非小細胞肺がん(NSCLC)のがん免疫療法に用いられているペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)が、進行性の進展型小細胞肺がん(SCLC)患者の3分の1(24例中8例)に奏効をもたらした。有効な治療法がない固形がん患者を対象とする第1b相試験(KEYNOTE-028、NCT02054806)の一部で、米国Dana-Farberがん研究所のPatrick A. Ott氏らが進展型SCLC患者集団のデータを解析し、2017年8月16日のJournal of Clinical Oncologyオンライン版に発表した。
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複数の重い治療歴を持つPD-L1陽性患者に対する単剤治療
プログラム細胞死受容体リガンド1(PD-L1)発現陽性(腫瘍と関連免疫細胞の発現レベル1%以上)の小細胞肺がん(SCLC)、または肺神経内分泌腫瘍で、標準療法で効果が得られなかった患者を対象とし、ペムブロリズマブ10mg/kgを2週ごとに静注した。2014年3月から2015年5月に登録可否のためのスクリーニングが行われた。
その結果、ペムブロリズマブを少なくとも1回投与された解析対象は24例で、データカットオフ時点(2016年6月20日)までの評価追跡期間中央値は9.8カ月であった。
24例中21例(87.5%)は2種以上の治療歴があり、9例(37.5%)は3種以上の治療歴があった。全24例が一次治療としてプラチナ製剤とエトポシドの併用療法を受け、11例は二次治療としてトポテカン、またはイリノテカンの治療を受けていた。
主要評価項目である安全性と忍容性は、過去の臨床試験や他のがん種の患者のデータを逸脱することなく良好であった。グレード3以上の治療関連有害事象は2例に認められ、1例はグレード3のビリルビン上昇、別の1例はグレード3の無力症とグレード5の大腸炎・腸管虚血であった。
最短1.7カ月で奏効到達、最長20カ月以上にわたり奏効持続
有効性の主要評価項目である奏効率は33%(8/24例)で、完全奏効(CR)が1例、部分奏効(PR)が7例に認められた。6カ月以上持続する病勢安定(SD)は1例に認められた。
奏効到達期間中央値は2.0カ月、奏効持続期間中央値は19.4カ月で、ペムブロリズマブの効果発現は速やか、かつ持続的であった。データカットオフ時点で3例の奏効が持続していた。
無増悪生存(PFS)期間中央値は1.9カ月で、6カ月のPFS率は28.6%、12カ月のPFS率は23.8%であった。全生存期間中央値は9.7カ月で、6カ月、12カ月の全生存率はそれぞれ66.0%、37.7%であった。
免疫チェックポイント阻害薬の登場は一次治療から改めて考える機会に
進展型小細胞肺がん(SCLC)はヘビースモーカーに発症することがほとんどで、肺がん全体の約15%を占める。全般に予後が不良で、生存期間の中央値は8カ月から12カ月、2年生存率は5%とされる。標準的なプラチナ製剤とエトポシドの2剤併用化学療法による一次治療で50%から80%の患者は奏効するが、その後に進行する患者が多く、二次治療は限られている。日本や米国、欧州では、エトポシドは二次治療としても推奨されているが、奏効率は15%から20%程度で、その持続性は乏しい。日本では、二次治療としてアムルビシンも推奨されている。
Ott氏らは、治療歴の多いSCLC患者集団で33%の奏効率が得られたことで、本試験を実施した意義は十分にあるとみている。しかも、速やかに奏効に達し、十分な持続性が認められたことは、標準化学療法と比較すれば明らかにメリットがある。例えば、トポテカンの奏効率は7%から最大でも24%とされ、奏効しても短期間しか持続しないのが現実である。
また、本試験ではペムブロリズマブの作用標的となるPD-L1発現陽性の患者に限定して登録した。その上で、ペムブロリズマブ単剤治療での奏効率(33%)は、PD-L1発現の有無を問わずにニボルマブ(商品名オプジーボ)で単剤治療した場合の奏効率(10%)より明らかに高い。これは、発現陽性の患者を選抜して治療したことで治療成績が上がったと考えることもできるが、一方で、PD-L1発現陰性でもニボルマブにより奏効した患者も存在することから、単純に判断することはできない。
現在、PD-L1発現状態を登録条件としない進展型小細胞肺がん(SCLC)対象の第2相試験(KETNOTE-158、NCT02628067)が行われており、PD-L1発現による患者選抜の意義を明確にできるかどうか、客観的判断が待たれる。またKETNOTE-158では、PD-L1のバイオマーカーの可能性を調べるのみならず、遺伝子発現プロファイル、あるいは治療効果におよぼす遺伝子変異の負担などを評価する計画である。
KETNOTE-158の他にも進展型小細胞肺がん(SCLC)を対象とするペムブロリズマブの複数の臨床試験が開始されており、それらの評価・解析を通して、より厳格な患者選抜基準を決定するためのバイオマーカーを特定する。さらには、ペムブロリズマブ単剤が初回の導入療法や維持療法として果たせる役割を評価し、化学療法や放射線療法、他の免疫修飾薬との併用療法の可能性も模索する。
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