2018年7月30日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて治療歴のあるT790M変異型非小細胞肺がん患者に対するオシメルチニブ(商品名タグリッソ;以下タグリッソ)単剤療法の有効性を比較検証した第III相のAURA3試験(NCT02151981)より、中枢神経系(CNS)転移病変を有する患者群における有効性の結果がGuangdong Lung Cancer Institute・Yi-Long Wu氏らにより公表された。
AURA3試験とは、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬による治療中もしくは治療後に病勢進行したT790M変異型非小細胞肺がん患者(N=416人)に対してタグリッソ単剤療法を投与する群(N=279人)、または化学療法(ペメトレキセド+カルボプラチン、またはペメトレキセド̟+シスプラチン)併用療法を投与する群(N=140人)に2対1の割合で振り分け、主要評価項目として腫瘍が中枢神経系(CNS)に転移した患者における客観的奏効率(ORR)を比較検証した第III相試験である。
本試験に登録された中枢神経系(CNS)に転移した患者のタグリッソ群、化学療法群それぞれの背景は下記の通りである。年齢中央値はタグリッソ群58歳(34-82歳)、化学療法群59歳(20-79歳)。性別は男性45%(N=34人)、29%(N=12人)。人種はアジア人68%(N=51人)、80%(N=33人)、白人31%(N=23人)、20%(N=8人)。
Performance Statusはスコア0が29%(N=22人)、34%(N=14人)、スコア1が71%(N=53人)、66%(N=27人)。肺がんの種類は腺がん99%(N=74人)、100%(N=41人)。脳に対する放射線治療歴ありは37%(N=28人)、49%(N=20人)。
本試験の結果、主要評価項目である腫瘍が中枢神経系(CNS)に転移した患者における客観的奏効率(ORR)はタグリッソ群70%(95%信頼区間:51%-85%)、化学療法群31%(95%信頼区間:11%-59%)であった(オッズ比:5.13,95%信頼区間:1.44-20.6,P=0.015)。なお、腫瘍が中枢神経系(CNS)に転移した患者における病勢コントロール率(DCR)はタグリッソ群93%(95%信頼区間:78%-99%)、化学療法群63%(95%信頼区間:35%-85%)であった。
腫瘍が中枢神経系(CNS)に転移した患者における無増悪生存期間(PFS)中央値は、タグリッソ群11.7ヶ月(95%信頼区間:10ヶ月-未到達)、化学療法群5.6ヶ月(95%信頼区間:4.2-9.7ヶ月)、タグリッソ群で病勢進行または死亡のリスクが68%減少(ハザード比:0.15-0.69,P=0.004)した。
一方の安全性として、少なくとも1つの治療関連有害事象(TRAE)を発症した腫瘍が中枢神経系(CNS)に転移した患者はタグリッソ群97%、化学療法群95%、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)はタグリッソ群4%、化学療法群32%であり、既存の患者における安全性プロファイルと一致していた。
以上のAURA3試験の結果よりYi-Long Wu氏らは以下のように結論を述べている。”中枢神経系(CNS)転移病変を有するT790M変異型非小細胞肺がん患者に対するタグリッソ単剤療法は、化学療法に比べて客観的奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)を良好に改善しました。”
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