※本記事はEvaluate社の許可のもと、オンコロが翻訳したものです。内容および解釈については英語の原文を優先します。正確な内容については原文をお読みください。
Unity-CLL試験では、ウブリツキシマブ+ウムブラリシブ併用療法が予想外の無増悪生存期間(PFS)延長をもたらすことが示された。
昨日(5月5日)、TG Therapeutics社(以下、TG社)がUNITY-CLL試験の成功を宣言したことに伴って、バイオテクノロジー領域におけるウブリツキシマブ+ウムブラリシブ併用療法の立ち位置は明確なものとなった。UNITY-CLL試験は幾度となく遅延し、初回解析での失敗後に本試験の評価項目の変更があったが、それにもかかわらず、最終的にはPFSの臨床的意義ある改善を明らかに示す結果となった。
この結果により、TG社の併用療法ことウブリツキシマブ+ウムブラリシブ併用療法は、2020年末までに慢性リンパ性白血病(CLL)の適応で承認申請されるだろう。このパイプライン(新薬候補、ウブリツキシマブ+ウムブラリシブ併用療法を指す)の売上は、絶対的な臨床ベネフィット、安全性プロファイル、そして新規慢性リンパ性白血病と再発/難治性慢性リンパ性白血病のそれぞれにおいて、どの程度有用性を示したのかによって左右されるだろう。
これらの問いに対する答えを求める投資家たちは、12月の米国血液学会議(ASH 2020)で公開されると考えられる同試験の全データの発表を待つ必要があるだろう。Evaluate Pharmaのコンセンサス予測では、ウブリツキシマブ+ウムブラリシブ併用療法の2026年時点における予測収益は17億ドルとされているが、この17億ドルには多発性硬化症に対するウブリツキシマブの収益分である3億ドル分も含まれている。
統計学的に高い有意差
しかし、今のところTG社は、比較対照薬であるRoche社の「ガザイバ+クロラムブシル併用療法」を上回るPFS改善効果を有し、しかも高い統計的有意性も示している(P<0.0001)。
同試験の全結果は未公開であるが、TG社の株価は、34%高の時価総額18億ドルで昨日(5月5日)の取引を終え、また今日(5月6日)はAt-the-Market (ATM) という手法で6,000万ドルの資金を調達したと公表した。TG社は、リンパ腫に対するウムブラリシブ単剤療法の米国での承認申請を2020年半ばまでに終えることを目指している。
しかしながら、UNITY-CLL試験には、腫瘍縮小効果が示されなかったにも関わらず、PFSでは肯定的な結果が示されたという最大の謎が残る。もし、患者が無増悪状態を維持しているのであれば、奏効していると期待するのが論理的であるが、TG社の資料はこれら2つの評価指標に相関関係がないことを示唆している。
とは言え、TG社の最高経営責任者(CEO)であるMichael Weiss氏は全奏効率(ORR)の分析に失敗したわけではなく、データが十分に成熟していなかったと主張している。Weiss氏はEvaluate Vantageに対して、「現在もORRにおいて臨床的ベネフィットがあるかどうかは不明であるが、今、それは重要なことではない」と述べている。
同様にWeiss氏は、慢性リンパ性白血病は他のがん種とは違い、化学療法に対して反応がいい傾向があるが、PFSの改善は限られていると語った。実際に、再発性慢性リンパ性白血病に対する英アストラゼネカ社のアカラブルチニブの有用性を検証したASCEND試験では、アカラブルチニブは対照群であるリツキシマブ+イデラリシブもしくはベンダムスチンの併用療法に比べて臨床的意義あるPFSの改善を示したが、ORRに関しては、改善を認められなかった。
Cantor Fitzgerald社のアナリストであるAlethia Young氏は、ウブリツキシマブ+ウムブラリシブ併用療法はUNITY-CLL試験においてPFSを40%改善することが示されており、目標は病勢進行リスクを29%減少(ハザード比:0.71)させることだった、と述べている。これが中間解析の結果であることを考慮すると、有効性を理由にUNITY-CLL試験が早期終了となった点を加味すると、実際のHR(ハザード比)はさらに良いはずであり、「0.50前後ではないか」と、Young氏は昨日(5月5日)に記している。
ほかにも、抗CD20抗体であるウブリツキシマブとPI3Kδ阻害薬であるウムブラリシブ併用療法が、Abbvie社/Johnson & Johnson社が開発したイブルチニブとRoche社/Abbvie社が開発したベネトクラクスの併用療法のような新規治療レジメンと、どのように競合するのか、という疑問がある。慢性リンパ性白血病に対するファーストライン治療としてのベネトクラクス+ガザイバ併用療法はガザイバ+クロラムブシル併用療法に比べて病勢進行のリスクを67%減少し、一方のイブルチニブ単剤療法はクロラムブシルに対してハザード比0.16の驚異的な結果を示している。
重要なのは、UNITY-CLL試験には新規慢性リンパ性白血病だけでなく再発難治性慢性リンパ性白血病の患者も登録されており、その患者比率は60対40であるということだ。TG社はPFSの改善効果が両群で確認されたと主張しているが、それぞれの群に対する効果を正確に把握することが重要なポイントであり、同併用療法の潜在的可能性を決定づけるだろう。
PI3Kδ阻害薬で初めて
昨日(5月5日)に行われたアナリスト向けの電話会議において、TG社はこの併用療法が、慢性リンパ性白血病(CLL)に対するファーストライン治療として有用性を証明した初のPI3Kδ阻害薬であることを強調した。この作用機序(PI3Kδ阻害)はGilead社が開発したイデラリシブの不幸な結果から毒性に懸念が持たれるが、TG社のウムブラリシブに安全性の問題がないと仮定するならば、その点は重要なセールスポイントになり得るだろう。
TG社はまた、UNITY-CLL試験は他の併用療法を検証するきっかけとなると述べており、同社のパイプラインにはBTK阻害薬であるTG-1701も含まれている。
とは言え、投資家たちは最終結果が公表されるまで慎重な姿勢を崩さないだろう。UNITY-CLL試験は臨床的意義のある寛解率を達成できなかったために迅速承認が見送られ、有効性の評価指標がPFSへと変更された。その後、PFSの公表は2度遅延し、TG社は中間解析の追加を余儀なくされた。(TG shrugs off another delay, but history is against it, 2020年3月4日)
土壇場の解析結果にして、TG社は良好な結果を得た。それが一攫千金になるかどうかは、全データが公表されたときに明らかになるだろう。
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■出典
TG pulls victory from the jaws of defeat