・化学療法未治療のステージI~IV子宮または卵巣がん肉腫患者に対する第3相試験
・パクリタキセル+カルボプラチン併用療法の有効性、安全性を比較検証
・パクリタキセル+カルボプラチン群で死亡のリスクを13%、病勢進行または死亡のリスクを26.5%改善
2019年5月31日から6月4日までアメリカ合衆国・イリノイ州・シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO 2019)にて、化学療法未治療のステージI~IV子宮または卵巣がん肉腫患者に対するパクリタキセル+イホスファミド併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のNRG Oncology試験(NCT00954174)の結果がSiteman Cancer CenterのMatthew A. Powell氏らにより公表された。
NRG Oncology試験とは、18歳以上のステージI~IV子宮または卵巣がん肉腫患者に対して21日を1サイクルとして1日目にパクリタキセル175mg/m2+1日目にカルボプラチンAUC6併用療法を投与する群、または21日を1サイクルとして1日目にパクリタキセル135mg/m2+1~3日目にイホスファミド1.6mg/m2併用療法を投与する群に1対1の割合で振り分け、主要評価項目として全生存期間(OS)、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)、有害事象(AE)発症率などを比較検証した第3相試験である。
本試験が実施された背景として、婦人科の卵巣がん肉腫は非常に稀な疾患であるが、悪性度の高い上皮性悪性腫瘍であり、標準治療の確立が必要とされている。パクリタキセル+イホスファミド併用療法は、イホスファミド単剤療法に比べて有効性が優れる可能性が示唆されている。以上の背景より本試験が実施された。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。
年齢中央値
パクリタキセル+カルボプラチン群=65歳
パクリタキセル+イホスファミド併用群=64歳
BMI中央値
パクリタキセル+カルボプラチン群=30.4
パクリタキセル+イホスファミド併用群=30.7
Performance Status
パクリタキセル+カルボプラチン群=スコア0 65.4%、スコア1 29.8%、スコア2 4.8%
パクリタキセル+イホスファミド併用群=スコア0 53.8%、スコア1 42.5%、スコア2 3.6%
進行病期
パクリタキセル+カルボプラチン群=ステージIまたはII 45.2%、ステージIIIまたはIV 46.5%、再発 8.3%
パクリタキセル+イホスファミド併用群=ステージIまたはII 46.2%、ステージIIIまたはIV 46.6%、再発 7.2%
放射線の前治療歴
パクリタキセル+カルボプラチン群=あり 13.6%
パクリタキセル+イホスファミド併用群=あり 13.1%
なお、両群間で患者背景に大きな偏りはなかった。
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である全生存期間(OS)中央値はパクリタキセル+カルボプラチン群37ヶ月に対してパクリタキセル+イホスファミド併用群29ヶ月、パクリタキセル+カルボプラチン群で死亡のリスクを13%(HR:0.87,90%信頼区間:0.70-1.075)改善し、非劣勢が証明された。
副次評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はパクリタキセル+カルボプラチン群16.3ヶ月に対してパクリタキセル+イホスファミド併用群11.7ヶ月、パクリタキセル+カルボプラチン群で病勢進行または死亡のリスクを26.5%(HR:0.735,95%信頼区間:0.58-0.93)改善し、非劣勢、優越性が証明された。
一方の安全性として、グレード3または4の有害事象(AE)発症率は下記の通りである。疲労はパクリタキセル+カルボプラチン4%に対してパクリタキセル+イホスファミド6%、代謝異常はパクリタキセル+カルボプラチン13%に対してパクリタキセル+イホスファミド16%、消化器系異常はパクリタキセル+カルボプラチン9%に対してパクリタキセル+イホスファミド9%。グレード3または4の有害事象(AE)に関しては両群間で明らかな差は確認されなかった。
以上のNRG Oncology試験の結果よりMatthew A. Powell氏らは以下のように結論を述べている。”化学療法未治療のステージI~IV子宮または卵巣がん肉腫患者に対するパクリタキセル+カルボプラチン併用療法は、パクリタキセル+イホスファミド併用療法に比べて無増悪生存期間(PFS)を延長し、全生存期間(OS)も非劣勢が証明されました。”
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