1月5日、アストラゼネカは、2017年1月5日より、オシメルチニブ(タグリッソ®)のコンパニオン診断薬「コバス®EGFR変異検出キットv2.0」(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)を用いたT790M血漿検査結果の倫理提供(T790M血漿検査結果提供プログラム)を開始することを発表した。
第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬であるタグリッソは2016年5月に薬価収載され、イレッサ等の既存のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬抵抗性となる二次変異T790M変異を有する非小細胞肺がん患者にも著効する優れた薬剤である。
しかしながら、使用するためには侵襲性の高い再生検を行う必要があり、中には薬剤抵抗性となっても組織採取が困難な患者も存在し、こういった患者は、検査さえできればT790M変異が認められる可能性があるにもかかわらず、その選択肢を得ることができなかった。
そういった中、2016年12月26日に薬事承認されたコバス®EGFR変異検出キットv2.0は、血液検査でのT790M変異が検出できる「血漿検査(リキッドバイオプシー)キット」が含まれ、あとは保険適応を待つばかりとなった。
目次
アストラゼネカによるタグリッソのコンパニオン診断薬を用いたリキッドバイオプシー検査結果の無償提供開始
アストラゼネカは、既存の腫瘍組織採取によるT790M遺伝子変異検査の実施が困難なEGFRチロシンキナーゼ阻害薬に耐性を示す患者さんの緊急の治療ニーズを支援する倫理的観点から、コバス®EGFR変異検出キットv2.0によるT790M血漿検査が保険適用されるまでの期間、タグリッソ®が納入または採用されている医療施設に限定して、アストラゼネカがT790M血漿検査結果を無償提供する。
<本プログラム実施概要(アストラゼネカプレスリリース転載)>
名称: T790M血漿検査*結果提供プログラム*
開始日: 2017年1月5日
終了日:コバス®EGFR変異検出キットv2.0を用いたT790M血漿検査の保険適用日前日**
対象施設:以下のいずれかの要件を満たす施設
1. タグリッソが納入されている施設
2. タグリッソが薬事審議会等の院内規定に基づいて正式採用又は仮採用(臨時採用等含む)されている施設
対象患者 :以下の全ての要件を満たす患者
1. EGFR-TKIに抵抗性の手術不能又は再発非小細胞肺癌患者
2. 腫瘍組織の採取(再生検)が困難なため、T790M組織検査を実施できない患者
3. T790M血漿検査を用いた臨床研究等により、検査費用が負担されていない患者
*コバスEGFR変異検出キット v2.0による血漿検体を用いた遺伝子変異検査(血漿検査)
**予測困難な諸般の事情により、やむを得ず本プログラムを中止することがあります。
なお、アストラゼネカ社とオンコロ等で共同で行った調査によると、リキッドバイオプシーに関するニーズは高い。しかしながら、精度は腫瘍組織による生検よりも低いことが知られているため、注意が必要となる。
進行・再発非小細胞肺がん患者への組織採取や遺伝子検査に関する意識調査を実施しました(2016/12/14)
記事:可知 健太
リサーチのお願い
この記事に利益相反はありません。