・HER2陽性局所進行性固形がん患者が対象の第1相試験
・Trastuzumab duocarmazine単剤療法の安全性・有効性を検証
・客観的奏効率は33%で、複数治療歴のある患者でも良好な抗腫瘍効果を示した
2019年6月27日、医学誌『The Lancet Oncology』にてHER2陽性局所進行性固形がん患者に対する抗HER2モノクローナル抗体薬であるTrastuzumab duocarmazine(SYD985)単剤療法の安全性、有効性を検証した第1相試験(NCT02277717)の結果がInstitute of Cancer Research and The Royal MarsdenのUdai Banerji氏らにより公表された。
本試験は、HER2陽性局所進行性固形がん患者に対して3週を1サイクルとしてTrastuzumab duocarmazine(SYD985)0.3~2.4mg/kg単剤療法を病勢進行または予期せぬ有害事象(AE)が発現するまで投与し、主要評価項目として安全性、客観的奏効率(ORR)などを検証した第1相試験である。
本試験が実施された背景として、基礎試験にて新規抗HER2モノクローナル抗体薬であるTrastuzumab duocarmazine(SYD985)の抗腫瘍効果が確認されているためである。以上の背景よりHER2陽性局所進行性固形がん患者に対するTrastuzumab duocarmazine(SYD985)の有用性を検証する目的で本試験が実施された。
本試験の結果は下記の通りである。用量制限毒性(DLT)はduocarmazine(SYD985)2.4mg/kg用量時点で1人の患者で死亡が確認され、その原因は肺炎。duocarmazine(SYD985)1.5mg/kg用量時点でも1人の患者で死亡が確認され、その原因は病勢進行(PD)であった。また、グレード3~4の治療関連有害事象(TRAE)として角膜炎3人、疲労1人が確認された。以上の結果より、第2相試験水(RPIID)はduocarmazine(SYD985)1.2mg/kgに決定された。
主要評価項目であるHER2陽性乳がん患者群(N=48人)における客観的奏効率(ORR)は33%(95%信頼区間:20.4%-48.4%)を示した。また、各患者群における客観的奏効率(ORR)としてはHER2低率ホルモン受容体陽性乳がん患者群(N=32人)で28%(95%信頼区間:13.8%-46.8%)、HER2低率ホルモン受容体陰性乳がん患者群(N=16人)で40%(95%信頼区間:16.3%-67.6%)を示した。
その他がん種では、胃がん患者群(N=16人)で6%(95%信頼区間:0.2%-30.2%)、尿路上皮がん患者群(N=16人)25%(95%信頼区間:7.3%-52.4%)、子宮内膜がん患者群(N=13人)39%(95%信頼区間:13.9%-68.4%)を示した。
以上の第1相試験の結果よりUdai Banerji氏らは以下のように結論を述べている。”HER2陽性局所進行性固形がん患者に対する抗HER2モノクローナル抗体薬Trastuzumab duocarmazine(SYD985)単剤療法は、複数治療歴のある患者に対しても良好な抗腫瘍効果を示しました。”
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