今年1月に公開した特集「主治医と相談しましたか?がん治療の副作用と口腔ケアの重要性」にて、がん治療における口腔ケアについてご解説頂きました宮城県立がんセンター 頭頸部内科 診療科長の山﨑知子先生が新著を出版されました。
タイトルは「まず知っておきたい!がん治療のお金,医療サービス事典」。
なぜ、頭頸部内科専門医の山﨑先生が“お金と医療サービス”に関する本を出版されたのか。その背景や編さん中に感じたこと、患者さんへのメッセージを伺いました。
目次
きっかけは友人のがん罹患、安心して治療に専念するために
茂木:頭頸部内科の専門医でいらっしゃる山﨑先生がなぜ「お金と医療サービス」に関する本を出そうと思ったのか。背景をお聞かせください。
山﨑先生:友人ががんに罹患、治療することになったのが一番のきっかけです。
がん治療にあたっては、治療内容のみならず、医療費や仕事の面など、様々な心配事が生じます。
お金と医療サービスについて1冊にまとまったものがあれば、安心して治療に専念できるのでは、と考え、執筆に至りました。
茂木:本書をまとめるにあたり、どのような点に注力されましたか?また、最も苦労された点はどのようなことでしょうか?
山﨑先生:がん治療に関して、暗くなりすぎない内容にする、ということです。
心配事はあるかもしれませんが、病院スタッフをはじめとしたサポーターがたくさんいるということ、ぜひ気軽に相談をしてほしいということを一番のメッセージとしました。
加えて、インターネットやSNSの普及で、医療情報にあふれている中で、正確な情報を知ってほしいという点にも心を配りました。
医療従事者ではない方が手に取っても、わかりやすく読みやすい本にすることが最も大変なことでした。
できるだけ平易な言葉で、読み手が飽きないような内容を心がけました。
茂木:2人に1人ががんになる時代、本著の内容は「誰しもが直面する課題・問題」の指南書であると感じました。そのうえで、特にどのような方に本著を読んで頂きたいとお考えですか?
山﨑先生:誰もが「がん」が身近になっていると思います。
がん患者さんやご家族のみならず、医師、歯科医師、看護師、薬剤師をはじめとした医療従事者の方にも読んでいただけたらとてもうれしいです。
体系化されていない医療支援制度、医療従事者も関心・理解を
茂木:本書では、複雑な支援制度そのものとその申請の過程などが大変分かりやすく解説されていました。それでも診断がついたばかりの患者さんやそのご家族にとって、制度や手続きの過程に難解な部分もあると思います。もし、患者さん・ご家族がどうしたらいいかわからなくなってしまった場合、まずはどのようなアクションを取っていただきたいとお考えですか?
山﨑先生:日本における医療支援制度はとても優れていると思います。
ただ、ほとんどが自分で申請する必要があります。
がんと診断されたばかりの精神的に余裕がない時期に、これらを行うのはとても大変です。
ぜひ、担当医や医療スタッフ、病院のソーシャルワーカーに声をかけていただければと思います。
医療費など金銭的なことは、患者さんもなんとなく質問しづらいことかと思います。
患者さんの診療の際に「医療費で不安なことはありませんか」と、医療従事者より一言尋ねるだけでも、安心につながると思います。
茂木:本書の編さんを進めることで、改めて先生ご自身が認識された日本の医療支援制度、サービスの問題点はありますか?また、その解決方法や今後への期待・展望がございましたら教えて下さい。
山﨑先生:様々な医療支援制度がありますが、それが体系化されていないと感じました。
各種申請のため、役所へ行ったとしても、どこに行っていいかわからなかったなどという訴えもよく耳にします。
解決方法としては、各病院でのソーシャルワーカーなどの人員を増やすこと、情報媒体を標準化、簡単にすること、だれもが情報に届きやすくすることかと思います。
私たち医療従事者も、医療支援制度に関心を持ち、理解をしておくこともその一つと思います。
茂木:最後に、オンコロ読者のみなさんへメッセージをお願いします。
山﨑先生:がん治療では、治療を受ける側も、治療を行う側も、医療費、医療サービスについて理解しておくことがとても大切です。
これをお読みの皆様も、ぜひ、お手に取っていただき、感想をお聞かせいただけますとうれしいです。
その感想をもとに第2版を作りたいです。
茂木:ありがとうございました。第2版出版につながるよう、オンコロも微力ながら協力して参ります。
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https://www.zenniti.com/f/b/show/b01/1321/zc01/8.html
特集「主治医と相談しましたか?がん治療の副作用と口腔ケアの重要性」