公益社団法人日本臨床腫瘍学会は、オプジーボ(ニボルマブ)がニボルマブの適正使用に関して、声明文を発表しました。
声明文を要約すると以下のようなことが記載されています。
「オプジーボは、長年にわたり期待外れとなっていた免疫療法で、はじめて肺がんを初めとする固形がんに有効性が示されたものであることから、一部マスコミ報道などによる効果に対する過度の期待や、有害事象の軽視などが懸念されています。」
1970年代から試みられている「がん免疫療法」は、30年以上の間、期待以上の効果は認められていませんでした。この理由としては、「免疫力を強くする」といった手法がとられていたからです。免疫力を強くしても、最終的にがん細胞に攻撃する時点に、免疫細胞のがん細胞に対する攻撃にブレーキがかかってしまうからです。(この仕組みを免疫チェックポイントとと言います)
そのブレーキの仕組みには、腫瘍細胞表面にあるPD-L1というタンパク質が、免疫細胞表面のPD-1という結合することで発生することがわかっています。(余談ですが、PD-1を発見した人は日本人。京都大学の本庶)
オプジーボや開発中のペムブロリズマブ(米国商品名キイトルーダ)はPD-1に結合する薬剤、開発中のデュルバルマブ、アテゾリズマブやアベルマブはPD-L1に結合する薬剤となります。
このブレーキを外すことによって、免疫細胞が腫瘍細胞に攻撃するようにする仕組みが、これらの薬剤の仕組みとなります。
よって、効果や副作用の特徴が、従来の抗がん剤とは異なります。
一部の患者には比較的、長期間にわたり効果が持続したり、きわめて稀ながら効果が遅れて生じたりすることが報告されていますし、自己免疫疾患に特徴される副作用が発現しますし、まだまだ未知とされる副作用が発現される可能性が高いです。
有効性については、様々なメディアが取り上げていますが、安全性については「ほとんどない」と報道されていることの方が多いです。
今回、日本臨床腫瘍学会はその点について触れております。
オプジーボは、大腸炎、肺臓炎、甲状腺炎(甲状腺機能低下症など)、下垂体炎(下垂体機能低下症など)、皮膚炎、1型糖尿病、筋炎、末梢神経炎(ギランバレー症候群など)、重症筋無力症などがあり、死亡例も報告されおり、なかでも、肺臓炎の発生頻度が、日本人では従来の抗がん治療薬でも高いことがわかっております。
今回の声明文は使用される医師向けへの声明文となりますが、使用する患者側も「効果」だけにフォーカスするのではなく、「安全性」についても知っておく必要があると考えます。
なお、日本肺癌学会は、昨年12月に肺がんの患者さん・ご家族・関係者宛てに「抗PD-1抗体ニボルマブ(商品名:オプジーボ)についてのお願い」を発表します。
こういった学会が適正使用を医師向けにも患者向けにも訴える活動はとても大切だと考えます。
日本臨床腫瘍学会 オプジーボ(ニボルマブ)の適正使用について 声明文を発表 (オンコロニュース2015/12/18)
記事;可知 健太
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