6月29日、慶応義塾大学医学部 総合医科学研究棟ラウンジにて開催した【胃がんキャラバンSpin Off】「どんな質問にもこたえます第2弾~抗がん剤編~」は、当日、会場参加者28 名、動画配信視聴総計約3,000回(7月5日現在)で、無事終了いたしました。
前回3月30日にトライアルとして行った、座学なし、質疑応答のみをライブ配信で行なった形式は、好評であったとともに、私どもも質疑応答の意義を強く感じる機会となりましたので、シリーズ化し、今後、慶応義塾大学病院腫瘍センターならびにNPO法人宮崎がん共同研究会と共催で開催する9月、12月、3月へと継続していくことになりました。(開催日程:後日発表)
今回は、前回の質疑応答から、大きな不安、疑問を抱きやすい「抗がん剤」をテーマに据えました。
12年半の患者会活動を通じて、患者家族の声を多く聴いてきた、卵巣がん体験者の会スマイリーの片木美穂氏をスペシャルゲストに迎えました。また、質疑応答に入る前に、27歳でスキルス胃がんに罹患し、10年間、抗がん剤治療を受けながら、理学療法士の仕事を続け、公私両面から、がん治療への想いを持つ、希望の会理事、沖真由香さんの発表をしていただきました。
今回も事前質問を受け付け、各地開催の胃がんキャラバンで回答しきれなかったものも含め、当日会場参加者からの質問と合わせて、次々と回答していきました。質疑応答2時間半、セミナー全体では3時間の長丁場でしたが、会場参加者の真剣なまなざしと、ライブ配信視聴者がどんどん増えていくことにセミナーへの期待を強く感じる時間となりました。
【浜本先生、押川先生の質問への対応】
事前に集まっていた質問に関しては、浜本先生がスライドを準備。各地開催のセミナーでの質問で未回答のものには、押川先生がスライドを準備してくださいました。質問と回答をスライドで示す形で、理解しやすかったと思います。
回答していく中で、医療者の回答が誠実であっても、なぜ、患者家族がその不安を抱くのかという背景が医療者に伝わっていないために、患者家族の不安と少しずれてしまうことがあることも感じました。片木氏、轟が、患者やその家族の気持ち、不安の背景を補足することで、医療者からの回答は、ぐっと核心にせまるものになっていくのを感じ、このメンバー構成の意味はあったと思います。
本来は、診察室の中で、主治医と患者やその家族が対話として行っていけるようになることが目標であり、診察時間に限りがあること、患者家族は不安をどう言葉にしたらいいかもわからないことなどをふまえ、日ごろ、患者家族の声を聞いている患者会代表が、意味を補足することは、ヒントになりうることを感じました。
このセミナーでのやりとりを通じて、自分の不安をどう言葉にしたらいいかを参加者が感じ、自分の診察時に主治医とコミュニケーションをとっていく際に参考にしていただけることを期待しています。
【何のために治療をするのか】
前回と同様に、患者家族の不安、疑問は以下のような柱に集約されていることを感じました
1.化学療法と並行して、自分たちが生活の中でできることはないのか?
2.抗がん剤の順番、どのタイミングで次の治療に変えるのか?
3.自分の受けている治療は最善なのか?
4.遺伝子、ゲノムとは?
また、「積極的治療」「もう治療がない」「次は緩和」などのような医師からの言葉に、絶望を感じてしまうことも、患者やその家族が、根拠のない民間療法などにすがる要因になっていることも感じました。
抗がん剤治療だけが治療ではないこと、緩和ケアの意味、さらに、医師のみではなく、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーなど、様々な職種のチームが治療を支えていることも、可視化していく必要を感じます。
病気や治療に詳しくなることが【患者力】なのではなく、相談し、助けてと言える繋がりを増やしていくことが患者やその家族の力になることを感じています。納得し、選択していくのは患者やその家族であり、それしか後悔を減らす方法はありません。そのためにも、『なんのために治療をしているのか』という見通しを明確にし、患者家族、医療者がスクラムを組んで治療にむかっていくことの必要を感じます。
キャラバンを通じて、主治医以外の医療者に触れ、その話、そして、医療者の想いに触れることが、患者やその家族の覚悟、勇気に繋がっていくのではないかと感じることもできました。
【今後に向けて】
次回、9月開催(日程:後日発表)の「どんな質問にもこたえますシリーズ」では、副作用、生活にフォーカスしていこうかと思います。看護師、緩和医などの参加も視野に入れ、企画していきたいと思います。
胃がんキャラバン2019 スケジュール・お申込み
文:認定NPO法人希望の会 理事長 轟 浩美 (編集;中島 香織)
この記事に利益相反はありません。