・複数治療歴のあるBRCA1/2遺伝子変異陽性の高グレードの卵巣がん患者が対象の第3相試験
・ルカパリブ単剤療法の有効性・安全性を標準化学療法と比較検証
・無増悪生存期間はルカパリブ単剤群7.4ヶ月を示し、標準化学療法群(5.7ヶ月)に対し統計学的有意に延長した
3月14日、医学誌『The Lancet Oncology』にて複数治療歴のあるBRCA1/2遺伝子変異陽性の高グレードの卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がん患者に対してPARP阻害薬であるルカパリブ単剤療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のARIEL4試験(NCT02855944)の結果がGuy’s and St Thomas’ NHS Foundation TrustのRebecca Kristeleit氏らにより公表された。
ARIEL4試験は、2レジメン以上の化学療法治療歴のあるBRCA1/2遺伝子変異陽性の高グレードの卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がん患者(N=349人)に対して1日2回ルカパリブ600mg単剤療法を実施する群(N=233人)、もしくは標準化学療法を実施する群に2対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として主治医評価の無増悪生存期間(PFS)を比較検証した無作為化オープンラベル国際多施設共同の第3相試験である。
本試験が開始された背景として、BRCA1/2遺伝子変異陽性の卵巣がんに対するPARP阻害薬、標準化学療法の有用性を前向きに比較検証した試験は限られている。以上の背景より、複数治療歴のあるBRCA1/2遺伝子変異陽性の高グレードの卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がん患者に対するPARP阻害薬ルカパリブ単剤療法の有用性を検証する目的で本試験が開始された。
本試験に登録された349人の患者背景は年齢中央値58歳(IQR:52-64歳)、人種は白人95%(N=332人)。以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。
本試験のフォローアップ期間中央値25.0ヶ月時点における結果、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はルカパリブ単剤群の7.4ヶ月(95%信頼区間:6.6-7.9ヶ月)に対して標準化学療法群で5.7ヶ月(95%信頼区間:5.5-6.7ヶ月)を示し、標準化学療法群に比べてルカパリブ単剤療法群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを33%(HR:0.67、95%信頼区間:0.52-0.86、P=0.0017)統計学的有意に改善した。
一方の安全性として、最も多くの患者で確認されたグレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は貧血もしくはヘモグロビン減少であり、その発症率はルカパリブ単剤療法群の22%(N=52/232人)に対して標準化学療法群で5%(N=6/113人)であった。また、重篤な有害事象(SAE)発症率はルカパリブ単剤療法群の27%(N=62人)に対して標準化学療法群で12%(N=13人)であった。なお、ルカパリブ関連の有害事象(AE)により3人の死亡が確認されており、その原因はそれぞれ心疾患、骨髄異形成症候群、原因不明であった。
以上のARIEL4試験の結果よりRebecca Kristeleit氏らは以下のように結論を述べている。「複数治療歴のあるBRCA1/2遺伝子変異陽性の高グレードの卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がんに対するPARP阻害薬ルカパリブ単剤療法は、標準化学療法の代替療法になり得る可能性が示唆されました」と結論を述べている。
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