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HER2陽性ホルモン受容体陽性転移性局所進行性乳がん患者に対する一次治療としてのハーセプチン+パージェタ+アロマターゼ阻害薬、無増悪生存期間(PFS)を統計学有意に延長する医学誌『Journal of Clinical Oncology』より

  • [公開日]2018.08.23
  • [最終更新日]2019.02.15
この記事の3つのポイント
ホルモン療法以外治療歴のないHER2陽性ホルモン受容体陽性転乳がん患者対象の試験
・ハーセプチン+パージェタ+アロマターゼ阻害薬有効性を検証した第Ⅱ相試験
・ハーセプチン+アロマターゼ阻害薬と比較して無増悪生存期間PFS)を有意に延長

2018年8月14日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にてHER2陽性ホルモン受容体陽性転移性または局所進行性乳がん患者に対する一次治療としての抗HER2抗体薬であるトラスツズマブ(商品名ハーセプチン;ハーセプチン)+抗HER2抗体薬であるペルツズマブ(商品名パージェタ;パージェタ)+アロマターゼ阻害薬(AI;以下AI)併用療法の有効性を検証した第II相のPERTAIN試験(NCT01491737)の結果がDan L. Duncan Comprehensive Cancer Center・Mothaffar Rimawi氏らにより公表された。

PERTAIN試験とは、ホルモン療法以外の治療歴のないHER2陽性ホルモン受容体陽性転移性または局所進行性乳がん患者(N=258人)に対する一次治療としてハーセプチン+パージェタ+経口AI(アナストロゾールまたはレトロゾール)併用療法を投与する群(N=129人)、またはハーセプチン+経口AI(アナストロゾールまたはレトロゾール)併用療法を投与する群(N=129人)に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として全生存期間OS)、全奏効率ORR)などを比較検証した国際多施設共同の第III相試験である。

なお、投与スケジュールは3週を1サイクルとして1日目にハーセプチン8mg/kg(メンテナンス期は6mg/kg)、3週を1サイクルとして1日目にパージェタ840mg(メンテナンス期は420mg)、1日1回アナストロゾール1mgまたはレトロゾール2.5mg。そして、主治医判断により治験薬による治療開始前の化学療法として3週を1サイクルとして1日目にドセタキセルまたは1週を1サイクルとして1日目にパクリタキセルを18から24週間投与している。

本試験に登録された患者背景はパージェタ併用群、非併用群それぞれ下記の通りである。年齢中央値はパージェタ併用群で59歳(35-87歳)、非併用群で61歳(31-89歳)。ECOG Performance Statusはパージェタ併用群でスコア0が65.9%(N=85人)、スコア1が33.3%(N=43人)、非併用群でスコア0が69.0%(N=89人)、スコア1が30.2%(N=39人)。

臨床進行期はパージェタ併用群で局所進行性(LABC)6.2%(N=8人)、転移性(MBC)93.8%(N=121人)、非併用群で局所進行性(LABC)5.4%(N=7人)、転移性(MBC)94.6%(N=122人)。導入化学療法の治療歴はパージェタ併用群であり58.1%(N=75人)、なし41.9%(N=54人)、非併用群であり55.0%(N=71人)、なし45.0%(N=58人)。

以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はパージェタ併用群18.89ヶ月(95%信頼区間:14.09-27.66ヶ月)に対して非併用群15.80ヶ月(95%信頼区間:11.04-18.56ヶ月)、パージェタ併用群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクが35%統計学有意に減少した(HR:0.65,95%信頼区間:0.48-0.89,P = .0070)。

また、導入化学療法の有無による無増悪生存期間(PFS)は下記の通りである。導入化学療法を受けてない患者群における中央値はパージェタ併用群21.72ヶ月(95%信頼区間:12.42-32.95 ヶ月)に対して非併用群12.45ヶ月(95%信頼区間:6.21-18.53 ヶ月)であった(HR:0.55,95%信頼区間:0.34-0.88)。

導入化学療法(※)を受けた患者群における中央値はパージェタ併用群16.89ヶ月(95%信頼区間:12.35-27.37ヶ月)に対して非併用群16.85ヶ月(95%信頼区間:11.86-20.50 ヶ月)であった(HR:0.75,95%信頼区間:0.50-1.13)。
※ タキサン系抗がん剤治療歴。この臨床試験開始前にタキサン系抗がん剤を使用していた患者が146名組み込まれた。

副次評価項目である全奏効率(ORR)はパージェタ併用群63.3%に対して非併用群55.7%、両群間における統計学有意な差は確認されなかったが(P=0.2537)、パージェタ併用群で高率であった。なお、その主な理由は完全奏効(CR)率がパージェタ併用群で7.3%に対して非併用群で0.9%であったためである。

また、奏効持続期間(DOR)中央値はパージェタ併用群27.10ヶ月(95%信頼区間:14.13ヶ月-未到達)に対して非併用群15.11ヶ月(95%信頼区間:12.09-20.96ヶ月)、パージェタ併用群で奏効が統計学有意に持続した(HR:0.57,95%信頼区間:0.36-0.91,P = .0181)。なお、副次評価項目である全生存期間(OS)はデータが未成熟であった。

一方の安全性として、両群間において最も多くの患者で確認された全グレードの治療関連有害事象(TRAE)はパージェタ併用群、非併用群でそれぞれ下記の通りである。下痢はパージェタ併用群55.1%(N=70人)に対して非併用群36.3%(N=45人)、脱毛は28.3%(N=36人)に対して32.3%(N=40人)、吐き気は32.3%(N=41人)に対して25.8%(N=32人)。

また、最も多くの患者で確認されたグレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)はパージェタ併用群、非併用群でそれぞれ下記の通りである。高血圧はパージェタ併用群10.2%(N=13人)に対して非併用群11.3%(N=14人)、下痢7.1%(N=9人)に対して2.4%(N=3人)、好中球減少症3.1%(N=4人)に対して6.5%(N=8人)、貧血3.9%(N=5人)に対して2.4%(N=3人)。

以上のPERTAIN試験の結果よりMothaffar Rimawi氏らは以下のように結論を述べている。”HER2陽性ホルモン受容体陽性転移性または局所進行性乳がん患者に対するハーセプチン+パージェタ+経口AI併用療法は無増悪生存期間(PFS)を統計学有意に改善しました。また、治療関連有害事象(TRAE)は既存の臨床試験で確認されている安全性プロファイルと一致しており、安全性も良好でした。”

First-Line Trastuzumab Plus an Aromatase Inhibitor, With or Without Pertuzumab, in Human Epidermal Growth Factor Receptor 2–Positive and Hormone Receptor–Positive Metastatic or Locally Advanced Breast Cancer (PERTAIN): A Randomized, Open-Label Phase II Trial(Journal of Clinical Oncology, https://doi.org/10.1200/JCO.2017.76.7863)

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