併用療法は奏効率(cRR)を統計学的有意に改善しませんでした」と結論を述べている。
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