・RAS/BRAF遺伝子野生型転移性大腸がん患者対象の第Ⅱ相のCRICKET試験
・アービタックス+イリノテカン併用療法の客観的奏効率等を検証
・再投与は有効な可能性が示唆され、適応患者のセレクションに役立つ可能性あり
2018年11月21日、医学誌『JAMA Oncology』にて1次治療として抗EGFR抗体薬であるセツキシマブ(商品名アービタックス;以下アービタックス)+イリノテカンベースの化学療法治療歴のあるRAS/BRAF遺伝子野生型転移性大腸がん患者に対するアービタックス+イリノテカン併用療法の有効性を検証した第Ⅱ相のCRICKET試験(NCT02296203)の結果がAzienda Ospedaliera Universitaria Pisana・Chiara Cremolini氏らにより公表された。
CRICKET試験とは、1次治療としてアービタックス+イリノテカンベースの化学療法に対し部分奏効(PR)、無増悪生存期間(PFS)6ヶ月以上を達成し、その後病勢進行したRAS/BRAF野生型転移性大腸がん患者(N=29人)に対して3次治療として2週間に1回アービタックス500mg/m2+イリノテカン180mg/㎡併用療法を投与し、主要評価項目として客観的奏効率(ORR)、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)などを検証した多施設共同シングルアームの第Ⅱ相試験である。なお、本試験では3次治療開始ベースライン時点におけるRAS遺伝子ステータスを血中循環腫瘍DNA(ctDNA)に基づいて測定している。そして、測定可能であった患者25人の内12人でRAS遺伝子変異陽性を示している。
本試験が実施された背景として、1次治療時点でアービタックス+イリノテカンベースの化学療法に対し奏効を示したRAS/BRAF野生型転移性大腸がん患者に対して、アービタックス+イリノテカン併用療法の再投与の有効性を検証するためである。
本試験に登録された患者背景は以下の通りである。
・年齢中央値は69歳(45-79歳)。
・性別は男性68%(N=19人、女性32%(N=9人)。
・ECOG Performance Statusはスコア0が64%(N=18人)、スコア1-2が36%(N=10人)。
・原発巣腫瘍部位は右側32%(N=9人)、左側47%(N=13人)、直腸21%(N=6人)。
・転移個数は1個25%(N=7人)、2個以上75%(N=21人)。
・転移部位は肝臓のみ18%(N=5人)。
・術後化学療法の治療歴はあり71%(N=20人)、なし29%(N=8人)。
本試験の結果は以下の通りである。
■主要評価項目である客観的奏効率は21%(95%信頼区間:10%-40%)、事前に計画した基準値を上回り主要評価項目を達成した。
■病勢コントロール率は54%(95%信頼区間:36%-70%)を示した。
■部分奏効以上の奏効を示した患者の中でRAS遺伝子変異陽性を示した患者は1人もいなかった。
■無増悪生存期間中央値はRAS遺伝子変異型群1.9ヶ月に対してRAS遺伝子野生型群4.0ヶ月、RAS遺伝子野生型群で病勢進行または死亡のリスクを56%統計学有意に減少した(HR:0.44,95%信頼区間:0.18-0.98,P=0.03)。
■安全性として、最も多くの患者で確認されたグレード3または4の治療関連有害事象は、下痢18%(N=5人)、皮膚障害14%(N=4人)、好中球減少症14%(N=4人)、手足症候群7%(N=2人)、発熱性好中球減少症4%(N=1人)、吐き気4%(N=1人)、低マグネシウム血症4%(N=1人)、結膜炎4%(N=1人)、口内炎4%(N=1人)。
第Ⅱ相のCRICKET試験の結果よりChiara Cremolini氏らは以下のように結論を述べている。“1次治療としてアービタックス+イリノテカンベースの化学療法治療歴のあるRAS/BRAF野生型転移性大腸がん患者に対するアービタックス+イリノテカン併用療法の再投与は有効である可能性が本試験より示唆されました。また、血中循環腫瘍DNAに基づいてRAS遺伝子ステータスを測定することで適応患者のセレクションに役立つ可能性があります。”
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