・治療歴のあるホルモン受容体陽性HER2陽性の進行性乳がん患者が対象の第2相試験
・ベージニオ+ハーセプチン±フルベストラント併用療法の有効性・安全性を比較検証
・ハーセプチン+標準化学療法群と比較して、+フルベストラント併用群で病勢進行または死亡のリスクが33%減少
2020年4月27日、医学誌『The Lancet Oncology』にて治療歴のあるホルモン受容体陽性HER2陽性の進行性乳がん患者に対するCDK4/CDK6阻害薬であるアベマシクリブ(商品名ベージニオ;以下ベージニオ)+抗HER2モノクローナル抗体であるトラスツズマブ(商品名ハーセプチン;以下ハーセプチン)±フルベストラント併用療法の有効性、安全性を比較検証した第2相試験(NCT02675231)の結果がDana-Farber Cancer InstituteのSara M Tolaney氏らにより公表された。
本試験は、少なくとも2種類の抗HER2抗体治療歴のあるホルモン受容体陽性HER2陽性の進行性乳がん患者に対してベージニオ+ハーセプチン+フルベストラント併用療法を投与する群(N=79人)、ベージニオ+ハーセプチン併用療法を投与する群(N=79人)、ハーセプチン+標準化学療法を投与する群(N=79人)に1対1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として安全性などを比較検証した第2相試験である。
本試験が開始された背景として、少なくとも2種類の抗HER2抗体治療歴のあるホルモン受容体陽性HER2陽性の進行性乳がんの治療成績は不良であり、治療選択肢は非常に限られている。以上の背景より、近年承認されたCDK4/CDK6阻害薬ベージニオを組み合わせた治療法の開発をする目的で本試験が開始された。
本試験のフォローアップ期間中央値19.0ヶ月時点における結果は下記の通りである。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)はベージニオ+ハーセプチン+フルベストラント群で8.3ヶ月(95%信頼区間:5.9‐12.6ヶ月)に対してハーセプチン+標準化学療法群で5.7ヶ月(95%信頼区間:5.4‐7.0ヶ月)、ベージニオ+ハーセプチン+フルベストラント群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを33%(HR:0.67,95%信頼区間:0.45‐1.00,P=0.051)減少し、主要評価項目を達成した。
なお、ベージニオ+ハーセプチン群の無増悪生存期間(PFS)は5.7ヶ月(95%信頼区間:4.2‐7.2ヶ月)、ハーセプチン+標準化学療法に比べて病勢進行または死亡(PFS)のリスクを6%(HR:0.94,95%信頼区間:0.64‐1.38,P=0.77)減少する臨床的意義のある差は確認されなかった。
一方の安全性として、最も多くの患者で確認されたグレード3~4の治療関連有害事象(TRAE)は好中球減少症でベージニオ+ハーセプチン+フルベストラント群27%、ベージニオ+ハーセプチン群22%、ハーセプチン+標準化学療法群26%を示した。また、ベージニオ+ハーセプチン+フルベストラント群で確認された重篤な有害事象(SAE)は発熱、下痢、尿路感染症、急性腎障害であった。
以上の第2相試験の結果よりSara M Tolaney氏らは以下のように結論を述べている。”少なくとも2種類の抗HER2抗体治療歴のあるホルモン受容体陽性HER2陽性の進行性乳がん患者に対するベージニオ+ハーセプチン+フルベストラント併用療法は、ハーセプチン+標準化学療法に比べて無増悪生存期間(PFS)を統計学有意に改善しました。また、忍容性も良好であり、本治療は標準治療の代替になり得る可能性が示唆されました。”
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